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028.熊

見えた。洞窟だ。

門番のように、入口に熊が2頭、寝そべっている。

150cmと聞いたけど、

立ち上がったら、オレと変わり無さそうな大きさだ。

警戒をしているのか、

まだ、50mは距離があるが、こちらに顔を向けている。


手前に川が流れている。

洞窟は奥が見えないので、様子が分からない。

結構、深い洞窟なのか。


「川が邪魔だな。

 洞窟に行くには、あれを越えなければならない。」


「回り込みますか?」


「いや、そうしている間に、熊がこっちに来るかもしれん。

 川幅は1mくらいだ。

 手前のなるべく狭いところを飛び越えよう。」


三郎さんの言っていることが分かった。

それほど深い川ではなさそうだけど、

それでも、戦う時に足を取られるかもしれない。

相手の動きを制限できても、こちらの動きも制限される。


「洞窟まで10間のところでオレが仕掛ける。

 3人は熊の様子が変わったと思ったら、すかさず距離を詰めろ。」


「了解。」


三郎さんが変な顔をした。


「何と言ったか、分からなかった。」


「こういう言い方、しないの?」


「しないな。まあ、いい。

 よし、やるぞ。」


三郎さんの能力は幻影だ。

時間制限はなく、視界の範囲なら何人でも効果があるらしい。

一度、対象者を決めると、見続ける必要はないらしいけど、

対象外の人に幻影を掛ける場合は、一度、解除してから、

再度、設定しないといけない。

オレに設定したら、三郎さんは放置した状態でも、

解除しなければ、オレは一生、幻影を見続けることになる。

何、それ、こわっ!

三郎さん曰く、


「実力に差がない相手には効かないこともある。」


とのことなので、防ぐために、レベル差がないようにしないと。

何のレベルか分からないけど。

イケてるレベルなら完敗だ。


「効いた!みんな、行け!」


熊は明らかに動きが鈍っている。

見ているものは分からないけど、トロンとした表情をしている。


「キェェェ!」


才蔵が熊の眉間を突き刺した。

だが、硬いのか、5cmも埋まっていないように見える。

痛みで幻影が解けたのか、熊が仰け反るようにして立ち上がった。

その躍動感に一瞬、背筋がぞわっとした。

熊は狙いを定めるように才蔵の前に仁王立ちになる。


「させるか!」


オレは熊の喉を切り裂いた。

後方に飛び退く。

オレがいた地面に、熊の首から血が噴き出した。

熊の手が空を切った後、熊は後ろ向きに倒れた。

地面が赤く染まっていく。


「葛葉!」


振り向くと、もう1頭の熊が血だらけになっている。

二人で何度も刀を突き刺して傷を負わせたようだ。

最後に葛葉が金剛拳でアッパーをかますと、

顔を潰された熊が大量の血を吐きながら吹き飛んだ。


(あれは死んだな。)


吐いた血を頭から浴びた三郎さんがすごいことになっている。

血の匂いもすごい。


「怪我は?」


「大丈夫だ。二人とも怪我はしていない。

 そっちのように、綺麗に片付けることはできなかったが。」


そう言う三郎さんは、血も滴る良い男では・・・ないな。

生まれたてのゾンビみたいだ。

血じゃなくて泥だったら、

お母さんに「さっさとお風呂に入りなさい」と言われるくらい、

なかなかのレベルの暴れっぷりだ。


「一回、そこの川でザブンとしてきた方が。」


「洗っても、わずかな血の匂いを嗅ぎつけるだろう。

 時間を空ける方が怖い。このまま行こう。」


そうですか?

そうかもしれませんが、大変なことになってますよ。


洞窟の両側に分かれた。

しかし、入口を5mほど入ったところで右に曲がっている。

さっき、暗いと思ったのも、曲がっているからだったようだ。

だから、奥までどれくらいあるか見当もつかない。

三郎さんが目に入りそうな血を拭っている。

だから、川で洗い落とせばいいのに。


「村人の話では、もう1頭いるらしい。

 気を引き締めよう。」


「待ってください。」


「どうした、才蔵?」


内部に入ろうとオレたちを、才蔵が制止する。

才蔵は足元の石を拾って、洞窟の奥に投げた。


コォーン―・・・


「音が微妙ですが、それほど深い穴じゃないでしょう。

 穴の中なので、探るのが難しいですが、

 多分、これだろうという気配はつかんでいます。」


「どれくらいの距離だ?」


「およそ半町というところです。

 しかし、その後ろに、もう1つ気配があります。

 2頭倒したのに、もう1頭が出てくる様子がなかったのは、

 もしかしたら、子供を守っているのかもしれません。」


みんなの顔が曇る。

当然だ。


「どうしましょう?」


「言いたいことは分かるが、熊が人間を怖れてくれればいいが、

 逆に恨みに思うと、今度こそ、村に死人が出るかもしれん。

 何も思わないわけではないが、割り切ろう。」


仕方ない。

別の方法があるのかもしれないけど、思いつかない。

追ったとしても、「追われた先の村に被害が出るかも」と言われれば、

「そうですね」としか言いようがない。


「三郎さん、洞窟の中で戦うのは不利ではないですか?」


三郎さんも思っていたようだ。


「それは思う。

 葛葉の金剛拳なら、洞窟の幅とほぼ同じなので、

 飛び出してきたところを金剛拳で仕留めたい。

 何か策があるか?」


「効果があるかどうか分かりませんが、

 煙であぶり出してみるのはどうでしょう?」


なるほど。

動物は火を嫌う。(もちろん、人間だって。)

山火事だと錯覚すれば、逃げ遅れたら死ぬ。

一目散に洞窟から飛び出してくるかもしれない。

才蔵の案は良いように思った。


「洞窟が意外に深いと、無駄に終わりますが。」


「それでも、やらないよりはマシだろう。

 じゃあ、才蔵、任せても良いか?」」


「はい。」


「静馬殿、葛葉も手伝ってくれ。」


洞窟の壁の凹みに何本かの倒木を差し込んで、バリケードを造った。

怒り狂った熊が外に出てこれないようにするためだ。

もちろん、金剛拳を放ちやすくするためでもある。

放った後、わずかな時間だけど、隙ができるもんな。

才蔵はそのバリケードの奥に木を組んでいる。


「火をつけます。」


湿った落ち葉や枝をたき火の上にこれでもかと置いている。

しばらくすると、もくもくとすごい煙が上がり始めた。


(これ、オレたちも危険じゃない!?)


煙は当然ながら、天井に当たって、放射状に流れている。

一生懸命、風呂敷を広げて扇いでいるけど、

もちろん、入口にも流れてくる。


「ゴホッ、ゴホッ、これ、煙が多過ぎない?」


「いえ、静馬様、これくらいは。」


火の粉も待っているので、熱い。

才蔵が薪をくべだした。

さらにすごい量の煙が上がる。


「もういいって、才蔵!」


「まだまだぁ!」


興奮しているような気がするけど、

コイツ、火を見ると、豹変するタイプなのか?


ガァァァァ!


「来るぞ!」


三郎さんの声が飛ぶ。

角から、大きな影が見えた気がした。


「金剛拳!」


葛葉の声と同時に、金剛拳が飛んだ。


ガガッ


バリン


金剛拳が割れた。

と思ったら、熊が目の前に現れた。

バリケードを一振りで吹き飛ばす。


「危ない!!」


木の破片が散弾銃のように飛んできた。

必死で地面に寝転がる。

真正面にいたオレに突進してくる。

串刺しにしようとした腕を間一髪かわす。

地面に穴が開いた。

普通の熊の威力じゃない。

さっき、金剛拳を受ける時、一瞬、体が光ったように見えた。

こいつ、何らかの能力を持っているのか。


「こいつ、何らかの強化がされている!

 能力を持ってるかもしれない!」


三郎さんが幻影をかけたようだ。

熊がフラッとする。

しかし、頭を振ると、三郎さんに襲い掛かった。


「金剛拳!」


葛葉の金剛拳が熊の右頬にクリーンヒットした。

効いたのか、熊はよろけながら、

葛葉と距離を取るように、少し後ろに下がった。


ガァァァア!


熊が仁王立ちになる。

怒りの形相だ。

口の端が少し血で汚れている。

金剛拳が脅威なのか、葛葉に気を取られているようだ。

三郎さんと才蔵が視界から外れたのに気づいていない。


「才蔵!」


「はい!」


才蔵が死角から、熊の右後ろを目掛けて斬りかかった。

熊は気配を感じたのか、身をよじって避けた。

だが、時間差で襲った三郎さんが熊の左側から背中を切り裂く。


ギャアァァァ


熊は雄叫びを上げながら、三郎さんに振り向こうとした。

オレは振り向こうとした熊の右手を七星刀で切り飛ばした。


グアァァァ


天を仰ぐかのように、熊は空に向かって絶叫する。


「金剛拳!」


葛葉の金剛拳が正面から無防備な熊に当たった。

しかし、熊は2~3歩後ろに下がるが、踏み止まった。


「ここ!」


オレは顎の下から七星刀を突き刺した。


「ぬ、抜けない!」


七星刀は脳天まで突き抜けたせいか、抜くことができない。

ギロっと熊の目がオレを捉えた。


(ヤバい!)


オレが飛び退くより早く、熊が必殺の一撃を放ってくる。

死んだ。

そう思ったが、その右手はもうなかった。

熊はゆっくりと地面に倒れ込んだ。


「ぷはぁー、死ぬかと思ったー!」


死ぬかもしれないと思った間際、息を止めていたようだ。

我に返った瞬間、全身から汗が噴き出てくる。


「こっちも駄目だと思ったくらいだ。

 生きた心地がしなかっただろう。」


三郎さんが軽く微笑むような笑顔で話してくれるけど、

その姿が血まみれで、普通に怖い。


「さて、後は子供か。」


三郎さんの言葉に一気に気持ちが沈んだ。

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