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月下の光芒  作者: チェックメイト斉藤
魔獣駆除組織スペース
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教えて!!サヤ先生!!【魔法とは】

「『教えて!!サヤ先生!!』のコーナー!!」


「そのタイトルコール毎回やるんです?」


「僕がメインのコーナーだ。何をしようが僕の勝手だろう。と、いうわけで、今回はこの世界の魔法についての解説だ。まず、魔法の種類についてだが……」


確か、前回ちらっと言ってたような……?

「えっと、攻撃魔法、防御魔法、飛行魔法、治癒魔法でしたっけ?」


「よく覚えているね。それが僕達魔族が主に使う四つの魔法だよ。」



 今はミヒロさんに指摘された攻撃魔法の欠点の改善と並行して、防御魔法も練習中です。ここから更に二つも覚えるとなると…………。


私の悩みをよそに、サヤさんの解説は続きます。



「さて、まず攻撃魔法についてだが、これは君もご存知の通り、魔素を球状に圧縮、敵にぶつけて破裂させ、ダメージを与える魔法だ。このとき、魔素を球状に圧縮したものを『スフィア』と呼ぶ。スフィアは発射後にある程度軌道をコントロールすることも可能だ。基本的に君達はこの技一本で魔獣を仕留めるわけだから、最も重要な技だと言えるね」


「あの、前から思ってたんですけど、魔獣駆除に使う攻撃魔法がこれ一つっていうのはどうなんです?」


「『どう』とは?」


「魔獣にも色々種類がありますし……、これじゃ手数が少なすぎるというか……」


「まあ、心配になるのもわかるが、魔法といってもファンタジーみたいに万能ではないし、現状、これが最も魔獣に有効な攻撃手段だからね。それに、きちんと当てれば、どんな魔獣にも通用する強力な技だよ。だから、君も早く習得することだ。」


「あはは……、頑張ります……」





「お次は防御魔法についてだね。これについてもどういう魔法かは君も知ってるだろう?」


「魔素を板状に形成して盾にする技ですね。」


「その通り。このシールドはそこそこ優秀でね、この能力を鍛えれば、そこら魔獣の突進程度なら十分に耐える強度を持てるし、魔法攻撃を遮断する効果もある。」


「そういえば、ミヒロさんはルンパのビームも防いでましたっけ?」


「うっ……、あまりその話を出すのはやめたまえ……。まあ、鍛えればああいう近代兵器すら防げるようになるのが防御魔法だよ。」



魔獣相手に鍛えた技でビームを防ぐハメになるなんて状況はなかなか無いと思いますが………。



「ただ、この魔法、かなり重大な欠点があってね」


「欠点?」


「普通、バリアと言ったら、展開すると空中に固定されるイメージがあるだろう?だが、防御魔法は違っていてね、防御魔法も攻撃魔法と同じく手のひらから発生させるが、発生させたシールドは手のひらの動きに追従してしまうんだよ」


「それの何が問題なんです?シールドは自由に構えられる方がいいですよね?」


「いやいや、考えてもみたまえ、空中に固定できないんだぞ?さっき、防御魔法は魔獣の突進を防げるとは言ったがね、その突進を受け止めたところで、シールドごと弾き飛ばされてしまうんだよ」


「え」

それってかなり致命的な欠点なのでは?


「しかし、直接魔獣の攻撃を受けるよりは間に防御魔法を挟んだ方が比較的ダメージは少ないからね。『攻撃を受けてしまっても致命傷は避ける』ために使うのが基本で、防御魔法を展開しつつ魔獣の攻撃を回避するというのが魔獣の攻撃の基本的な対処法になる。間違っても攻撃を真正面から受け止めたりしないように」



回避………、できるかな……。



「次は飛行魔法だね。これはまだ君もやったこと無いだろうから簡単に説明すると、全身に纏った魔素を操作して体を浮かせるという技になるね。移動速度は時速約20km、自転車よりも少し速い程度だ」


「意外と遅いんですね」

飛行というと、もっとビュンビュン飛ぶイメージがあったのですが。


「まあ、これも個人差があるがね。得意な人はこの2倍以上のスピードで飛べたりするよ。」


「それだけ速く飛べると移動に便利そうですよね。あと、空中から攻撃できるなら魔獣も安全に倒せるじゃないですか」


「あー、そのことについてなんだがね……。魔法の同時併用は高度な技術でね。攻撃するなら飛行魔法を解いて地上に降りる必要があるんだよ」


「えーっ!?なんですかそれ!?」


「これも努力次第で同時併用も可能になるが、攻撃魔法の威力が落ちて効果が薄くなるし、飛行魔法も不安定になって落下の危険もある。それに、飛行魔法自体が難しい魔法でね、魔獣駆除に従事している魔族の約三割は使えない。だから無理して覚える必要も無いから安心してくれ」


「安心って……、最初から『こいつは飛べないな』なんて思ってます?」


「ん?いやいやそんなこと試してみないとワカラナイヨ」

サヤさんは首をブンブンと左右に揺らして否定します。




「はぁ。で、最後は何でしたっけ?」


「最後は治癒魔法だね。先に言っておくが、これもかなり難易度が高い上に応急処置程度の効果しか無いから、無理に覚える必要は無いよ」


「やっぱり私が覚えるのは無理だと思ってますよね!?」


「まあ、落ち着きたまえ。これに関しては君のお姉さんでも無理なんじゃないかな。使える人は確か30人いたかどうか………」


「防衛区の魔族って何人いるんです?」


「大体1600人くらいだね」


「そんなに少ないんですか!?」


「だからまあ、練習するに越したことは無いが、できなくて当たり前ぐらいの気持ちでいるといい。ちなみに、主な効果は止血と鎮痛。患部に手をかざせば軽い切り傷や打撲なんかは数秒で回復できるが、骨折や内臓破裂なんかの重い怪我は怪我人の負担を和らげることしかできないよ。まあ、毎日継続的にかけ続ければ、完治までの期間は短縮できるよ」


「それって言うほど治癒できてますかね……?」


「正直、名前負けしてるね。しかし、他にどう呼べばいいのかと言われたら困るが。」


「それにしても、ミヒロさんって凄いんですね」


「どうしたんだい?急に」


「だって、攻撃も防御も強くて、治癒魔法まで使えるじゃないですか。あ、飛行魔法は使えるんです?」


「………いや、ミヒロは治癒魔法を使えないが……」


「いやでも、ルンパのとき………」


「あぁ……、あれは治癒魔法ではないよ。本人の体質というかなんというか……。あと、ルンパの話題は出さないでくれ。今回の講義はここまでだ」


「あっ、どこ行くんです」


「寝る」



 そう言ってサヤさんは部屋から出ていってしまいました。

体質……?全身火傷の大怪我を数日で治すのが……?

気になることが増えてしまいました。

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