『お掃除』ロボット②
ヒナタの押したボタンで巨大ロボット掃除機が起動、『ルンパ』とかいうふざけた名前のそれは、現れて早々に壊れたスプリンクラーのように水を撒き散らし続けた。
その様子を自分達三人はぼんやり眺めている。
……えっと、何しに来たんだっけ。
「いやいや、なんで三人揃ってぼーっと突っ立ってんだ。ほら、あっちで作業するぞ」
自分の声で我に返った二人の間抜けな表情。
自分の背後をなんだか魂を抜かれたような足取りでフラフラとついてくる。
それにしても、全身びしょ濡れだ。
十中八九、アイツの発明だろうが、本当にアイツが掃除用にロボットを作るのだろうか。
ふと、頬を水が伝い、唇を濡らす。
………しょっぱい?
ルンパが撒いていていたのは塩水………。
──瞬間、察しが付いてしまった。自分でも察しが良すぎると思うほどに。
後ろを振り返ると前面の装甲を展開したルンパ。
まずい、攻撃が始まる!
背後の二人の手を思いっきり引っ張り、地面の濡れてない方へ勢いよく投げ飛ばす。
と、同時にルンパから何かが発射された。何秒にも感じられる長い一瞬、視界の端でスローモーションのように飛ぶそれを捉える。
恐らく電極だ。回避は間に合わない。
電極が濡れた地面に触れ、全身に激痛が走る。
「……………………ッ!!」
あまりの痛みに声も出ない。
全身が小刻みに震え、視界が明滅し、バチバチと激しい音が鳴り響き、衣服や肉の焦げる臭いがする。
ブルブルと震える両手をぎゅっと握ってひたすら耐える。
大丈夫だ。これくらいなら死なない………多分。
むしろ警戒すべきは電撃の後だ。恐らく追撃が来る。
そう考えているうちに電流が止まった。
すかさずルンパから砲門が露出し、こちらに照準を合わせた暗い砲口の中に光が集まっていく。
「………おいおい、マジか……」
これって、いつかアイツが話してた『荷電粒子砲』とかいうやつじゃ……。
「ミヒロさん!!危ない!!」
「うずくまってじっとしてろ!!」
直後にルンパから光線が発射された。
回避したいが背後には丸腰の部下二人。
すかさず魔素のシールドを展開し、防御の姿勢をとる。
受け止めた光線の熱と圧力は凄まじく、直接触れていないのに全身が火傷しそうなのと同時に、必死で踏ん張ってはいるが今にも吹き飛ばされてしまいそうだ。
後ろで二人が何か叫んでいるが、まったく聴き取れない。
これ以上は耐えられない、そう思った瞬間、
ボンッ!!
ドカンッ!!
ゴミ山の中のガラクタが次々と爆発し、ルンパの動きが一時的に止まった。
どうやら受け止めた光線の一部が跳ね返って、ガラクタに誘爆したようだ。
その隙に二人を抱え上げ、少し離れたゴミ山の影に身を潜めた。
【キャラクタ―、作中用語、設定解説】
・荷電粒子砲
今作の時代設定は2046年。きっと実現してる。きっと。




