姫廻ヒメ②
「もー、何だったの!?あの人!」
パークスを出た後、姉は声を荒げて怒りをあらわにしました。
「あいつは姫廻ヒメ、パークス第一支部の支部長だ」
「それさっき本人が自己紹介してたよね!?」
的外れなミヒロさんの返事に即ツッコんでいます。
…………あ。下の名前は「ヒメ」っていうんですね。
「あーあ……、あいつに関わりたくないから、なるべくここに来ないようにしてたんだが………」
大きくため息をつくミヒロさん。
ここまで困った様子を見るのも初めてです。
「仲悪いんです?」
「一方的に嫌われてんだよ。こっちは何とも思ってない」
過去に何かあったんでしょうか。
「それはそうと、勝負なんて受けてよかったんですか?」
「まあ、あの状況じゃ受ける以外に無かったからな。それに、非があるのはどう考えてもこっちの方だ。勝負の結果次第でお前らのスペース所属を許してくれるだけ有り難いと思わなきゃな」
確かに、あのまま無理矢理連れて行かれるよりは遥かに有情な提案だったと思います。
でも───、
「勝てるんですか?」
「絶対勝つ!!」
「お姉ちゃんうるさい」
「………まあ、なんとかなるだろ。ヒナタもやる気みたいだしな」
「楽観的ですね……」
ミヒロさんとしても私達を手放すつもりは無いんでしょうけど、それならもっと事態を真剣に受け止めた方がいいんじゃないでしょうか………。
「とりあえず帰るぞ。さっさとここから離れたい」
「あ、はい。……って何してるんです?」
ミヒロさんが私の目の前で背を向けてしゃがみ込んでいます。
「お前、飛行魔法使えないだろ?乗れよ」
「えっ、飛んで帰るんですか!?」
「事務所まで距離あるからな」
15歳にもなっておんぶしてもらうのはちょっと恥ずかしいですね……。
「じゃあ、失礼します……」
「ん。暴れたりするなよ」
「はい」
ミヒロさんの体が地面を離れ、ふわふわと浮き始めました。姉もそれに続きます。
空を飛ぶってこんな感じなんだ……。
ここに来てから初めての連続ですが、今この瞬間に一番非日常を感じているかもしれません。
下の方を見ると、さっきまで立っていた地面が遠く離れているのが見えます。でも、不思議とあまり怖くありません。
「なんか、舞空術みたいですね」
「あんまり他作品の用語出すな」
「すみません………」
地上とは違い、上空では心地のいい風が吹いていました。
それに、ミヒロさんの背中が温かくて……。
気付けば私は眠ってしまっていました。
【キャラクタ―、作中用語、設定解説】
・飛行魔法
全身に纏った魔素を操作して体を浮かせる魔法。




