スペースへようこそ⑥
今日、二人の女の子がスペースに加入した。
ヒナタちゃんとソラちゃん。
まさか、ミヒロちゃんが二人の加入をすんなり許すなんて、どういう風の吹き回しなんだろう。事務の私ですら、最初はあんなに嫌がられたのに。
二人の部屋を後にして、ミヒロちゃんに聞いてみた。
「秘密」
「え〜。教えてよ〜」
「ほら、変に断って外に出ていかれても困るし。ほんとに今、現場の人手足りてないんだから。」
「え〜?前にも何人か断ったことあったよね?」
「人は変わるんだよ」
「何悟ったようなこと言ってるの。納得してないからね?」
「はいはい」
少し休んだ後、ミヒロちゃんは仕事の続きに戻って行った。
───翌日、目を覚ますと、昨日私達が魔獣から逃げるときに手放してしまった荷物が部屋に置いてありました。
ミヒロさんが探してきてくれたのでしょうか。
無愛想だけど、良い人なのは間違いなさそうです。
そして、荷物の上には「起きたら下の事務所に降りてきて」という書き置きが。
身支度をして、言われた通り事務所へ向かいました。
私達のいた部屋はアパートの二階で、事務所は一階。筋肉痛の酷い脚で降りるのは大変です。
事務所は元々喫茶店だったようで、オシャレな内装がそのままになっています。なんとなく、こういう場所は苦手です。
「おはようございます!」
「おはようございます、あれ?ミヒロさんは?」
事務所に居たのはエミさんだけでした。
「まだ寝てるよ。夜の間はずっと働いてるからね。昼頃には降りてくるんじゃないかな。私もそろそろ寝るから、ちょっとした手続きと魔獣駆除についての軽い説明を済ませて今日はおしまい」
そういえば、二人共夜勤でした。
眠たいはずなのに、時間をとってもらえてありがたいです。
「うえ〜。手続き面倒くさそ~。………ソラやっといて」
「失礼なこと言わないの。あと、自分でやりなさい」
「まあまあ、手続きの方は一瞬だから我慢してね?」
そう言ってエミさんが取り出したのは白い箱でした。
大きさはタバコの箱より少し大きいくらいで、天面に輪っかの模様があります。
「パークスに入る予定だったなら、マイナンバーカードは持ってきてるよね?ここにかざしてくれる?」
「はい、わかりました」
エミさんに促され、マイナンバーカードを箱にかざすと、ピロンと音が鳴りました。
こんなに簡単でいいのかと不安になりますが、これで必要な手続きは終了とのことです。
「はい、これであなた達は正式にスペースのメンバーです!改めて、これからよろしくね!」
「よろしくお願いします!」
握手した手を上下に振る二人。エミさんも陽側の人間ですか。そうですか。
そんなことより、状況に流されるままここに入りましたが、これから先、上手くやっていけるのでしょうか。
私の不安も露知らず盛り上がってる二人を見ると、また深い溜め息が出てしまうのでした。
【キャラクタ―、作中用語、設定解説】
・日比谷ミヒロ
魔族。21歳。
魔獣駆除組織スペースのリーダー。
・安藤エミ
人間。25歳。
スペースの事務担当。
ふんわりとした雰囲気の優しい性格。