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064.話し合い

分かってたが、三郎さんともそういう関係になった。


「私が嫌いなのか?」


と問われれば、むしろ、好きだとしか言いようがない。

もう郷に入りては郷に従えだ。

一夫一妻制なんてないんだ。

ここでは子孫を残すことこそ、正義なんだ。

知らない間にハーレムが完成していたが、

もう、こうなったら、

幸せであればそれでいい。特にオレが。


そんなことを考えながら、粉を混ぜている。

主にあやたちが。

オレ一人でするつもりだったんだけど、

あやもついてきて、手伝ってくれている。

あやがいるから、他の子も寄ってきた。

泥遊びと勘違いしているのかな?


「それ、何、やってるんですか?」


東矢がオレが作業しているのを見かけて、声を掛けてきた。

相変わらず、モノ作りが好きなヤツだ。


「ローマン・コンクリートだよ。」


得意げに、あやが説明する。

この半年で、ぐっと背が伸びたし、急に女っぽくなった。

それなのに、こういうところはまだまだ子供っぽい。

棒を振り回しているせいかな。

オレが勝手に決めた年齢では12歳なんだけど、

見た感じ、14歳くらいに見える。


「ローマ・・・、リート?」


「ローマン。」


「ローマン。」


「コンクリート。」


「コンクリート。漆喰みたいですね。」


火山灰を入れてるので灰色になっているけど、

中身も石灰だし、色の違いでしかないか。


「まとめて混ぜた方が良いのでは?」


地面に並べている木枠を見て、東矢が言う。


「粉の配分を変えているんだ。あと、水の量も。

 硬さや固まる速さを調べる。」


「なるほど。」


父さんノートにはもちろん分量も載っているけど、

日本とローマの材料が同じなわけがない。

集めたのがオレだしな。

素材の良し悪しなんて分からないし、

第一、写真を見ながら、これかな~というものを集めている。

多分、合っていると思うけど、

実は石灰岩じゃない可能性もある。

石灰2:火山灰4:砕石6:海水1を基準に、

少しずつ分量を変えてベストを探す。

砕石には生石灰を2~3cmの大きさに砕いた。

その他にも、火山で拾ってきた石を砕いて入れる。


(後は待つだけだ。)


昼過ぎまで待った。

間違いなくコンクリートブロックだ。

それほど大幅に配分を変えなかったので、

手に取ると、どれも硬さは十分だ。


「結構、硬くなりましたね。」


東矢が楽しそうだ。


「これが良さそうかな?」


「そうですね。それが良いように思います。」


コンクリートブロックはしっかりした重量をしている。

まさに詰まったという確かな重さを感じる。


(イケる!)


日本は地震大国。

イタリアも地震が多いらしい。

そもそも、ポンペイは火山の噴火で埋もれたんだから、

日本と同じように大陸プレートがあるのかもしれない。

見た感じ、どれも良さそうに思えるが、

その中でも一番、記憶に近いものがある。

この配分で行こう。

次はいよいよ話し合いだ。


「頭領から大事な話があります。

 では、頭領。」


頭領補佐である、才蔵が会議を進行する。

うなづいて口を開いた。

広間に集まった面々は、この里の主だった者全てだ。

この広間いっぱいに居並んでいる。

小さな里とはいえ、歴史があり、使命もある。

改めて、相当な面構えだと思う。


「話したいのは、この里に差し迫った危機についてだ。」


さすがに集まった人間が騒ぐことはなかったが、

空気がざわついているのが分かる。

オレは手を上げた。

シンと静まる。

覚悟のある人たちは、やはり違う。

朝礼を思い出した。

全校集会がダルくて、早く教室に帰りたいのに、

うるさいヤツ待ちの状況にイライラしてた。

やっぱり、親金なのに勘違いしているヤツとは違う。

頭領であるオレの話を聞こうとする姿勢もありがたいが、

こういう時、とても重大な話をすると思われていることが、

一定の信頼を得ている証だろう。


「先ず、今後の見通しを話しておきたい。」


「それは、織田のことかい?」


里長が口を開く。


「頭領は、最初から織田を気にしていた。」


と東平さん。


「だが、織田の天下は続くのか?

 三好、松永という敵がいて、

 新たに、朝倉、それに、浅井も敵になったが?」


小鉄さんが疑問を口にする。

頭領を引き受ける条件として、

自由に意見を言っていいことにしている。

しかし、合議制ではなく、頭領が最終決断する。

議論を十分にして、頭領は尊重するという形だ。

頭領の決断が必要なこともあれば、

頭領の暴走が心配なこともある。

それに、頭領に依存すると、烏合の衆になる可能性がある。

どんな政治体制も、いつか、どこかで腐る。


どちらにせよ、反対意見を納得させれないようでは、

100%の答えじゃない。

100%は無理でも、目指さないといけないと思ってる。

あれだ。悪魔の代弁者だ。

100人が100人とも正しいと思っても、

人のすることに100%正しいなんてありえない。

集団心理とか、雰囲気に引きずられるかもしれないから、

1人は必ず反対意見を言わなければならないという。

あの役目を作った方がいいのかもしれない。


「織田は、一時(いっとき)、苦しい時もあるかもしれないが、

 もっと大きくなるだろう。」


「織田の天下が続くということか?」


「織田は平氏を名乗り始めた。

 公方の下の平氏といえば、鎌倉の北条だ。

 ということは、室町殿の下で執権になるつもりだろう。」


ざわめきかけた声を、手を上げて抑える。


「それは、近江の寺社で見せてもらったが、

 天下布武という朱印を使い始めたことで分かる。

 聞いたところによると、

 京と畿内の争いを収め、帝を守り、室町の世に戻す、

 ということらしい。」


天下布武は、ずっと日本を統一する意味だと思ってた。

戦国時代に生まれた天才が、俺が天下を獲ってやると、

天下に向かって吠えたというのはカッコいい!

だけど、伝わってきたのは、どうやら違うっぽい。

まあ。そうだよね。

美濃を獲ったとはいえ、尾張と合わせて100万石程度。

まだまだ、弱小だもの。

大同盟の盟主とかだったら分かるけど、

同盟は家康だけだし、天才である信長が、

無駄に周りを挑発するようなことはしないよね。

ただ、本人がどう思ってるかは分からない。

「本当はそうなんじゃない?」と思ってたいというのもある。

もしかしてだけど、信長はうつけのイメージが残ってる。

「小僧が大きなことを」と笑ってくれるというか、

信玄や謙信が可愛げを感じてくれると思ったのか?

そういう駆け引きなら、それはそれで恐ろしいが。


「それで、自分に従うかどうか、選ばせた。

 朝倉は上洛しなかったから、攻めた。

 浅井が動かなかったら、朝倉は敗れていただろう。」


「だけど、浅井が動いた。

 それで、ふりだしに戻ったというわけだ。」


ナイス、小鉄さん!

それが本題なんだ!


「そう。浅井が動いたことで、この里が危なくなった。」


「どういうことだい?」


里長が聞いてくる。

オレは間を空けた。

みんなが固唾(かたず)を呑んで、オレの次の言葉を待つ。


「六角とのいざこざの時にも言ったけど、

 織田は近江を重く見ている。

 それは、京への道だからだ。」


「あっ、そういうことか!」


東平さんは分かったらしい。

分かっていない人がいるので、

うなづいて、説明を続ける。


「織田の本領は、尾張と美濃だ。

 そこから京へ向かうためには、

 近江を通らなければならない。

 その近江が浅井のために危なくなった。

 今は、横山城に兵を入れて、南近江を通っているが、

 六角が南近江で動くと、京にいる織田軍は、

 美濃・尾張の兵と合流することができない。

 必ず、南近江をしっかりと押さえようとするはずだ。

 だから、六角に手を貸すのは、無駄だと言った。」


「なるほど」というつぶやきが聞こえた。

みんながうなづいている。

どうやら、ここまでは理解してもらえたようだ。

東平さんはずっと渋い顔だ。


「ここからが、オレが言いたいことだ。

 織田は、何か事が起きれば、

 京への道が閉ざされるかもしれないことを知った。

 じゃあ、どうするか。

 なら、もう1本、あればいいじゃないかと。」


「もう1本?」


「まさか!?」


年配の人は気づいたようだ。

急に顔が険しくなる。

東平さんは怒っているのではと思ってしまうほど、

真っ赤になってしまっている。


「そう。尾張から伊賀に抜ければいい。」


オレが言った途端、紅雲、碧嵐、楓、琴音、鈴音たち、

ようやく出席を許された若い子たちは蒼白になった。


「と、棟梁は、伊賀が戦になると言うのか?」


雷蔵さんが口を開く。


「伊賀が戦わずに降伏するかもしれないじゃないか。

 それに、織田がそこまでに敗けることもある。」


またまた、ナイスだ!雷蔵さん!

反対意見があってこそだ。

それを説明できてこそ、納得が生まれる。

それに、相手がまた良い!

こういう時、余り意見を言わない雷蔵さんだからこそ、

その発言に重みがある。

現に、若い子は、少しホッとしたような顔をした。

それをどん底に叩き落としたいわけじゃないんだけど、

一応、意見を言っておかないと。


「織田は、まだ畿内が収まっていない中で、

 朝倉・浅井を敵にした。

 おそらく、敵はまだまだ増えるだろう。

 それが、オレが言う織田のがんばりどころだ。

 だが、織田は踏み止まる。

 踏み止まれば、誰も止めれなくなる。」


「それは間違いないのか?

 本当に織田は転げ落ちないのか?」


「みんなは、織田をそれほどと思っていないだろう。

 やはり、一度、うつけと思ってしまうと、

 なかなか変えられないということも分かる。

 だけど、先代でも成しえなかった尾張全てを手に入れ、

 今川を破り、美濃を手にしたと思ったら、

 京に上り、流浪の人でしかなかった室町殿を公方にした。

 運が良かっただけで、できることじゃない。

 いや、運も実力のうちと言う。

 力があっても、運がなければ敗れるしかない。

 織田を英傑と思っているのは、こういうところだ。

 京に近く、銭を得られる尾張に生まれ、

 米を得られる美濃を手に入れた。

 こんな運が他の大名にあるだろうか?」


「それはそうかもしれないが・・・」


「朝倉は室町殿を一度は手に入れながら、

 織田に渡してしまった。

 朝倉は力のある家で、天下を獲れる機であった。

 それほどの機であったのに、見逃したんだ。

 最後には敗れるしかないだろう。

 伊賀のことだが、」


一度、話を切る。

少し考えた。

伊賀と甲賀はこの里と縁が深いと聞いた。

伊賀の批判になると、感情的なものが邪魔すると、

話が進まない気がする。

里長を振り返った。


「伊賀のことを言っても大丈夫だろうか?」


里長はうなづいた。


「つながりがあるが、うちが下ってわけじゃない。

 前に言わなかったかい?

 伊賀と甲賀は、この里の前と後ろを守るためにある。

 いや、あったと言うべきかね。

 長い間に薄れてしまったんだよ。

 甲賀にはそれでも名残が残っていたが、

 伊賀では家々に分かれ、

 それぞれがそれぞれの考えを持っているからね。」


「もう、この里と関わりがないってこと?」


里長がうなづいた。


「甲賀のように頼んでくることもないだろうね。」


「なるほど」とうなづいた。


「じゃあ、遠慮なく言うけど、

 甲賀は人に仕えるが、伊賀は銭に仕える。

 誰にも仕えず、これからも寄り合いで決めていくだろう。

 それに、伊賀は山に囲まれていること、

 忍びとしての戦い方を考えると、

 十分に戦いになると思うのではないかな。」


「そう言われると、伊賀は戦うような気がする。

 だが、この里は伊賀に近いといっても、

 伊賀に手を貸したりしない。

 織田は戦っていない里まで兵を向けるのか?」


また、雷蔵さんだ。

もう、本当に「好き」って言っちゃいそうな質問だ。


「忍びであるということが理由だ。

 忍びは人の中に隠れる。

 織田から見れば、誰が忍びで、誰が忍びじゃないなんて、

 分かる訳がない。

 怪しいヤツは片っ端から殺される。

 しかも、伊賀が勝ちそうな気がする。

 それがまた大変なことになる。」


「なぜだ?勝つならいいじゃないか。」


「1度だけなら。

 伊賀は小さい領主の集まりだから、

 織田は油断していると思う。

 伊賀の土地にも詳しくないし、忍びの戦い方を知らない。

 だから、1度目は勝てるかもしれない。

 でも、その勝ちが、伊賀衆の目を曇らせるし、

 織田の怒りを買う。

 おそらく、伊賀をぐるりと取り囲むように、

 四方八方から、根絶やしにする勢いで攻めてくる。」


語り終えると、沈黙が流れた。

誰も咳一つしない。

若い子たち、特に女の子は、気の毒なくらい顔面蒼白だ。

脅かし過ぎたんだろうか。

でも、史実なんだよ。

人口の1/3、約3万人が殺されたと言われてるんだ。

里長が沈黙を破った。


「で、ここまで言うんだ。

 頭領には、何か、考えがあるんだろう?」

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