スペースへようこそ⑤
しばらくして、エミさんが姉の分のカレーを持って戻ってきました。
ガツガツとカレーを貪るように食べる姉と、それをニコニコしながら見つめるエミさん。
しばらく、スプーンと皿がぶつかる音が部屋に響くだけでしたが、姉がカレーを食べ終わったところで、エミさんから質問が飛んできました。
「ところで、あなた達は何をしにここへ来たの?」
「魔獣駆除の仕事がしたくて来ました。お金がいるんです」
すかさず答える姉。
「あー、もしかして、パークスの新人さん?」
「いや、………私達を"ここ"に入れてくれませんか?」
「は!?」
姉の唐突な申し出に、私は思わず素っ頓狂な声を出してしまいました。
「お姉ちゃん、パークスに入るんじゃなかったの!?」
「助けてもらった恩を返したいんです!駄目ですか?」
「ちょっと、お姉ちゃん!聞いてる?」
なんで、この人はこんな行き当たりばったりで物事を進めようとするのでしょうか。
「えーっと…その……。気持ちは嬉しいんだけど、うちはこれ以上人を増やす予定は無くって……。っていうか、私に決定権無いし…」
エミさんも困った様子でこう言っています。
「そこをなんとか!」
「お姉ちゃん、いい加減にしてよ!」
「いいよ」
混乱の中に突如響いた私達以外の声。
「「「うわっ!」」」
私達三人が驚いて声のした方を見ると、ベランダにミヒロさんが立っていました。
「もう!脅かさないでよミヒロちゃん!いつから居たの!?」
「ちょっと休憩しようと思って戻ってきたら、部屋の電気がついてたからさ」
「返事になってないし、入るなら玄関から入ってよ!っていうか、いいの?入れちゃっても?」
「だから、いいって」
「やったー!これからよろしくお願いしますね!」
ミヒロさんがいいと言うなら仕方がないですけど、一つ問題があります。
「あの、私達、元はパークスに入る予定で向こうとも話を進めてるんですけど、そっちはどうすれば…?」
「バックレなんてよくあることだからほっとけばいい、どこへ入ろうが駆除活動の人手が増えるなら向こうも文句無いだろうし」
「えぇ……。」
エミさんの方を見ると苦笑い……。いいのでしょうか、これで……。
「ほら、安藤さんもそろそろ仕事に戻るよ」
「あ、うん!じゃあ、二人共また明日ね?」
「わかりました!お疲れ様です!」
ミヒロさんとエミさんが部屋を出て行った後、
「いやぁ~、言ってみるもんだねぇ~」
得意気に姉が言います。
ほんと、何を考えてるのでしょうか、この人は。
「………はぁ……、もう寝るから」
トントン拍子で姉の思い通りに事が進み過ぎてるのが癪ですが、ここは成り行きに身を任せるしかなさそうです。
そんなこんなで私達は、魔獣駆除組織「スペース」へ加入することになったのでした。