事情聴取①
医務室の扉を閉め、深呼吸をした。
正直、どんな顔をして会えばいいのか分からなくて、あの数分で精神的にかなり疲弊してしまった。
「ねぇ、もう帰っちゃうの?ミヒロさん?」
ヒナタが無邪気に聞いてくる。
お前が変なこと言わなければ、もう少し居るつもりだったんだが?
「………とりあえずは大丈夫そうだったからな。退院した後のことは、また今度話せばいいだろ」
そう答えて、出口へ向かうため廊下を歩き始めた。
北条がソラを連れて自分の捜索に来たのは、既にソラには十分な実力が付きつつあると判断したからだろう。自分もその判断は正しいと思う。
しかし、今回のような不測の事態に対処することは難しい。
こいつらを過度な危険に晒さないためにも、自分がしっかりしなければ………。
間もなく出口というところで、自分を呼び止める声が聞こえた。
「ミヒロさーん!!待ってくださいっすー!!」
稲鶴だ。こちらに走り寄ってきて、肩で息をしている。
「ゼェゼェ……あの…………、ハァ………隣の…子って………ゼェハァ………………犬井………ヒナタ………ちゃん………ハァハァ……」
「待っててやるから落ち着け」
「は、はい………すみません……っす…………」
息を整え、再び口を開く。
「えっと、君は犬井ヒナタちゃん、っすよね?」
初対面なのに何故かヒナタの名前を知っている。
ソラに聞いたのだろうか。
「え、うん」
素直に返事を返すヒナタ。
続けて稲鶴の口から驚くような言葉が飛び出した。
「ご両親が探してるっすよ!!」
「げっ」
おい、今こいつ何か不味そうな顔したぞ。
「それに、ヒナタちゃんって元々パークスに入る予定だったんじゃないですか?」
それを聞いて、自分も
「げっ」
と、思わず反応してしまった。
バレたか。
「?………ミヒロさんも何か知ってるんっすか?」
「ああ……、いや、まあ……」
面倒なことになったぞ………。
「二人とも、話を聞かせて貰っても?」
先程までとは打って変わって冷たい目を向けられる。
「あぁ、わかった……」
お手上げだ。
それに、自分もヒナタの両親の話が気になる。
自分達は稲鶴にパークスの事務室へ連行されてしまった。




