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第0話 あんたが選べ
窓から月明かりが差し込む薄暗い部屋。床と壁は血まみれで血の匂いが鼻を突いた。死体に見える人の形ががあちこちに散らばっていた。その中、一人の男が床にうずくまったまま体をブルブル震わせながら息を荒げていた。
「これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ。これは夢だ。これは・・・」
男はパニックに陥ったように同じ言葉を繰り返していた。
「いつまでそうしてるつもり」
メイド姿をした少女、ミリネがゆっくりと男に近づいた。
「もうぐずぐずしてる場合じゃない。早く選べ」
「え、選べってなにを」
男は顔を上げて震える瞳でミリネを見た。
「あんたも知ってるやろ。幸せな幻想の中で生きるか。それとも」
ミリネは振り返って背後の女に杖を向けた。
「この幻想から目覚めて王になるのか。あんたが選べ」
ミリネは杖をさらに強く握った。ミリネに向けられた女は、決然とした表情をしていた。
揺れる視界の中、男は女を見据えたまま口を開いた。
「お、俺は・・・」




