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告別式

作者: あずま

昔お世話になった上司が亡くなった


80歳だったそうだ


昔一緒に仕事をした頃はまだ40代で、バリバリの先輩だった


お兄ちゃんがまだ一人っ子の頃で、

やんちゃ盛りで、

子育てにも慣れてなくて、

バタバタ毎日を過ごしていた

仕事も責任のあるのを任されて

やりがいはあるけど

忙しさに

どうしていいか分からない頃


「大丈夫。熱出したんだったら、帰っていいよ。

後はなんとかしとくから

大丈夫。みんな同じだから。

帰りな。」


「大丈夫」が口癖のような

優しい上司だった


みんなが○ちゃん○ちゃんって慕ってた。


私は一番の下っ端だったから

みんなと一緒に○ちゃんって呼べなくて

でもいつか呼べるようになりたいと思いながら

大丈夫という言葉に支えられて働いていた


あの優しい○ちゃんが亡くなった

まだ数えで80になったばかりなのに


お世話になったお礼をまだ何にも伝えてなかったのに


大丈夫に励まされて

子育てを乗り切れた感謝を


伝えに告別式に行こうと思ったけど


行かなかった

行けなかった

お香典を同僚に頼んで

行かなかった


行けば

きっと懐かしい顔がいっぱいで

みんなで○ちゃんを懐かしんで

きっと涙はこぼれても

○ちゃんの人柄を思い出させる

暖かい告別式に参加できた


一緒に働いていたとき

呼べなかった○ちゃんと呼びながら

お別れができたかもしれない


でも

行けなかった


だって

告別式に出たら

私は○ちゃんを羨んでしまう


数えの80で往生した

○ちゃんを羨んで

17で亡くなった娘を思って

泣いてしまう自分を知っているから


誰のお葬式に行っても

お通夜に行っても

馬鹿みたいに泣いてしまう


娘のことだけを思って

泣いてしまう


故人を悼み、

故人を忍び

故人と別れを告げる大切な式で

私は故人ではなく娘のことだけを考えて泣いてしまうのを止められない


だから

行けなかった


でも

○ちゃん

感謝してるよ


本当に

○ちゃんの大丈夫は本当に優しくて

安心できた


ありがとうございました

安らかに


そっちには

私の娘がいます


娘にも

大丈夫って言ってあげてください


大丈夫って


今日は○ちゃんの告別式でした

ごめんなさい

お世話になったのに

いっぱい

いっぱい

助けられたのに

告別式に行けませんでした

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