人体実験②
「いや、本当に反省はしているんだ。多少大袈裟な方が気持ちが伝わると思って…………。申し訳ない」
声が震えてる……。
もしかして、泣いてます……?
彼女が落ち着いたのは、それから五分ほど啜り泣いた後でした。
「さて、まずは自己紹介といこう。僕は北条サヤ。魔獣駆除用の装備開発に従事している。戦闘行為は苦手だから表に出ることは無いが、ミヒロの部下なら、これから先も何度か関わることがあるだろう。その時はよろしく頼むよ。」
「犬井ヒナタです!」
「犬井ソラです。よろしくお願いします」
姉、私の順で握手をしました。
挨拶もそこそこに話は本題へ入ります。
「今日は魔法を使えるようになりたいのだろう?手早く済ませてしまおう」
そう言って、先程から部屋の中心に置いてあった"何か"に覆い被さっていた布を剥がすと、そこにはゲーミングチェアをベースに様々な機器が取り付けられた椅子が姿を現しました。
「何だこれ。作りが雑だな」
ミヒロさんのドストレートな感想。
正直、私もそう思います。若干埃被ってるし……。
「失礼な。……と言いたいところだが、試作品だからね。」
そう言いながら、椅子と太いコードで繋がっているタブレット端末をミヒロさんに手渡します。
「君はこの画面上に手のひらを乗せていてくれ。合図をしたら魔素を流してくれればいい」
「わかった」
言われた通り、画面に右手を乗せます。
それを確認して、サヤさんがパソコンを操作しています。
「よし、セッティング完了だ。まずはどっちからだい?」
「はい!はい!はい!私から!!」
余程、魔法が楽しみだったのか、姉が手を高く掲げて飛び跳ねています。
「それじゃ。椅子に座ってくれ」
「はーい!」
「はい、これ被って」
「はーい!」
「よし、固定だ」
「はーい!………え?」
何やら電球がピカピカ光る怪しいヘルメットを被った姉は首、胴体、両手両足など全身をベルトでガチガチに固定されてしまいました。
さっきまでニコニコしていた姉の表情が、今から拷問でも受けるのかといったその風貌に、だんだんと青ざめていきます。
「えっと、あの、う、動けないんですけど………?」
「それは………、動かれると困るからね。はい、最後にこれ」
「は、ハンカチ…ですか……?」
「辛かったら、これを食いしばって耐えてくれたまえ。健闘を祈る」
「えっ!?やだ!?痛いのやdもごっ!?!?」
「さて、いくら抵抗したって結局こうなることは避けられんのだ。ささっと終わらせてしまったほうが楽だろう」
姉の口にハンカチを詰め込んで、再びパソコンへ向かいます。
「んーっ!?んーっ!?」
縋るような目でミヒロさんと私を交互に見る姉。
ミヒロさんは、
「ご愁傷さま」
と、一言だけ。
私からは何も言えません。というか、次は私なんですよね………?
程なくして、無慈悲にもその時がやってきてしまいました。
「………これで『実行』っと……。ミヒロ」
「ん」
サヤさんの合図にミヒロさんが右手に力を込めます。
一瞬、ミヒロさんの右手が光ったかと思うと────
バチバチッ!!
「あひゅっ!?」
椅子から火花が散り、素っ頓狂な声を上げる姉。
直後にがっくりと項垂れ、ピクリともしなくなってしまいました。




