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月下の光芒  作者: チェックメイト斉藤
魔獣駆除組織スペース
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勝負の行方①

 地面へ落下していく橘さんの体。

その腕を掴みますが、


「おっも………」


私だけでは橘さんの体重を支えきれません。


「ソラ!!」


姉が飛んできて手を貸してくれました。

そのままゆっくりと地上へ降ります。



少々手荒でしたが、なんとか橘さんを止めることには成功しました。


「で、思いっきり殴ってたけど生きてるの?」


「あっ」


姉の指摘に慌てて橘さんの状態を確認します。


「………大丈夫……だと思う」


息はしていますし、血も出ていません。

ドラマなんかで人を殴って気絶させるシーンを見たことがありますが、こんな風に上手くいくとは………。

ぶっつけ本番でしたが、強過ぎず、弱過ぎず、力加減もバッチリだったようです。


「それで、これからどうしようか……」


橘さんをこのままほったらかしていいものか………。

見た目には大丈夫そうですが、万が一のこともあるかもしれませんし………。


でも、担いで移動してるところを他のパークス隊員に見られたら………。というかどこに連れて行けば?


「わーっ!!」

突然姉が叫びました。


「もう……、うるさいなぁ。何?急に?」


「後ろ!後ろ!」


「え?」


姉の言う通り後ろへ振り返ると、そこには鬼の形相の橘さんが………!!

マズい!もう起きてしまったようです。


「………てめぇら、散々コケにしてくれたなァ?」


橘さんが私の腕を掴んで引き寄せ、そのまま首に腕を回され捕まってしまいました。


「ソラ!?」


「動くな!!」

姉がすかさず私の元へ駆け寄りますが、それを橘さんが制止します。


「まず、こいつの腕を潰す。二度と魔法が使えない体にしてやる。抵抗すれば殺す」

そう言いながら橘さんは私の腕を鷲掴みにします。


掴まれた部分がじんわりと熱くなってきました。

恐らく、腕を掴んだまま攻撃魔法を使い、そのまま吹き飛ばしてしまうつもりなのでしょう。


どうする……!?

橘さんは平気で人に向かって攻撃魔法を撃つような人です。

このままでは確実に腕が潰されますし、抵抗すれば殺すというのも多分本気です。

もう詰みです。


今思えば、私がドローンの追跡を逃れた時点で反撃なんて考えずに逃げてしまうのが正解だったのかもしれません。

姉は一度橘さんの追跡を逃れていますから、二度目もきっと上手く撒けるでしょうし。

夕方の業務終了時刻まで逃げ切ればスペースの勝ちでした。

そしたら、私達は晴れてスペースの一員に認められて………。


掴まれた腕から湯気?煙?どちらか分かりませんがモクモクと立ちのぼり始めました。


あ、ほんとにヤバいかも。これ………。



「ソラ!!」

やはり黙って見ていることはできなかったようで、姉がこちらに走り出しました。

気持ちは嬉しいですが、これは悪手です。

私と姉の間には距離が開きすぎていて、何をしようにもこれでは間に合いません。


「バカが!!抵抗したら殺すって言っただろうが!!」

橘さんは腕を掴む手を離し、その手を私の頭に押し当てました。




あ、終わった。

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