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その2 復讐と社会貢献

「ミルとは別れて、お前と結婚してやる。嬉しいだろう?」

「はぁ?」


 何故、こんな話になったのだろう。

 私は女官として王宮に勤める23歳のアルトワ。


 アルトワ・スタンジェ伯爵令嬢。

 燃えるような赤い髪に、アクアマリンのようだと言われる瞳を持つ女よ。


 この年で令嬢というのは痛いわね。

 だいたいがみんな、嫁に行っている年だから。


 数年前の洪水で、大打撃を受けた我が領地ドッカイーネ。

 財政難となり、一家でてんやわんやしている間に、婚約者のリトマス・シケンシー侯爵令息が浮気。

 彼の両親も、復興途中で財政の厳しくなった我が家とは婚約を解消し、成金の浮気相手ミル・ワームリン子爵令嬢との結婚を望んだ。


 3年程の婚約期間で、それなりに友好を結んだつもりだったが、リトマスとは縁がなかったようだ。


「君は領地領地と僕をほったらかしで、寂しかったんだ。それを埋めてくれたのが、ミルだ。僕はもう、ミルしか愛せない。別れて欲しい」

「分かりました。お元気で」


「な、なんで、そんなあっさり。そこは捨てないでとか言って、僕に追い縋るんじゃないのか? おい!」


 湧いているんだろうか? 頭に。

 浮気女の名前も、いや言うまい。


 そもそもが政略とも呼べない、丁度年が近い年齢だからと婚約していただけ。特に何の感慨もない。


 それなのにこの男は私に未練があるらしく、なにか喚いている。


「お前が望むなら傍に置いてやる。その代わり領地の経営を手伝え。子ができれば認知してやる」等々。


 馬鹿馬鹿しくて聞いていられない。

 だってそうでしょ。


 この男は、『結婚はミルとする。お前は愛人となり仕事を手伝え。子供だけは認知してやるからありがたく思え』と。


 馬鹿だなぁ、よっぽど好きでも愛人になんてなりたい令嬢なんて珍しいのに。愛がない私が応じる訳がない。

 確かにリトマスは顔は良い。

 流れる艶々の銀の髪に、麗しい大きな瞳、通った鼻筋、整った唇。

 見てる分には良いと思う。

 遠くで眺められる偶像アイドルとか、舞台俳優なら。


 でもいくら顔が良くても、下半身ゆるゆるの俺様ってどうよ。

 確かに頭脳も運動神経も良いけど、何でも思い通りになると思う思考が嫌い。


 家の借入金の援助なんかいらないわ。

 もう国に融資を申請済みだもの。


 そんな端金はしたがねでもないけど、大金だけども、そんなことで(わたし)を愛人にしなかった両親に感謝だ。もう全力で力になる!と誓って数年が過ぎた。

 両親、兄、私で懸命に働き、領地の復興は目に見えて進んだ。

 元の観光地に姿は戻り、税収もうなぎ登りだ。洪水対策も専門家に助力して貰い、今後は酷いものにならないだろう。


 ほっと息を吐いた時、私は婚期を逃した26歳だった。

 兄セザールも今まで婚約者はいなかったが、最近ようやく婚約を結んだ。


 一度婚約解消したラスク・ダーバン伯爵令嬢だ。


 彼女はずっと兄が好きで、別の人との婚約を避ける為に、メディア王女の侍女をしていたらしい。王女が輿入れし隣国まで付いて行ったのだ。


 彼女は私の友人の妹で、姉と一緒に家に遊びに来ていた。

 姉のカトレアは既に嫁に行ったが、私とは今も仲良くしてくれている。


 セザールとラスクは、ずっと隠れて文通していた。

 宛先を姉のカトレア経由にして、何年も何年も愛を暖めてきた。

 ダーバン伯爵は、二人の結婚を反対していたから。

 家の復興はとんでもなく時間がかかりそうだったから、苦労をさせたくないと婚約を解消させたのだ。


 性格的なものではなかった。

 何もなければ、既に結ばれていた。


 メディア王女もそれを知って、ラスクを守る為に協力してくれた。


「遠い国で、ラスクがいてくれて力強かった。今までありがとう」


 そう言って手元から離し、セザールに帰してくれたのだ。


 復興した今、二人を阻む者はいない。

 既に24歳のラスク。 

 ダーバン伯爵も、今度は結婚に賛成してくれた。


「セザール、済まなかったね。許してくれるかい?」


 セザールは笑顔で答えた。


「はい、勿論です。こちらこそ、ありがとうございます、伯爵。待って貰った分、幸せにしますから」


 涙滲み頷く伯爵と、つられて泣いているセザール。

 ラスクの方がキリリとしていた。


「一緒に幸せになるのよ」


そう微笑んで。



 そして結ばれた結婚式に、メディア王女と夫のクロス侯爵も出席した。丁重にお迎えしたことで、ドッカイーネに好印象だったクロス侯爵はたくさん宣伝してくれ、観光は爆発的に潤った。


 なんと言っても、侯爵様の御墨付きなのだから。

 セザールもラスクも、足を向けて寝られないと大喜びだ。


 そんな穏やかな日常に影。

 それが私アルトワの元婚約者リトマスの出現だった。


 兄が元婚約者のラスクと結ばれたことで、自分もと思ったのだろうか?

 ドッカイーネの発展を羨んだのだろうか?


 突然私の勤務する税務部門に顔を出し、昼休憩に食堂に呼び出して復縁?を迫ったのだった。


冒頭の「ミルとは別れて、お前と結婚してやる。嬉しいだろう?」と。


 妻と別れて、年増のお前と結婚してやると。

 どうせ誰からも相手にされていないのだろうと言って。

 ポカンとする私は、言葉を紡げずにいた。


(頭の回転は良かった筈だけどなぁ? とうとう湧いたのか?)


 そう思っていると、後ろの席から年配の女性が声をかけてきた。


「そんな大事な話、こんな所でするべきではないわ。常識ないのかしらシケンシー侯爵令息は」

「な、何を言う。失礼だろう」


 憤るもすぐ閉口したリトマス。


 彼女が宰相の夫人、エバー・マームス公爵夫人と気づいたのだろう。


「そういうのは、御当主に打診するものよ。御存じないのなら、教えて差し上げますけど? 如何しますか?」


 さすがの威圧にたじろぐリトマス。


「いや、遠慮しよう。ではまたな、アルトワ」


 踵を返すのを見て、溜め息が出ていた。


「大丈夫? アルトワ。あの屑とまだ交流があるの?」


 眉をしかめて声をかけてくれる夫人。

 彼女は婚約解消の経緯を知っている、数少ない人の一人だ。

 そして親身になって支えてくれた。

 私が女官として働けるのも、エバー様のお陰なのだ。


「いいえ、まさか。家の領地が潤ったので、私のことを思い出して利用しようと思ったのでしょう。今は兄がスタンジェ伯爵ですし、絶対こんな馬鹿な話受けたりしないでしょう。あの人リトマスは何故か私が、あの人のことを好きだと思っているようなんです。元々友好しかなかったんです。今まで忘れていたくらいの存在なのですが」


「ああー、そうなのね」


 納得してくれたようです。


 もしかしたら、既に兄に追い出されて来たのかもしれません。

 さすがに伯爵の兄が次期侯爵を怒鳴れないので、言葉は丁寧だったかもしれませんが。現時点では兄の方が位は上ですけどね。


 所詮まだ、彼は“侯爵令息”ですから。


 それにまだ、離婚もしていないのに求婚するなんて馬鹿にしています。それにはエバー様もお怒りです。


「家のアルトワに、なんて態度! 潰す? ねえ潰す?」

「え、えーと」


 さすがに何処をとは聞けません。

 何だか急所でも潰す勢いだったので。

 でもこの場合、急所でも家でも物騒ですわね。


「まあ、様子をみましょう」


その日はここで、話終わったのです。



 翌日、彼の妻ミル夫人が訪ねて来ました。

 エバー様は昨日のことを知る為、彼女と私を応接室に連れて来てくれました。

 私達を席に着け、エバー様が紅茶を入れて、当然のように同席されています。


「あの突然済みません。リトマスが、いえ、夫が私と離婚して貴女と結婚すると言うので、確認に来たのです」


 項垂れて力ない様子の彼女。


 私とリトマスが婚約解消した時は、輝くピンクプラチナの髪に自信が漲った表情をなさっていましたのに。今は艶のない髪に、すっかり生気のない印象でした。


「私は彼と結婚する気はないですわ。……既に婚約者もおりますし」


 公にはしていないが、内緒にもしていないので彼女に伝える。


 すると彼女は泣き出した。


「お、夫はもう、離婚届けを書いていて、私が記入すれば提出できる準備をしています。で、でも、子供もいますし、実家は弟夫婦が継いでいて戻れないし、もう、どうしたら良いか、ぐすっ、ううっ」


 憐れすぎて、エバー様と顔を見合わせてしまった。


 確かに彼女には婚約者を取られた形だけど、リトマスは困った時に協力もしてくれないし、愛人を提案する屑だ。

 もし仮に結婚していても、パワハラ、モラハラ盛りだくさんだったろう。

 逆に彼女がいてくれたから、しないで済んだかもしれない。


 そう思うと、少し気の毒に思えた。


「貴女は離婚したくないの? 幸せなの?」


 首を横に何度も振る彼女。


「幸せだったのは最初だけです。その後は領地経営や家のことで上手くいかないと殴られたり、詰られたり、義母にも嫌みを言われてばかりで。収益が減っても浮気ばかりして、でも注意しても “お前の出来が悪いせいだ。癒されたいんだ、僕は” と、果ては義母まで私を責めてくるんです」


 するとエバー様が、彼女に言う。


「貴女、もう別れなさいな。そんな男まだ好きなの?」

「いいえ、もう嫌いです。……離れたいです。痛いのはもう嫌です……」


「よく言ったわ。じゃあ、貴女は弁護士に《《こういう内容》》の誓約書を作って貰いなさい。それから、私が良いと言うまでは、離婚届は記入しないで我慢なさいね。大丈夫よ、子供はあんなのに渡さないから」


「はい、はい。よろしくお願いします」


 彼女は頭を、何度も下げて出ていった。

 結局私は、彼女と会話を殆どしていない。


 ただ、「あの時は済みませんでした。私は(リトマス)に憧れていて、結婚すれば幸せになれると思っていたんです。夢中で彼を追いかけて、回りが見えていませんでした。本当にお恥ずかしい限りです」

そう言って謝ってくれた。


 今回もし(アルトワ)がリトマスと結婚しても、責めるつもりはなかったそうだ。

 事実を確認したかっただけみたい。


 私は彼女に気にしないでと伝えた。

 だって私も心の中で、ミルワーム(ゴミムシダマシと言うみみずのような甲虫)と、馬鹿にしていたからだ。

 相殺と言うことで(勿論彼女には、ミルワームのことは言っていない)。


 そうして1か月が経ち、ミル侯爵夫人は離婚が成立した。

 浮気調査と散財具合をエバー夫人が探偵を雇って調べて貰い、それを公言しないことを条件に慰謝料と親権が取れたそう。その時には公爵家の顧問弁護士も同席したと言う。


「公爵家を利用するなんて、卑怯だ」と言うリトマスに、冷たい声でミルは言う。


「さんざん身分を笠に着た人の台詞じゃないわね。さようなら」


 最後に言いたいことは言えたそう。

 子供達も、母親に暴力を振るう(リトマス)祖母(ミルの義母)も嫌いだったようで。祖父(ミルの義父)だけはいつも庇ってくれたけど、いない時を狙って暴力を振るっていたようだ。


 それを知らなかった義父は、「ごめんなぁ」とミルにも孫にも謝ったそうだ。


 その後領地へ、義母を連れ引っ込んだ義父。

「ワシはもう知らん。勝手にしろ」とリトマスに言い捨てた。

 ミルには強く当たった義母も、「離婚してから好きにやれ」と義父に言われ大人しくなったそう。さすがに、この年で離婚は嫌みたいだ。


 そうしてミルは、(アルトワ)の同僚になった。

 曲がりなりにも侯爵家領地を経営してきたミル。

 さすがに成金と言われる家で、金銭管理を叩き込まれた凄腕。


 それなのに、領地経営が上手くいかずに殴られたって。それって、天候とか害虫とかの被害もあるんじゃないの?


 毎年同じ収入になる訳ないのに。


 良くない時に合わせて対策するものなのに、リトマスは良い時を基準にしていたから不満だったのでしょうね。良い時の分は、悪い時に備えて備蓄するものなのに。


 そもそも何にお金を使っていたんだか?

 聞けば、リトマスとリトマスの母で豪遊だったみたい。

 なにやってるんだか。



 そこでエバー様の出番です。


「家は女性職員多いでしょ? 仕事の出来ない高位貴族のボンボンより、能力のある平民を取る主義の税務課課長のエバーが、今日も有能な新人をスカウトしてきました。みんな、拍手」


 そう言って、ミルは税務課に迎えられた。

 エバー様の根回しはバッチリなので、意地悪されることもなく大歓迎だ。


「ありがとうございます。一生懸命頑張ります」


 そう言って頭を下げたのだ。


 その後リトマスは、(アルトワ)に面会を要求して求婚するも、当然固辞の一択だった。


「婚約お断りしますわ。エバー・マームス公爵夫人の義娘になりますので。私、公爵家に嫁ぐのです」

「まさか、行き遅れのお前なんかが!」


「失礼ですよ、シケンシー侯爵令息。アルトワが結婚後は小公爵夫人となります。今回は許しますが、次はないですよ」

「そんなぁ」


 怒れるエバー様に、項垂れて焦るリトマス。

 そう、これまで返事を濁していたのは、ミルが離婚しやすくする為の時間稼ぎだった。私が断れば、暫くは離婚しないでしょうから。


 まあ、そんな感じで、女性の職場環境を整えるように、託児所や学校の整備に力を入れるエバー様。


 エバー様の夫宰相グレース様曰く、「税務課に高位貴族入れると横領することが多くて。どうやら慣例になってるみたいでね。そこで女性上司を採用しみたら、大当たりなのさ」だって。


 宰相夫人に逆らう、肝の据わった令息なんてあんまりいないでしょうからね。あからさまなら、すぐボロも出るだろうし。


 そんな二人はとても仲が良い。

 なんと来月から産休に入るらしい。


 最初『産休』って何と聞いた私。

 恥ずかしかったけど聞いたら、大部分の人が知らなかった。

 どうやら産前産後の2か月にお休みを貰え、給料もでるらしい。

 そして休み後も復職できるらしいのだ。


 そんなの聞いたことない。


 エバー様曰く、「出来る職員は大事な職場の財産だし、子供は国の財産よ。どんどん産んでちょうだいね」って。


 既にこの国は子供が年々減っているらしく、それをふまえて子を持つ女性にも働きやすい場所を増やしている最中。


 平民の教育にも力を入れて、有能な人材を育てるのがエバー様とグレース様の仕事らしい。


 既に貴族達には通達しているけれど、対処しているのは僅かみたい。

 そしてそれに伴って、貴族女性の離婚にも尽力している。

 今までの没落貴族の歴史に倣い、困窮すると女性を娼館に売る等、平気でやる男が多いから。


 時代の変遷には女性の方が敏感だ。

 自分の家が危ない場合、逃げた方が良い。


 もし知人で心配な人がいれば、エバー夫人が窓口で助言している。


「身を売られるより、労働で時間を売りなさい」と。


 今日も税務課は大にぎわい。

 官吏じゃなくても、託児所でも、洗濯屋でも、教師でも、雇用先はたくさんあるわ。


 贅沢は、できないかもしれない。

 けれど時代の流れだから、自由な世界も体験してみて欲しい。

 独自に事業を行っている貴族は、影響が少ないかもしれないけど男尊女卑は当分あるだろう。

 国はそこを変えていきたいらしい。


 女性が職業を得れば、能力の乏しい男性はその分行き場をなくすだろう。

 親のすねかじりが続かない時代も来そうだ。


 そうそう、マームス公爵の出資事業の一つに、闇(主婦)ルートの逸品がある。

 夫への恨み具合で濃度が分散された脱毛シャンプーだ。20%、30%、40%で、治験済みの安全脱毛剤『スグヌケール』。


 エバー様は、任意で皆さんにお奨めしてみた。

 勿論無料。

 離婚が成立する直前に、夫の使っているシャンプーに脱毛剤を混ぜて振るだけ。

 本当は新品でこのくらいと説明書きがあるんだけど、計算が苦手な女性もいた。どうすれば良いかの問いに、エバー様は、


「そんな時こう言うのウインクしながら、笑って笑って笑って入れちゃえ。毛根なんてサヨナラ、ね、恨みもサヨナラ」


 なんか歌い出した。

 大丈夫かな?


 ゴホンと咳払いしたエバー様は、「使用人に洗って貰うなら大丈夫よ。目に入るとさすがに痛いから注意よ。まあ、ようするに、少し薄くなるか、だいぶん薄くなるかの差よ。まだ愛情があるなら、ちょっと入れれば良いし、憎いなら全部入れても良いんじゃないかしら」と言う。


「はい、エバー様!」


 なんか解りやすかったみたい。

 そのうち計算が出来る夫人達も、目分量になった。

 もう、ドバドバ入れてるらしい。


「もう濃度、関係ないですね」

「そうね」


「せっかく治験して貰ったのに」

「まあそれは、離婚しない家庭で楽しんで貰いましょうよ」


 因みに、リトマスの艶々の銀髪はもうない。

 ミルは、半分以下のシャンプーに40%の薬を全投入したらしい。

 めっちゃ計算得意なのに、彼女。


 本人曰く、

「手が滑っちゃって」とウインクしていた。


 可愛いわ、2人の子供のお母さんなのに。

 肩まであるピンクの髪を一つに纏め、少しだけ目尻にシワもあるのに超可愛い。


(馬鹿だね、リトマスは。可愛くて有能な奥さん手放して)


 今後ミルは仕事をしながら子育てし、年下イケメン文官を捕まえるのだ。

 今度こそ、幸せを噛みしめる未来が。


 そして主人公なのにあんまり活躍していない、(アルトワ)も小公爵夫人としてエバー様と仕事に邁進します。

 エバー様のご子息、モーリス様はイケメンですよ。


 そして頭皮がツルッと綺麗なリトマスは、舞踏会でカツラを引っかけて落とされ注目の的に。自信家だったのでプライドが傷ついて、そのまま領地へ引きこもってしまったそう。


「甘ちゃんね、そのくらいで!」


 なんて声も出たけれど、ミルも私も顔を見合わせた。


「抜けた時一度絶望を味わったから、今回は二度目の絶望よね。さすがに許そうか?」

「そうね」


 私達の復讐はそこで終わった。

 (アルトワ)はあんまり気にしてないけど、回りが怒ってたからね。それも含めて終わりと言うかね。


 その後シケンシー前侯爵が侯爵へ復帰し、領地を纏めている。ミルの子が希望すれば、次期侯爵を渡す予定らしい。


 シケンシー侯爵の毛根は、フサフサである。



 余談だが、ある時期に一斉にカツラの売り上げが伸びた。購入を見越したような、高額でバリエーション種類の多さが豊富だったことは言うまでもない。


 エバー様曰く、「収益は社会貢献事業に使います」だって。

 また一つ、王都に学校が立つらしい。



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ミルさんについて 「私とリトマスが婚約解消した時は、輝く黄色の髪に自信が漲った表情をなさっていましたのに。今は艶のない髪に、すっかり生気のない印象でした。」 「可愛いわ、2人の子供のお母さんなのに。…
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