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032.木曽川

気づいていない間に、「いいね」をいっぱい、ありがとうございます!

がんばります!

木曽川の上流、可児の辺りにやって来た。

何だかんだで、もう少しで稲刈りの時期だ。

稲刈りの前は洪水の時期でもある。

6月の長雨か、9月の台風かってところだ。

木曽川を左手に見ながら、さらに上流を目指す。

何でも、ここらの洪水は、水虎のせいでもあるらしい。

この時代、木曽三川は下流で網の目のように絡まっているが、

斎藤家が金を出さくなったので、上流の依頼のところだけだ。

結果、下流の被害が減るので、

ケチって、出さなくなったのではないかということだ。


「すいこって何ですか?」


「大陸では言わないのか?

 水虎ってのは、水に虎って書くんだが、

 水辺にいる魔物をそう呼んでいる。」


「河童のことですか?」


「河童も含まれる。」


河童もってことは、総称か。

虎らしさは全く無いじゃん。

訳分かんなくなりそうだな。


「じゃあ、実際にどんなやつが出るか、

 分かってないってことですか?」


「そうだ。上流だと淵が多く、魔物が住み着きやすい。

 もちろん、悪いものばかりじゃないが、

 近隣の領主の依頼を受けて、毎年、間引いている。

 今回は、東美濃の領主たちからの依頼だ。

 ただ退治するのではなく、見極めないといけないのが、

 この仕事の難儀なところだな。

 悪くなくても、多ければ、間引かなければならない。」


三郎さんが歩きながら答えてくれた。

面倒くさそうに鼻を鳴らす。

今回は、三郎さん、葛葉と一緒だ。

相変わらず、キレイな横顔だ。


(くぅ~、イケメンめ。)


ただ気になることが。


「良い魔物でも間引くんですか?」


「そうだ。鹿は悪いものではないが、増え過ぎれば森を荒らす。

 結果、森がなくなれば、人間や他の生き物の害になる。

 多ければ、減らさなければならない。」


「そういうことかー。」


害になる、その最たる生き物は人間ですけどね。

という感想は黙っておいた。


「あ、あそこだ。目的の場所に着いたぞ。」


三郎さんが振り返った。

オレと目が合ったが、すぐに逸らされる。


(?)


何だか、上手く言えないが、今日は、2人の様子がぎこちない。

三郎さんは普段からぶっきらぼうという感じなので、

いつも通りと言えば、いつも通りなんだけど、

何か、微妙な違いがあるようで、スッキリしない。


(何だろう?)


気に障ることをしたのかと心配になるが、

質問に答えてくれてるし、嫌われているようにはないけど、

実は知らないところで、何かやらかした?

オレが何をやったかは分からないけど、

できる男って感じだし、仕事は仕事ってやつなんだろうか?

早めに謝った方がいいかな。


「ちょっと潜ってみようか。」


「え!?」


「ん?何だ?もしかして、静馬殿は泳げないのか?」


「いえ、そんなことはないですが、

 魔物がいるかもしれないのに、

 いきなり潜るのは危険じゃないんですか?」


「大丈夫だ。今まで、いきなり襲われたことはない。」


「いやいや。これまで大丈夫だったからといって、

 これからも大丈夫ではないですよ!」


「ふふっ。婿殿は慎重だな。では、婿殿に従おう。」


婿って。改めて、他の人から言われると照れるな。

里のことがなければ、佳月さんと結婚するのは問題ないのに。


「何で葛葉まで赤くなってるんだ?」


「なっ!そ、そんなことはないっ!」


何なんだ、こいつ。

佳月さんの侍女級だからかな。

主人の代わりに赤く・・・ んん?


「とりあえず、クロに偵察するように命令します。」


―クロ、クロ。―


少し離れたところをウロウロしていたクロを呼ぶ。

しかし、こっちへ来ようとしない。


―クロ、こっち、こっち。―


―聞こえてます。―


渋々といった感じでクロが歩いてきた。


―クロ、水のなかにさ、―


―聞いてました。―


―おっ、さすがクロ!話が早い!―


―あのね、犬なんですよ。―


―偵察だけじゃん。お願い。―


―水に濡れるのは好きじゃない。―


―犬って、水、嫌いだっけ?―


―当然でしょ。普通、生き物は濡れるのが嫌です。

 毛が乾かないと、体が冷えて、弱るじゃないですか。―


―でも、おまえ、霊獣じゃん。―


フンっと鼻を鳴らして、水の中に入っていった。


(おっと。忘れるところだった。共有。共有。)


クロと視界を共有した。

感覚も共有しているようだ。

薄い膜がクロの体を覆っているかのように、

水の中でも毛が濡れたりせず、

そもそも、水が当たっているような感覚がない。

普通に目も開けていられる。


結構、深い。

そして、流れが速い。

濡れはしていないけど、泳ぐのは泳いでいる。

どういう理屈かは分からないけど、

体の動きと水の流れが合っていない。

これが霊獣や魔物の動きなら、生身のオレたちは圧倒的に不利だ。


川の中はそれほど濁りはしていないが、清流ってわけでもない。

近場はいいが、対岸ともなれば、それなりにボンヤリとしている。

クロが動き回ってくれるが、

どうやら、この辺りにはいなさそうだ。


「どうだ、静馬殿?」


「今のところは。姿は見えないですね。」


「上流に向かって行こう。」


「はい。」


三郎さんに促されて、上流に向かって進む。

クロが犬かきで川の中を進んでいく。

足もちっちゃいのに、どうして、上流に行けるんだ?

そもそも、水に当たってなくない?

そんなことにお構いなしに、

クロはその間も左右に視線を走らせて警戒を怠らない。

余裕があるんだよな~。


「ちなみに、三郎さん。」


「何だ?」


相変わらず、顔を見てくれない。


「その、水虎っていうのは、どんなことをするんですか?」


「ああ、直接、人に害をなすものもいるが、まあ、稀だ。

 何年かに一度、大変な時もあるが。

 普段は、川の上流は淵が多く、人が多くないこともあって、

 魔物が住み着きやすいんだ。

 それだけなら、いいんだがな。

 大きい川は、魔物が寄ってきやすいんだよ。

 だから、棲み処を追われた魔物は下流に行くんだが、

 下流はそれほど深い淵は少ないし、人も多いからな。

 住みやすい棲み処を作ろうと、堤を掘ってしまうんだ。

 それで洪水が起きやすくなってしまうということだな。」


「ああ。連鎖的に。」


縄張り争いもだけど、生存競争ってシビアなところがある。

追い出された魔物が人里近くで住処を作ろうするのか。

それが人間と干渉した結果、間引きするってのは、

納得できる反面、人間の都合って気もしないでもない。


「あ、左の深くなっているところ、何か、影が見えました。」


ここら辺は、川が結構、蛇行している。

思わぬところで、急に深くなっているところがある。


「いたか?」


「もうちょっと見てみます。」


クロが回り込んで見てみるが、濁ってるな。

そういや、少し前に長雨が降ったとか言ってたっけ。

だが、

あっ、見えた。


「何匹?何人?どう言っていいか分からないけど、

 底の方に、人型の魔物が座ってます。」


「どんなだ?」


「女の人っぽい感じです。」


「この目で見ないと分からないな。」


でしょうね。

オレがアレが何かを知ってればいいですけど。


「潜ってくる。」


「オレも行きましょうか?」


「いや、葛葉、頼む。」


「はい。」


二人が潜っていった。

オレは二人の後ろからクロで見ているので、

三郎さんが合図を出したら、

二人がつかんでいる縄を引っ張る役目だ。


合図が出た。

縄をたぐるよりは、後ろに走って引っ張った方が早い。

重さが掛かったが、歯を食いしばって一気に走った。

15mほど走って、後ろを振り返ると、

二人が川を上がってくるのが見えた。

急いで駆け寄る。


「どうでした?」


「大丈夫だ。あれは水妖だ。この辺りで死んだ女たちだろう。

 大丈夫。いたずらはするが、襲ってきたりしない。」


「あれも間引くんですか?」


「あれは、幽霊に近い。

 実態を持っていないものは、普通の刀では斬れない。

 異能でどうにかするけれどね。

 ともかく、しばらく、この辺りを調べてからだ。」


「そうですか・・・、!?」


着物がはだけた胸元に晒しが見えた。


(晒しを巻いてる?)


ああ。そっか。

ドラマか何かで、腹に晒しをぐるぐる巻きにしてたっけ。

何か、刃物で突かれても、多少、大丈夫なように。

どれくらいの効果があるのか分からないけど。

そっか。きっと、それだ。

と思ったのも、束の間。


(あれ?谷間?)


(んん?んんん?)


(男でも、太った人は谷間ができるもんね。)


(が、三郎さんは痩せている。ん~~~。)


(ま、まさか・・・)


濡れて服もぴったりとくっつくと、

いや、前回、一緒だった時も、線が細いとは思ってた。

肩とか、腰のラインが丸みを帯びてるとは。

それ以上に血だらけだったから、そこまで気にしなかった。

葛葉を見た。

髪から水が滴っている。

こっちも服が濡れたせいで、ピッタリ、体に引っ付いている。

泳いでたんだから、当然だけど、胸元が緩んで、

同じように、谷間が見えた。


(葛葉の方がボリュームがって、そうじゃない!!!)


もう、そうだとしか思えない、


「あの~、もしかして、三郎さんって、女?」


「ああ、そうだ。」


「え~、そうなの!?」


「気づいてなかったのか?」


「いや、だって、背も高いこともだけど、名前が。」


「ああ、三郎か。」


三郎さんはおかしそうに笑った。

その後、周辺の調査をして1日目が終わった。

日も落ちて、たき火を囲んでいる。


(3人、それも能力持ちと一緒なのは心強いな。)


「今日の様子では、少し偏りがあるが、

 間引かなくても大丈夫そうだ。」


「じゃあ、もう、終わりですか?」


「もう少し上流まで見て、何ともなければ里に帰る。」


「分かりました。」


「それにしても、影収納だったかな。便利だな。」


そう。里で佳月さんが作ってくれた料理を

影収納から出して広げている。

まだ、2日程度なら熱々だ。


「温かい食べ物がすぐに出てくるなんて、

 これが戦なら、天地が引っくり返るようなことだ。」


「そうなんでしょうね。」


「分かってないな。私も糧食を持って来ているが、

 見てみろ。干し飯といって、そのまんま、米を干したものだ。

 そのままかじるか、湯と一緒に口の中で噛み続けるんだ。

 味噌玉があれば、それと食ったりな。

 分かると思うが、それほど旨くない。」


さっき、水に潜る前に放り捨てたのは、糧食だったのか。

見た感じ、炊飯器のカチカチになったご飯だな。

これ、口に含んだだけで戻るのか?


「鍋などないし、兜もないしな。焼くくらいしかできない。

 出先で、こんなに温かいものを食べれるなんて幸せだ。」


葛葉もうなづいている。


「影収納には、鍋とか、いろいろ入ってますよ。」


「それはすごいな。

 仕事は静馬殿と一緒に来ることにしよう。」


葛葉もうなづいている。

まあ、いいけど。


「そういや、三郎さんは、何で、三郎って名前なんですか?」


聞いていいものかどうか迷ったけど、誘惑に負けた。

重い話じゃなければいいな。


「アッハッハ。そんなことが気になったのか。」


「だって、男みたいな名前だし。」


「これは私の親が考え過ぎた名前だよ。

 大した理由ではないんだが、

 里の子供の多くが大人になるまでに死んでしまう

 だから、地獄の鬼が閻魔帳を見て探しに来た時に、

 男の名前で載ってるのに、女だったら探せないだろう?

 そして、私以外に兄弟姉妹はいないんだが、

 一郎を二郎とするんじゃなく、三郎としたところにも

 父母の用心深さが出ているだろう?

 それが災いしたのか、父母は病で亡くなったけれどね。

 アッハッハ。」


全然、笑えません。

何度も言っているが、栄養、衛生、医療、一つもダメだ。

みんなが飲んでる水に色がついている時があるからね。

薄い緑茶とか、薄い麦茶かと思う時があるもの。

乳幼児どころか、大人の死亡率だって高いんだ。

最近、田植えを手伝ったが、運任せかってところがある。

機会があったら説明するけど、田んぼに籾を直に播いてたよ。

あれで収穫量ってどうなんだと思わないでもない。

現代でも直播きってのは何かで見たことあるけど、

品種改良とか、肥料でコーティングしたりしてるからね。

実際、疫病や飢饉なんて、

毎年のように、どっかで起こっているらしい。

最早、風物詩。

戦が起こるのも、隣の田んぼが青々してるからって噂だ。


で、そういう、いろんなことがどうしようもないから、

お迎えを何とか騙そうとして、

女なのに男の名前にして、

しかも、長男じゃなく三男に偽装してるのか。

よくもまあと思うけど、苦肉の策ちゃあ、苦肉の策。

何か、どうにかしてあげたいな。

限られた知識の中で、いや、知識じゃなくても、

見たり、聞いたりしたことはあったはず。


(里に帰ったら、佳月さんに相談してみよう。)


改めて、とりあえず、できることから始めようと思った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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