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月下の光芒  作者: チェックメイト斉藤
魔獣駆除組織スペース
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スペースへようこそ①

 2046年3月23日。今日からこの私、犬井ソラは魔獣防衛区内の駆除組織、「パークス」に加入する予定だったのですが…。


「ぎゃあああああああああああ!!!!助けてぇえええええええええええ!!!!」


 前で私の手を引き走りながら泣き叫んでいるのは双子の姉のヒナタ。

私達は今、魔獣に追われている最中なのです。


 あれは…元はイノシシだったのでしょうか?ヒグマ程はあるんじゃないかという巨大な体躯に頭からはぐにゃぐにゃと曲がった角が何本も生えています。そして、よだれを撒き散らしながら執拗にこちらを追いかけ回すその姿は、明らかに正気ではありません。


「まだ……、まだ死にたくないぃ……。」


 地獄の追いかけっこが始まって早5分、いえ、それ以上かもしれません。

姉の声が枯れてきました。どんどん足も遅くなっていきます。叫びながら走るし、足の遅い私の手を引っ張ってるからこうなるんです。

でも、私も同じく体力の限界です。というか、もう限界を超えて走り続けています。

ここまで曲がり角を利用して上手く逃げてきましたが、魔獣にかなり距離を詰められてしまいました。


 と、ここで急に魔獣が加速し、こちらに突っ込んできました。


「お姉ちゃん!!」


 咄嗟に姉を突き飛ばし、私も勢いでアスファルトの上を転がりました。地面にぶつけた箇所が鈍く痛みます。

その直後、先程まで私と姉がいた空間に黒い影が横切り、十数メートル先の建物に激突しました。

工事現場で聞くような破壊音、地面を伝わる振動、崩れ落ちるアパートの外壁、あれだけの衝撃を受けて未だ健在の魔獣。


 あまりの破壊力に戦慄しましたが、幸い、今の攻撃を避けたことで、また魔獣との距離が開きました。


 まだ逃げられる。きっと助けは来る。


「ほら、お姉ちゃん、はやく起きて!!」


 姉の体を揺すりますが、反応がありません。

どうやら、私が突き飛ばした時に気を失ったようです。

姉を抱えて逃げようにも、先程から限界以上に酷使していた私の足はプルプルと震えるばかりで上手く力が入らず、立ち上がることすらできません。


 遠くで体勢を立て直した魔獣に睨まれた瞬間、私は「死」がすぐそこまで迫っているのを実感しました。

途端に、逃げる気力が失せ、ポロポロと涙が溢れ始めました。

涙を流したって、相手は魔獣です。情けをかけてくれるはずもないのに。


 もう、ここで私は死んでしまうんだ。

脳裏に浮かんだのは、故郷の家族の顔。


(お父さん、お母さん、ごめんなさい………)


 再び魔獣が走り出し、こちらに迫ってきたその時───。


 こちらから見て左手の建物から何かが飛び降りて……、あれは……、人………?

その人は魔獣の側頭部に蹴りを入れて……………え、蹴り?ほんとに?


 一瞬の出来事でしたが、その嘘のような出来事は何十秒にも感じられました。


 本当に信じられませんが、突然現れた女性があの屈強な魔獣を一発の蹴りで仕留めてしまったのです。


 これが、私達姉妹と後の私達の雇い主である「日比谷ミヒロ」さんとの出会いでした。

【キャラクタ―、作中用語、設定解説】

・犬井ヒナタ

魔族。15歳。

明るく元気な性格。

中学を卒業し、魔獣駆除組織【パークス】へ加入するために魔獣防衛区にやってきた。


・犬井ソラ

ヒナタの一卵性の妹。

ヒナタとは対照的に内気で冷静な性格。

地元を飛び出した姉を追いかけて魔獣防衛区にやってきた。


・パークス

魔獣防衛区最大規模の魔獣駆除組織。魔獣防衛区の第一区に本部を置き、その他の各エリアに支部を持つ。

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