表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/60

058.お稲荷さん②

―現れたぞ!―


お稲荷さんが高い声を出す。

いつの間にか、空が暗くなっている。

まだ、夕方にもなっていないはずだ。


―奴らじゃ!後ろじゃ!早う、倒してくれ!

 早う、早う!奴らを倒すのじゃ!―


女性の甲高い声が頭に直接響くので、頭がキンキンする。


「な、なにが、」


後ろを振り返る。


「キャー!」


鈴音の悲鳴が上がる。


ふらっ


「うわっ! お、おいっ!」


鈴音が気を失って、倒れそうになった。

手を伸ばして受け止める。

葛葉がオレたちをかばうように前に立つ。

刀を抜いた。

オレは現れたそれをにらみながら、

お稲荷さんのところに鈴音を運んだ。


「鈴音を守ってくれ!」


地面に寝かしながら、お稲荷さんに頼む。


「葛葉、右に。」


「きぃえぇぇー!」


葛葉が右に移動しながら、近づいてきた1体を斬った。

バルーンの空気が抜けるように、地面に崩れる。

オレは別の1体を右下から斜めに斬り上げる。

ガイコツがバラバラになって地面に散らばった。


「嘘だろう!?」


地面に散らばった骨が、

元通りになろうと、集まろうとしている。

オレは骨を蹴り飛ばした。

すぐ後ろに近づいていたガイコツ3体に命中し、

うち一体が崩れた。


「あそこだ!あそこを見ろ!」


切迫した葛葉の声に、前方を見る。

さっき来た道、この社までの畦道に続く道の地面から、

ガイコツが這い出ようとしている。


「マジかよ!」


あれ、あの穴、何なの!?

もしかして、沸きポイント!?

いやいや、増えんのかよ!

とにかく目の前のガイコツを片付けなくては!

必死に剣を振るうが、

ガイコツは崩れるだけで、倒せたようではない。


「金剛拳!」


葛葉の金剛拳が、ガイコツをまとめて吹っ飛ばした。

這い出そうとしているガイコツも狙って、

地面スレスレを飛んでいく。

だが、やはり、散らばった骨が元に戻ろうとしている。

また、ガイコツは倒せていない。

散乱した骨がミミズのように這っている。

神経衰弱レベルで、誰の骨か分からないけど。


「お稲荷さん、倒し方は?」


―知らぬ。―


「葛葉は?」


「知らん!」


「クロ!」


―知らない!―


そりゃそうだ。クロが知ってたら、オレが知ってる。

こういう敵は核を攻撃するのがセオリーだけど、

無いんだよ!

あの京都の夜のがしゃどくろの時みたいに、

胸に分かりやすい、ここですよって印がない。

散らばっているのは、どう見ても骨だけだ。

魔石のようなものがあればと思うけど、見当たらない。

動きがカメ程度のスピードだから何とかなっているけど、

ゾンビくらいの速さだったら詰んでたな。


―おそらく、この者たちは地獄の亡者どもじゃ!

 地獄とつながったのじゃろう!

 次々と這い出てくるぞ!―


「マジで!?」


畦道をやってくるガイコツたちが、

シューティングゲームを思い出させる。

特に、葛葉が金剛拳をぶっ放してからは。


―この世に生を受けたものは、

 それが何であれ、不死などというものはない。

 それが神であろうともじゃ―


「それで!」


―そういうことじゃ。―


(その先を聞きたいんだよ!)


「金剛拳!」


また、群がってきたガイコツどもを葛葉が吹き飛ばす。

避けたりもしないから、モロに金剛拳に当たってる。

社は田んぼの真ん中。

道から、この社まで一筋の畦道がある。

金剛拳がほぼ畦道の大きさで飛んでいくから、

その畦道を来るガイコツどもが一網打尽になる。


(とはいえ、ジリ貧には変わりない。

 ガイコツがノロいから何とかなってるけど、

 葛葉もいつまでもは続かない。)


相変わらず、骨はひび割れ、砕けながらも、

元の姿に戻ろうとしている。


「骨は明らかに弱っている!

 絶対に、何かあるはずだ!」


核を探すが、骨以外に見当たらない。

ところどころ暗くて、骨に影ができている。


「暗いぞ、もう少し、灯りを・・・!?」


灯り?

周りは真っ暗だ。

ガイコツが出始めた時、辺りが暗くなった。

そして、灯りと共に、ガイコツがやってきたんだ。

そりゃそうだろう。

オレは上を見上げた。


「照らしてたんだものな。」


黒炎を弾丸のようにして発射する。

火の玉の1つを打ち抜いた。

火の玉はスーッと溶けるように消えていった。

その下の地面で、上半身ができかけていた骨が崩れ落ちる。

こちらも地面に溶けるようにして消えた。


畦道をわらわらと寄って来るガイコツの衝撃で

火の玉なんか気にもしてなかった。

ガイコツの付属物だとばかり思っていたけど、

こっちが本体だったのか。

オレは次々に火の玉を黒炎で撃ち落とす。

畦道を群がって来ようとするガイコツどもが、

本当にシューティングゲームとしか思えなくなってくる。

気づいたが、さっきより暗いのは、

火の玉がさっきより小さくなっているからだ。

ガイコツの動きもさらに遅くなっているし、

骨がひび割れたり、欠けたままになっている。

なるほど。骨を動かしたり、修復するのに、

火の玉のエネルギーを使ってるのか。


全ての火の玉を撃ち落とすと、辺りが明るくなった。

ガイコツが這い出ていた穴も消えている。


「ふう。一旦、戻ろう。」


葛葉とお稲荷さんの所に戻る。

鈴音は気を失ったままだ。


―何とか、敵は引いたようじゃの。―


「ああ。何とか終った。」


―終わってはおらん。

 亡者があれほどで終わるわけがあるまい。―


「嘘でしょ!?終わってないの?」


―われの状態が落ち着くまでは、まだ次があるじゃろう。―


「こうしちゃいられない!」


境内は小さい。4畳程度の広さだ。

社の両側に木が植えてある。

オレは社の周囲に、影収納からバリケードを出した。

こういうこともあろうかと、

丸太を胸の高さに積み上げたものだ。

本当はその前に逆茂木を置くんだけど、

火の玉に燃やされると、

この狭さでは、社に燃え移ったりすると、かなり危険だ。

ガイコツだし、丸太だけで大丈夫だろう。

骨に小枝が突き刺さって痛さを感じるとも思えないし。

置いてみて思ったが、社、邪魔だな。

社で向こう側の様子が全然、見えないし、

木と社の間も子供なら枝の下を通れるけどって感じだ。


「とりあえず、オレと葛葉で迎え撃つ。

 お稲荷さんは、迎え撃ったりはできないよな?」


―無理じゃな。―


「なら、周りを警戒して、敵が来たら教えてくれ。

 特に後方はオレたちには見えない。

 オレたちは今のうちに仮眠を取る。」


―分かった。それぐらい、お安い御用じゃ。―


オレは鈴音を起こした。


「う、うう~ん。」


「目が覚めたか?」


「はっ!ご、ごめんなさい、頭領!」


気を失ったことを思い出した鈴音が、

地面に手をついて謝ってくるが、

そういうことをしてほしいわけじゃない。


「よく聞いてくれ。とりあえず撃退しただけで、

 さっきのが、まだ、続くらしい。」


「ええっ!?」


鈴音が蒼白な顔をする。

これは苦手な顔だ。

笑いそうになったが、我慢した。


「鈴音の能力じゃ、ガイコツを相手にはできない。

 剣の腕だって、まだまだだろう。

 だから、飯炊きとかをしてくれ。

 長丁場になりそうだから、オレたちの戦う手助けだな。」


「はい!」


「とりあえず、材料を出すから、それで料理をしてくれ。

 オレたちは休むから、食事ができたら呼んでくれ。」


「はい!」


鈴音は音を消す能力らしい。

50mの射程で、直径3mの範囲の音を消す。

隠密はもちろん、人間相手にはかなり有用な能力だろう。

急に音が聞こえなくなると、リズムを崩す。

達人になればなるほど、眼だけに頼っていない。

五感、下手したら第六感もフル活動させているだろう。

その一つが急に消えると調子を崩すはずだ。

だが、ガイコツには効かないだろう。


影収納から出した石でかまどを造った。

鈴音がかまどの前で火を熾し始める。

社の真ん前だが、戦闘で走り回るので、端には置けない。


(燃え移らないよな?)


鈴音は手際が良い。任せておいて良さそうだ。


「葛葉、まだまだ続くらしい。

 今のうちに、休んでおこう。」


「分かった。」


影収納から蓆を取り出して地面に敷く。

オレは葛葉に声を掛けながら、寝そべった。

葛葉もバリケードに寄り掛かりながら隣に座った。

目をつぶって仮眠を取ろうとするが、

寝れるわけがなかった。

しかし、少しでも回復するために、寝そべっておく。


(まだかな。)


良いにおいがしてきた。

これは雑炊かな。

チラッと横目で見ると、

鈴音が汗を拭きながら鍋をかき混ぜている。


―来たぞ!―


「食ってないのに!」


夕方、日が落ちるかどうかの時間になって、

辺りが暗くなったと思ったら、

さっきと同じように畦道の向こうに穴ができた。

できやすいスポットみたいなところがあるんだろうか?

道にあるので穴までは約10m。

もどかしいぐらい、

ガイコツが這い上がってくるスピードが遅い。

穴の下から「押してあげようか」と言っちゃいそうだ。

穴の前で1匹ずつ倒した方が効率が良さそうな気がするが、

せっかく造ったバリケードを手放す選択をする気はない。

それに、そんなことしなくても、

あの時は倒せなくて、ガイコツの数に圧されかけたが、

1匹ずつ、ノロノロ近づいてくるから、

倒し方が判った今となっては射撃の的でしかないんだよな。


「食らえっ!」


ピシュン  ジュッ


プシュン  ボシュッ


黒炎をライフル弾の形にして火の玉に当てていく。

火の玉が弾けるように飛散し、ガイコツも崩れ落ちる。


「おおっ!避けた!」


5匹に1匹くらい、元気な火の玉がいて、

オレの弾丸を避けたりするが、

散弾銃のように飛ばして撃墜する。

もはや作業ゲーと化した中で、

こういうのは眠気覚ましに丁度いい。

第2波も何事もなく、82体を狩ったところで終了した。

バリケードにさえ、到達させなかった。

鈴音が作ってくれた晩飯を食べる。


「で、お稲荷さん、落ち着くまではどれくらいなの?」


―あと、3日じゃな。窶・


「はぁっ!?3日!?3日って言った?」


―これでも、おまえたちが守ってくれている分、

 結界に使っていた力を神格化に振り分けておるのじゃ。

 それでも、多少は身を守る力も残さないといかんしの、

 これでも精一杯じゃ。―


(デスマーチか。)


飛び道具を持っていない鈴音は戦力にならない。

オレと葛葉でとなるが、葛葉の弱点が問題だ。

葛葉の金剛拳は小さくはできない。

つまり、威力の調節は余りできず、

ほとんど全力ブッパという状態だ。

男らしいというか何というか・・・


大砲なので、1匹ずつ相手にするようなことはできず、

引きつけるだけ引きつけて、

まとめて倒さないと、効率が悪い。

すぐ2本目を走ろうと思えば走れるけど、

常に全力疾走なので、息を整えないと、

段々とスピードが落ちていく。

それに、引きつけるとバリケードに肉薄するようになるし、

ほどほどにすると、後ろの方が巻き込めない。

威力の落ちた2発目を発射することになる。

火の玉なら、それでもいいんだけど、

5発も連続で放つと、葛葉が肩で息をするようになる。

やっぱ、オレか・・・


1日目は11回。2時間に1回のペースだ。

当然、それなりに神経を使うし、

実際に黒炎を使っているから、疲労感が半端ない。


(エナドリ、欲しー・・・)


3日ともなると、立ったまま寝れるようになってきた。

カックン、カックン、櫓をこいでるし、

火の玉がブレて見えるので、

首が痛いわ、当たらないわ、イライラするわで、

余計に頭がぐわんぐわんする。


―よし。もう大丈夫じゃ。―


そう、お稲荷さんの声が聞こえた時、

安堵したオレはその場で深い眠りに落ちた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


みなさんの応援が励みになります。

良かったら、「ブックマーク」や「いいね」をお願いします。

是非是非、応援の意味で良い評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ