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有能な怠惰の魔女はのんびりと暮らしたい  作者: うさうさ
第一章 メイド姿をした魔女
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第18話 いつか私の願いを一つ聞いてくれてね

 それから三日後。テラムは王子の説得を見切りつけたのか、あの日以来王位のことを言い出さなかった。それからは特に何もなかった。普通の宴会のようにお酒を飲んだり話を交わして親交を深める、いわゆる社交会みたいな雰囲気だった。


 だるいぃ。別荘で掃除する時がよかった。


 もちろん、ミリネは彼らに溶け込めず遠くで一人で時間を潰していた。人と話すのも面倒くさかった。メイドだから人と話す必要はなかったけど、この雰囲気の中にいるだけで十分疲れた。

 とにかくなんだかんだ宴会は終わって今はクレノス王国の王族専用別荘に帰ってきた。そしてミリネはいつものように部屋の掃除をしていた。


「やっぱこっちの方が落ち着く」


 ミリネは来客用のベッドに横になっていた。いつものように掃除は魔法でやっていて、ミリネはベッドでゴロゴロしていた。人の話す声もなく、サッサッと床を掃く箒の音とベッドの隣の窓から差し込む暖かい日差しが気持ちよかった。ミリネは体の向きを変えて窓の外を眺めた。綺麗に手入れされた茂みと寒くて少し葉が枯れ落ちた木々が目に入った。


「あいつらまたイチャイチャしてるね」


 庭の真ん中にはミジャリとロギアがいた。前にも常にくっついていたが、三日間離れていたため前より頻繁にくっついていた。


「そういやあいつら昨日も一緒に寝てなかったっけ」


 確かに昨日帰ってきてからというもの、ロギアとミジャリはずっと一緒だった。屋敷に到着した夕方から深夜まで、ほんの一瞬も離れてなかった。


「なのに、よくもあんたふうにくっついてるね。飽きられないのか」


 ミリネは頭を振りながら独り言を言った。どんなにお互いことが好きだとしても常に一緒にいると飽きてしまいそうだった。それなのに、ロギアとミジャリは飽きもせずあんな風にくっついていた。別に気にする訳ではないけど、あの二人を見ているとやけに人肌恋しくなった。


「かといって恋愛したいわけじゃないけどな」


 ミリネは上半身を起こして座った。実はミリネは恋愛経験がなかった。別に人気がない訳ではなかった。性格は良いわけではないけど、それはカバーできるほど見た目は可愛くて、結構告白された時期もあった。しかしその度に全部断ったため、今まで恋愛経験がなかったのだ。


 だって恋愛って面倒くさそうだもん。


 ただその理由だけだった。定期的にデートをしなければならないし、会話を合わせたり気を遣ったり、色々面倒だから特にやる気が湧かなかった。


「あと、あの二人みたいにくっついてる自信もないし」


 ミリネはベッドから立ち上がった。ちょうど掃除も終わったところだった。ミリネは空中にふわふわ浮かんだ箒とモップ掛けを手に取った。


「次の部屋に行こっか。・・・なるべくあいつらが見えない部屋へ行こう」


 ミリネはロギアとミジャリのところと反対側の部屋に向かった。


 そして時間は流れ日は暮れ真っ赤な夜になった。一日の仕事終わり、ミリネはふかふかなベッドに横になってゴロゴロしたかった。が、ミリネは今自分の部屋に戻れずにいた。


「ね、ミリネ聞いてよ。ロギアがさ」


 その理由はミジャリの部屋に捕まっていたからだ。仕事終わり、ミリネが部屋に向かっていた途中、偶然一人で廊下を歩いているミジャリと出会った。ミリネを見たミジャリは、つかつかと近づいてきた。


『ミリネ! 今から何するの』

『特にないけど』

『そう? じゃ私の部屋に来て。久々におしゃべりしようよ』


 突然ミジャリはミリネの手を握った。そしてミリネの手を引っ張りながら自分の部屋に向かった。ミリネは突然の出来事に戸惑ってミジャリを立ち止まろうとした。


『え、ちょ、ちょっと』


 けど、ミリネの声はミジャリに届かなかったのか、振り返ることもなく自分の部屋に向かった。こうして現在、ミリネはミジャリの部屋にいるのだった。


 まあ別にミジャリと話すのは嫌いじゃないけど。


 嫌いか好きかどっちかというと好きだった。だってミジャリは自分の話ばかりしてミリネは黙って聴いてさえいればいいから楽だった。


 あと、情報も得られるから。


 ただ傍で話を聴くだけで、情報を得られるしミジャリの好意も買えるから、まさに一石二鳥だった。もちろん、第一容疑者の話を百パーセント信用してはいけないのはわかっていた。わざと間違った情報を流して騙そうとする可能性も考えるべきだった。


 でもどう見ても嘘っぽくないんだよな。やっぱりミジャリは呪いをかけた犯人じゃ


「ミリネぇ!」


 考え込んだミリネの耳に、ミジャリの透き通った声が聞こえてきた。


「う、うん!? な、なに」

「私の話聞いてる? さっきから何の反応もないんだけど」

「も、もちろん。聞いてた。聞いてた」


 ミリネの戸惑った様子に、ミジャリはふむと息を漏らしながらミリネをじっと睨んだ。


「じゃ私が今なんて言った」

「えーっと、それが。だから」


 ミリネは頬を掻きながらそっと目を逸らした。


「お師匠全然聞いてなかったんですね」


 ミリネの隣に座ったミアが言った。静かで存在感はなかったけど、ここにはミアもいた。ミリネがこの部屋に捕まる前から、ミアはここにいた。


「ミアシーッ!」


 ミリネは口に手を当てた。その姿にミジャリは深いため息を吐いた。


「やっぱり全然聞いてないじゃん」

「・・・ごめん」


 ミリネはすぐ謝った。


「特別に今回だけ許してあげる」

「ありがとう。で、何の話してた」

「ロギアのこと話してた。どうすればロギアが王になれるかな、と」


 ミジャリは憂い顔をした。

 実は昨日ミリネはヒシルとミジャリに宴会であったことを話した。テラムに王位を放棄しろと言われたこと、誓約書のこと、ロギアがサインしなかったことまで全部語った。話を聞いたヒシルは顔が真っ赤になるほど激怒した。今すぐでもテラムを殺そうとした。そしてミジャリは特に反応はなかった。ただ俯いていた。そのため、ミジャリは別に気にしてないとミリネは思った。だが、今彼女の顔を見てわかった。最も気にしていた人はミジャリだったということを。


「前に私と約束したのに」

「約束?」


 ミジャリの独り言を聞いたミリネは聞き返した。


 そういやロギアも同じことを言った。


 テラムに「王になる」と言った時、確かに「約束した」と言っていた。


 まさか約束の相手がミジャリ?


 意外な繋がりを見つかった気がした。ミリネは目をキラキラさせてミジャリに顔を向けた。


「ミジャリ。その約束ってなに」

「え、昔、ロギアと交わしたぁ」

「詳しく話してくれ」

「別にいいけど。聞きたい?」

「うん。ぜひ」


 ミリネは即答した。初めて見る積極的な姿に、ミジャリはポカンとした。そしてしばらくしてミジャリはふっと笑って口を開いた。


「・・・・・・わかった。特別にロギアと初出会いから全部話してやるよ」

「ありが」

「その代わりに」


 ミリネの言葉を遮ってミジャリは言葉を続けた。


「ミリネもいつか私の願いを一つ聞いてくれてね」

「いつか? 今じゃなくて?」

「うん。約束してくれる?」


 ミジャリは手を差し出した。ミリネは彼女の小指をじっと見て少し悩んだ。ここでミジャリとロギアの話を聞けるのなら頼みごとくらいはいくらでも聞いてあがられた。しかしーー


 一体何の頼みをするかわからないから。無茶なこと頼まれたら困るんやけど。・・・まあいいっか。あの時はあの時の私がなんとかするやろう。


 とミリネは思ってミジャリと指切りした。


「約束する。あんたの頼みごと聞いてやる」

「ありがとう」


 ミジャリはどこか寂しそうな笑みを浮かべた。そしてそっと手を離した。


「それじゃ始めるね。うむ、どこから話そうかな。そう、十年前、あの頃十二歳だった少女ミジャリ少年ロギアが初めて出会った話からするね」


 ミジャリは自分たちの話を語り始めた。


書き溜めが底をついてます。せめて一章は毎日投稿したいと思うけど、これじゃ明日投稿できないかも。とりあえず明日投稿できるように頑張って書いてみます。

あと、もしこの話が面白い方々はブックークと評価をしてもらえると嬉しいです。

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