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034.川底

ガマがいる淵の上にやってきた。

遠目からクロで確認しているので、位置は間違いない。


「で、三郎さん、どうするんです?」


三郎さんはニヤリと笑うと、

キョロキョロと足元を見回して、

拳2つ分ほどの石を持ち上げた。


「こうするのさ。」


ドボンッ


三郎さんが石をガマの頭の上に投げた。

重さもあるので、スーッと落ちていくのが、

クロの目を通して見える。


「さあ、いやがらせの始まりだ。」


オレも葛葉も次々と川に石を放り込んでいく。

オレは男なので、力がある分、

複数の石や子供の頭くらいの石を放り込んでいく。


「息をつかせないように、どんどん、投げ込むぞ。」


三郎さんが喜々としている。

もう、完全にいたずらっ子にしか見えない。

クールだと思っていたけど、

本当はこんなお転婆というか、お茶目な人なのかもしれない。


「逃がさないように、周りにも石を落とせ。」


何か、オレまで面白くなってきた。

葛葉も体が大丈夫になったのか、半笑いで投げ込んでいる。

クロの目と半分半分にしているので、川の中の様子が分かる。


「そっちに逃げました。次はそっち。」


ガマは最初、何か落ちてきたなという感じだったけど、

3人がかりで投げ込んでいるので、

雨のように降ってくる石を結構、必死で避けている。

当たっても少し痛い程度で、

それほど、ダメージがあるようには思えない。

どっちかというと、煩わしくて避けてる感じだ。

少しイライラしてきたのか、地団駄を踏むような仕草を見せた。


「あっ、当たったw」


避けようと思ったところに石が落ちてきたので、

止まった拍子に、ぐえって感じで頭の上に石が落ちた。

目の色が変わったというか、ハッキリ、怒ったのが分かった。

ガマが動いた。


「あっ、上がって来る!」


ザパッ


キレイな大の字で飛び上がってきた。

急いで避ける。


シャッ


葛葉の足に舌が絡みついた。

七星刀で斬った。


ギャワー


叫びをあげて仰け反るが、向き直った時には舌が元に戻っている。


「何だよ!再生かよ!」


オレに伸びてきた舌を飛んでかわす。


「後ろに下がれ。岸から離すんだ!」


伸びてくる舌を弾きながら、後ろに少しずつ下がる。

カエルがピクリとしたと思ったら、

急に動きを止めて、ボーッとしたようになる。


(あっ、三郎さんか!)


三郎さんが胸の前で手を動かしている。

多分、幻惑スキルを掛けているんだろう。


「ここ!」


チャンスだ。

跳躍し、背中目掛けて斬りかかる。


ポヨ~ン


「なっ―」


ゴムを叩いたように、七生刀がポヨンと跳ね返る。


(斬撃無効!?)


カエルの体に弾力があり過ぎる。

柔らかいバランスボールくらいの弾力に思えるのに、

七星刀からは皮膚のしっかりとした厚みが伝わってきた。

少しは切れたはずだ。が、しかし、キズがない。

再生能力か。


(こ、こんなの、どうしたら・・・)


「突け、突くんだ!」


三郎さんの声にハッとする。

その時、ガマがピシッとした感じがした。


(ヤバッ!)


義務教育さまさまだ。

「気をつけ!」と言われたような気がして、

後ろに飛びのいた。

ガマがオレにケツを見せたと思ったら、

後ろ足で蹴ろうとしてきた。

斜め後ろに飛んだのが幸いした。

少し体をひねって回避できた。


「金剛拳!」


葛葉が放った金剛拳が、ガマに直撃する。

ガマは地面をポヨンポヨンと転がった。

三郎さんが距離を詰める。


「たぁーっ!」


気合と共に刀を深く突き入れる。


ギァー!


オレは影収納から出した竹やりに持ち替えた。

体ごとぶつかる感じで、竹やりを深く突き刺す。


グァワーーー!


葛葉が飛び上がった。

何をするのかと思ったら、

金剛拳で上から、張り手のように、ガマを押し潰した。

さっき言ってた、ロケットパンチだけじゃないってことね。


(うへぇ。ぺっちゃんこだよ。)


竹やりは、ガマのお尻から口に抜けていた。


(あっ。もう、要らない。)


ふー、こんなんが、ゴロゴロ、川にいるなんて、

戦とか、飢饉も疫病もあるし、

昔って、何か、ハードモードだな。


「無事に退治できたな。」


三郎さんと葛葉が近寄ってくる。


「おつかれさまです。」


「ああ。怪我はないか?」


「大丈夫。」


「私は少し休ませてくれ。」


何だよ。やっぱり、キツかったんじゃん!

無理すんなよ!

いくら、オレの身を守るったって限度があるだろ。

あっ。


「おまえ、もしかして、佳月さんに命令されてるから、

 オレを守ろうと無茶をしてたのか?」


「それもあるが、おまえが心配だったのでな。」


葛葉が照れたようにそっぽを向く。


「まあ、あの、ありがとう。

 しかし、今回は大丈夫だったけど、

 そのせいで大けがを負うなんてのはダメだ。」


「ああ。」


分かってんのかなー?

滅私奉公な人だからな~。


「少し、川底を調べてくる。」


「何かあったんですか?」


「静馬殿は、骨のようなものが舞い上がったのを見てないか?」


「あー、やっぱり。あれ、骨だったんだ。」


「おそらく、間違いないだろう。

 まあ、骨になっているものは助けようがないが、

 他にも何かないか見てくる。」


「オレも行きます。」


「いや、静馬殿はいざという時のために、ここにいてくれ。

 クロで見ていてくれるといい。」


「では、私が。」


「葛葉は怪我をしているんだろう?

 少し休んでいてくれ。」


「一人では危険です。オレも行きます。」


「ふふ。婿殿は心配性だ。」


川の底に潜ってみると、砂は落ち着いていたものの、

金剛拳が舞い上げた砂で、川底が埋もれてしまっているようだ。


(あそこにあるのは、玉?)


黒っぽい玉のようなものが川底、

一枚板のような白い大きな岩の上にある。


(何だろう?)


黒真珠?まさか、川に?

それにしては、特大だ。

ソフトボールくらいあるよ。

指輪だったら、もう、指につけるより、

砲丸のように持った方がいいレベルだな。

もしかしたら、ガマはこれを守っていたんだろうか?

あれだけ石を投げ入れてたのに、

動かなかったのはこのためだった?

もう少し近くで―


「ゴフォ(ヤバッ)」


危ない。叫びそうになった。

息を全部、吐き出すところだった。


(こいつ、貝か。マジで真珠なのか!?)


白い一枚板は貝殻だった。

それに挟まりかけたので、間一髪、避けた。

貝が閉じると、外側は黒い。

オレがすっぽり入れそうだ。


(チッ、三郎さん、どうする?)


三郎さんを見ると、虚ろな目をしている。

さっきのガマみたいな―


(何か、ヤバイ!)


三郎さんの腰を抱くと、

川の下流にわざと流されて、貝との距離を取った。


「ハーッ、ハーッ、三郎さん?三郎さん?」


「どうした?静馬?」


葛葉が叫んでいるが、今は三郎さんだ。

呼びかけるが、返事がない。

ボーッとしてるようなので、頬を叩く。


「うっ、う~ん・・・」


「あっ、よかった、三郎さん。」


「フフフッ」


「えっ、どうした?三郎さん?」


「参った。屈辱だよ。」


「何が?」


「幻惑の力を持った者が、幻惑に掛けられるなんてね。」


「幻惑ですって?」


「ああ。忌々しいが、ガマを倒した後だったので油断した。

 もう、魔物がいないと思い込んでいたよ。

 砂が白かったので、貝殻に気づけなかったのもあるけどね。

 もしかしたら、あの黒い玉はわざと目を引くようにか。

 白い砂の上に白い貝。その上に黒い玉なんてね。

 やるじゃないか!」


何か、三郎さんのどこかに刺さったようだ。


「こうなりゃ、あの玉と勝負だ。」


「貝じゃなくて?玉?」


「貝は生きてる時に、あんなに開いたりしない。

 身が無防備になるからな。」


「なるほど。」


三郎さんが胸元から手を入れた。

いきなりだったので、ドキッとした。

三郎さんは、オレを見て、ニヤッと笑う。


(見てたんだ。恥ずかしい。)


取り出した竹筒を口に加えると、水に顔を浸ける。

す、すいとんの術!

何、それ!やってみたい!

三郎さんは、竹筒で息をしながら、水面に浮かんでいる。

そのまま、近づいていく。


(そうか。術が掛かるまでは、

 視界に入れてないといけなかったんだっけ。

 息が続かないと、負けちゃうわけね。)


さっきの距離に近づいた。

三郎さんはさらに踏み込んでいく。

動きが止まった。

オレもクロの目を通して様子を見守る。


三郎さんの体がブルブルと小刻みに震え出した。


(がんばれ!)


綱引きの最中なんだろうか。

見ているこっちも、ついつい、手に力が入る。

体の震えが大きくなってきた。

三郎さんがオレの方を向いた。

三郎さんであって、三郎さんでないような目がオレを見据える。


(大丈夫なのか?)


心配になった時、


「アッハッハッハ!」


三郎さんが顔を上げて笑い始めた。

流れてきた竹筒をつかむ。


「三郎さん?」


「アッハッハッハ!」


ま、まさか、負けたのか!?


「ざまあみろ!玉になど、負けるものか!」


あ、勝ったんだ。

まぎらわしい。

最後の方、ちょっと狂気じみていたので怖かったよ。

内緒だけど。


「ガマは玉にあやつられていたようだ。

 静馬殿を殺すように暗示を掛けようとしてきたよ。」


「それで、オレの方を見たんですね。」


「まあ、私の敵ではなかったな。」


こんなテンションが高い三郎さんは新鮮だ。

拾った竹筒を三郎さんに渡す。

玉はヒビが入っていた。

もう力を失くしたんだろうか?

もう少し観察するために、クロを行かそうかと考えていた時、

三郎さんが笑った。


(本当に不思議だ。実際、玉に負けかけた。

 それぐらい、強敵だった。

 だが、静馬殿だと思ったら、すっーと(もや)が晴れたな。

 やはり、特別な人になったからだろうか。)


「不思議だ。」


「何がです?」


三郎さんがニヤッと笑う。


「私の胸元をちらちら盗み見る男には内緒だ。」


「ちょ、ちょっと、それは言わないで!」


「アッハッハッハ!」


三郎さんの豪快な笑いの横で、

オレは真っ赤になってうつむいていた。

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