暗闇の管理人X
暗闇の空間を管理する【X】という謎の存在。Xはその空間に訪れる客にいくつかの質問をして、どうしてその客がここに居るのか記憶を取り戻す手伝いをする、、、。
とある一人の若い男が何もない暗闇の空間で目を覚ます。
「ん、、、。ここはどこだよ?」
若い男はそう言いながら辺りを見回す。しかしどこを見ても周りは只々暗闇で光すらもなかった。
男が困惑していると、どこからか足音が聞こえてきた。
男は思わず「誰かいるのか!」と叫んだ。するとその声に反応したかのように、光の放つ球体が一つ姿を現した。
男は不思議そうにその球体に近づいていく。すると球体の横からにゅっとスーツを着た誰かが現れ、男は思わず「うゎ!!」と叫んだ。
「おっと。これは失礼致しました。」
そう言ってそのスーツを着た何かは若い男に手を差し伸べる。
そのスーツを着た何かは人の形はしていたが、顔は黒い靄で覆われており声は男性の者だったが若い男はそれを人間とは思うことができなかった。
「あんたは一体誰なんだ?」
男は恐怖をかみ殺し、震えた声で尋ねる。
「私ですか? 私に名前などありません。強いて言えば私はこの空間の管理人といったところでしょうか。あ、もしよろしかったら名前、、、付けてくれませんか?」
ソレは男にそう尋ねた。
男は困った顔をしながらも、考えることにした。
「そうだなアンタの名前、、、。」
男は人間なのかも分からないソレの名前を一生懸命に考えた結果、
「アンタの名前は【X】《エックス》でどうだ?」
男はソレにそう名付けた。実際よく分からない人物にたいして人はローマ字などで例えたりする。
ソレもよく分からない人物(人かも分からない)奴な為これが一番妥当だとおもった。
「そんなに考えて【X】ですか、、、。まあいいでしょう」
Xは少し不満そうにしていたが、名前がないよりマシだったのだろう渋々納得をした。
「さて、ではそろそろ本題に入りましょうか」
Xは胸元から一冊の手帳を取り出す。
「何をぼさっとしてるんですか?貴方も早く座ってください」
そう言って何もない筈の空間に二つの椅子がXと男の前に現れた。
「さあどうぞ」と二人は椅子に深く腰掛ける。この時男はまだ目の前にいる存在と突然現れた椅子、そして何よりこの空間を未だに受けきれていなかった。
だがXはそんな男の気持ちなどは関係なく話を進めだす。
「ちなみに貴方はどうしてここに居るのか分かっていますか?」Xが男に聞く。
「分からない。Xは分かるのか?」男が聞き返す。
「分かりますが、私が答えを教えては意味がありません。貴方自身が思い出さなくてはね。なので今から貴方に質問をします。」
そして男の返事は関係なしに質問を始める。
「まず、貴方の名前は?」Xが尋ねる。
「名前、、、俺の名前は清水正樹」
「いい名前ですね。よろしければ正樹と呼ばせてください」
「好きにしろ」
Xは最初の質問に正樹のこれまでの人生について聞くことにした。
この質問で清水正樹は徐々に自分の過去の記憶を思い出していく事になる。