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月下の光芒  作者: チェックメイト斉藤
魔獣駆除組織スペース
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チュートリアル

「いてて………」


 転倒した原付から勢いよく放り出されてしまいましたが、幸い大きな怪我はしませんでした。


「大丈夫かい?ソラ君」


「まあ、なんとか………。サヤさんは大丈夫でしたか?」


「ブレーキを掛けてて命拾いしたね。ところどころ擦りむいてしまったが、何より首が痛いよ」


「それは……、すみませんでした」



サヤさんが倒れた原付を起こします。


「あぁ、傷だらけになっちゃいましたね」


「まあ、乗れるなら見た目はどうだっていいさ。気を取り直して進もうか」


再び原付に乗るのかと思いきや、原付を置いてサヤさんは歩いて先へ行きます。


「乗らないんですか?」


「ここから先は悪路だ。事故しようがしまいが、どちらにせよこの辺りで降りるつもりだったよ」


 確かに、道を進むにつれてアスファルトが剥がれたり、建物が崩れてそこら中に瓦礫が散乱したりしているのが目立ってきました。

ここまでの道中でもちらほらとそういう部分は見られましたが、原付を降りてからは比にならないほど多いです。


「なんでこんなに荒れてるんです?」


「連日の激しい戦闘の結果だよ。この辺りが夜間戦闘の最前線だからね」


「え、やっぱり私達がこんなところにいるのって危ないんじゃ……」


「出発前にも言っただろう。夜が明ければ魔獣の活動は弱まるんだ。特に朝方は数が少ないから、比較的安全に捜索ができるわけさ」


「へぇ……、できれば魔獣と遭遇せずに終わりたいですけど………ん?」


「どうかしたかね?」


 こちらを向いて話すサヤさんの背後、10m程先でしょうか。何かがこちらに向かって来て………。


「危ない!!」


咄嗟にサヤさんを押し倒すと、頭上を黒い影が横切ります。


「おっと、助かったよ」

間一髪というところだったのに、サヤさんは信じられないくらい落ち着いています。


「もう、さっきからよそ見ばっかりして!!ほんと気をつけてくださいよ!!」


「君もこんな状況で説教してる場合かね」


そう言うと、サヤさんが懐から拳銃を取り出し───


ダンッ!!

「ギャンッ!」


押し倒されたまま、私の背後に再び迫ってきていた魔獣に向けて発砲しました。

弾丸は見事命中し、魔獣はもがき苦しんでいます。


魔獣は猫の体に角の生えた見た目をしていました。

猫にしては体が大き過ぎるような気がしますが、とにかく猫です。



「ふう、珍しく命中だ」

ゆっくり立ち上がりながら、サヤさんは呑気に言います。


「珍しくってなんですか……」

外れたらどうなっていたことやら………。


「さて、ここからは君の仕事だよ。猫の魔獣は素早いが、奴は手負いだし、チュートリアルにピッタリだろう」


「ここで……」

ついに初めての戦闘………。背負っていた杖を手に持ちます。


「まずは相手をよく見る」


言われて魔獣の方を見るとちょうど立ち上がってこちらに飛び掛かってくるところでした。


「うわっ!!」

咄嗟に魔獣の攻撃を躱すと、


ダン!!ダン!!ダン!!


サヤさんが発砲し、魔獣を牽制します。


「よし、上手く避けたね。いいかい?魔獣の攻撃をよく見て、後の隙を狙って攻撃するのが対魔獣戦における基本戦術だ。だから、相手の動きをよく見るんだ。さっき話した魔素の効果は覚えているだろう?」


「はい」

一つ一つの動作を意識的に実行すれば、魔素が身体能力を高めてくれる、という話です。


「それじゃあ、やってみようか。まずは防御魔法を展開だ」


言われた通り、防御魔法を展開します。

体の前面に透明な板が生成されました。


「さあ、来るぞ」


苦しそうに体勢を立て直し、魔獣がこちらへ向かって走ってきます。


今度は引っ掻き攻撃……!

動きをよく見て攻撃を躱していきます。


「よっ……はっ……!」

運動が苦手な自分でもこんな素早い動きを見切って避けられるなんて、正直驚きです。


何回かの攻撃を避けた後に噛みつき攻撃が飛んできます。


これも難なく躱して……っ!!

「うわわっ!!」


左足が何かを踏んでしまいバランスを崩して転倒してしまいました。


「ははは、鈍臭くてすまない」


「ちょっとサヤさん!!」


踏んづけたのはサヤさんの足だったようです。

というか、さっきから避けてる最中に何度も体がぶつかって邪魔でした。


なんで足引っ張ってるんだこの人………。


なんて考えていると、


「おい!前!!前!!」


サヤさんが肩を叩き、前を指差します。

そこには、目前に迫った魔獣の姿が……!!

心臓が早鐘を打ち、一瞬の時間がスローモーションのようにゆっくりになります。


ここから起き上がって避けることは……できるかもしれませんが、避けたらサヤさんが危ないです。

防御魔法は……、シールドごと押し潰されて状況がより悪化してしまいます。


ここで取れる選択肢は……。


「おいおい、嘘だろう!?」


「うわぁぁあああああっ!!!!」


杖を魔獣に向け、全力で攻撃魔法を放ちました。

【キャラクタ―、作中用語、設定解説】

・魔獣の活動時間

魔獣の主な活動時間は夜間である。

朝方が最も魔獣の出現数が少なく、午後から日没にかけて出現数は増えてゆき、夜間は日中のおよそ8倍の魔獣が現れる。


・防御魔法のおさらい

防御魔法は手のひらから板状に固めた魔素を展開する魔法である。

展開したシールドは空中には固定できず、手のひらに追従して動いてしまうため、魔獣の攻撃を受ければシールドごと吹き飛ばされてしまう。

あくまで、魔獣の攻撃を受けてしまった場合に致命傷を避けるための保険として扱うのが基本の運用方法であり、魔獣の攻撃は可能な限り避けなければならない。

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