医務室にて
「う………ん……、ここは………」
目を開けると、視界に映ったのは知らない天井でした。
腕に点滴の管が繋がれ、頭を触ると包帯が巻かれていました。
「ここはパークス第一支部の医務室だよ。」
私が寝ているベッドの右隣りから声が聞こえます。
声のする方を見ると、私と同じくベッドに寝かされているサヤさんがいました。
左脚が天井から吊られています。
「あっ、サヤさん……。無事だったんですね」
「左脚は折れてしまったがね。まあ、命があるだけ儲けものさ」
こちらを一瞥もせず、天井を見つめたままサヤさんは言います。
「魔獣は………、ミヒロさんはどうなったんです?」
「安心したまえ、魔獣はミヒロが倒したよ。ミヒロも無事だ。これからまた仕事に出るそうだ」
「そうですか。仕事に……」
窓の外からは夕陽が差し込んできています。
日中に色々ありましたが、ミヒロさんは今夜も魔獣の駆除をするそうです。
「あの……、私はいつまでここに居れば……」
「僕に聞くのか?医者じゃないんだぞ」
「あっ、すみません……。」
「……君は全身打撲に脳震盪を起こしていて、全治一週間になるそうだ」
「教えてくれるんですね」
「聞いていたからね。ちなみに、僕の方は全治一ヶ月だそうだ。僕ら二人とも、毎日の継続的な治癒魔法による治療が必要だから、この期間はパークスから出ることはできないよ」
「えっ、じゃあ、私が退院したら、どうすればいいんですか?」
「スペースに戻るといいだろう。初めてであれだけ戦えるなら、あとはミヒロの元で実践経験を積むのがいい」
「そう、ですか………」
ラボに預けられておよそ一ヶ月。
ご飯は貧相だし、中も外もゴミだらけでしたし、今日なんかは散々な目に遭わせられましたけど、サヤさんにはなんだかんだでお世話になりました。
「あの、サヤさん……、今までありがとうございました」
「急にどうした?そんな今生の別れみたいな挨拶をして」
「もう私、スペースに戻るんですよね?サヤさんには、魔法を使えるようにしてもらったり、魔法や魔獣のことを色々教えてもらったりでお世話になったので……」
「あぁ、礼には及ばないよ。僕も楽しかったよ。ラボではずっと一人暮らしだったからね。あっちに戻っても頑張りたまえよ」
「はい、頑張ります」
【キャラクタ―、作中用語、設定解説】
・パークス第一支部
七つに分けられた魔獣防衛区の第二区に設置されたパークスの支部である。第一区にパークス本部があり、第二〜七区にはそれぞれ第一〜第六支部が設置されている




