魔法の杖
いざ、出発!!といきたかったのですが、サヤさんに呼び止められ、1メートルほどの長さの棒状の機械(?)を手渡されました。
ずっしりと重いそれは、全体が白いカバーに覆われていて、片方の先端は花が開いたような形をしています。
「何ですか?これ?」
「杖型攻撃魔法強化端末、『カドゥケウス』だよ。僕の偉大な発明の一つさ。」
「へぇ〜………、なんかかっこよさげな名前ですね……」
自身の発明品に『ルンパ』とか『きゅうべえ』とか名付けるネーミングセンスを持った人が考えたとは思えません。
「その名の通り、攻撃魔法の威力を数倍に高めてくれる。本来は君の所属であるスペースから支給されるものだが、支給前にこのような事態になってしまったからね。昔、僕が使ってたものだから少し古いモデルなるが、君に貸してあげるよ。」
「あ、ありがとうございます」
手渡された杖はずっしりと重く、表面には細かい傷がたくさんついていました。
「さて、出発前に一度試し撃ちをしてみようか。杖を手の延長だと思って、杖の先端にいつものようにスフィアを作ってみてくれ。あ、そうだ、魔素の量は普段の練習の三分の一くらいでいいよ」
次は外に出て試し撃ちです。
「あの………こんな悠長にしてていいんです?」
「練習も無しにぶっつけ本番で使うわけにはいかないだろう?ほら、さっさと撃ちたまえよ」
急ぐ気があるのか無いのか、なんだかモヤモヤしながら杖を構え、杖を握る手に力を込めます。
魔素の量は三分の一とサヤさんは言っていましたが…………。
三分の一………これぐらい……かなぁ………?
杖の先端にスフィアが形成されていきますが、正直、上手く調節できている自信がありません。
「よし、いきます」
杖を振ると勢いよくスフィアが飛び出し───、
「わわっ!!」
発射の反動で尻餅をついてしまいましたが、スフィアは狙い通り的へ吸い込まれていき───、
ドガッシャァァァアアアアアアアアン!!!!
的は木っ端微塵に吹き飛んでしまいました。
「………ふむ。まあ、これだけできれば十分だろう。反動が大きかったようだから、次はもう少し威力を落とすか、もっと腰に力を入れて重心を低くしながら構えることだ」
「あ、はい………」
あまりの威力に杖と的の残骸を交互に見つめながら、呆然とすることしかできません。
「ほら、ぼさっとしてないで早く立ちたまえよ。出発だ」
差し出された手を掴み、立ち上がります。
驚きでバクバクとする心臓を落ち着かせながら、私達はラボを出発したのでした。
【キャラクタ―、作中用語、設定解説】
・カドゥケウス
北条サヤが開発した杖型攻撃魔法強化端末。
攻撃魔法使用時の魔族の脳波を受信し、その電気信号を再現・増幅することで、攻撃魔法を通常の数倍の威力に高める『アルテミスシステム』を搭載している。
杖の形状をしているのは、「魔法といえば魔法の杖だろう」という北条サヤの設計思想によるもので、結果論ではあるが、杖の形状をしていることで直感的な操作が可能になっている。




