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お姉ちゃんは冗談として、人手不足なのは間違いない。

オレにできることって、何だろう?

こんなことを考えているのは、

この間、ふと、あやの身長が伸びた気がしたのが始まりだ。


「あや、背が伸びてないか?」


あやは分かってなさそうだ。

そりゃあ、自分で分かるわけはない。

柱に立たせて、頭の高さにキズをつけた。

あやはうれしそうだ。

気づくと、何度も、柱のキズをなぞっている。

次に印をつける時には、5cmくらい伸びていればいいな。

あやは育ち盛りだ。


このままでは栄養が偏り過ぎはしないか?


師匠に教えてもらいながら、

野菜は何とか生産できているけど、

穀物は自給自足できていない。

市場で買った玄米を炊いたご飯は、

久しぶりだったからかもしれないけど、

涙が出そうなくらいおいしかった。

やっぱり、日本人なんだな~。


水田開墾計画を発動しなければならない。

この玄米を食べるべきか、苗にするべきか、

それが問題だ。

買った方が楽だけど、ここを空けることに抵抗がある。

物々交換がダメになる可能性や、

猪や鹿が獲れなくなるかもしれない。

やっぱり、自給自足も考えないといけないだろう。

しかし、適した場所を見つけて、水田を広げていってと、

考えただけで気が遠くなる。

計画完了まで、1年では済みそうにない。長い道のりだ。

それに、作業の間、あやを一人にしてしまう。

やっぱり、どこかの村に身を寄せた方がいいのだろうか。


ここに来るまで、何ヵ所かの村を見て来た。

どこも余裕がない。

オレたちが身を寄せたとて、多分、厄介者になるだろう。

扱いだって、それなりだ。

この時代に人権という感覚が無いので、奴隷に近くなる。

日吉に教えてもらったけど、農奴って人がいた。

最低限の衣食住で、農作業を手伝っている人だ。

他の国とは扱いが違うだろうが、ガチカーストの最底辺だ。

もちろん、結婚なんてできはしない。

身を粉にして働いても、

何かあったら、真っ先に切り捨てられる。

あやをそんな目に遭わせたくない。

母さんに「弁当が残り物ばっかり」とか、

「色が黒々してる」とか、

当たり前のように文句ばっかり言ってたけど、

言える環境ってありがたかったんだな。


「髪が伸びているな。あや、髪を切ろう。」


気づけば、どんどん大きくなっていく。

いろんなことに気づいてやらなくては。

それにしても、女の子は楽だ。

揃えて切るだけでいい。

この時代なら、おかっぱがマストだろう。

しかし、そこはオレの美的センスが許さない。

子供らしく、肩より少し長いくらいの高さにしよう。

あやはオレと同じで髪が多いので、

子供の体温は高いらしいし、

すいてやらないと、これからの季節は頭が熱いだろう。

シャギーを入れようかと思ったけど、

ハサミが舌切り雀のハサミしかない。

シャカシャカは厳しいな。

縦にハサミを入れれば何とかなりそうな気もするけど、

シャカシャカは次回にしよう。

急遽、竹で(くし)を作った。

思いもしなかったけど、

女の子だもの、櫛くらいないといけない。

竹の先を割って、細く割いた竹を挟んだだけの、

2列しかない櫛で、髪をとかして、

両耳の上の髪を編んで、頭の後ろで止めてやる。

のこぎりみたいな櫛は、そのうち作ろう。

うん。女の子らしい。

こんな美少女は他にはいないんじゃないかな。

いや、間違いなく、うちの子が一番だ。

あやは桶の水でしばらく髪を見ていた後、

オレに笑顔で抱き着いてきた。

大喜びだ。やった甲斐がある。


オレもかなり髪が伸びてきているけど、

あやにさせると、耳が小さくなるかもしれない。

頭が病気の犬みたいになってもいけないし。

昔から、耳にかかるとうっとうしくて、イライラする質だ。

さらに髪が柔らかくて多いので、ヘルメットのように熱がこもる。

オレに長い髪は無理なんだ。

だから、耳にかかってくるとバッサリ切るし、人の倍は髪をすく。

散髪屋が「多めにすいとくね」と言うくらいだ。

なので、仕方なく、耳を押さえながら、耳の回りだけ切っている。

だから、ちょっと、ヤンキーの子供みたいな頭になっている。


「何、あの子、あの年で。ププッ」


と言われる前に、セルフカットのスキルを上げないといけない。

オレはおしゃれをがんばる気はさらさらない。

めんどくさいし、やり始めるとエンドレスだ。

考えるだけで気が遠くなる。

上等だ。普通の何が悪い。

したい人だけどうぞ。人のことはほっといて。


あやの髪をキレイにしたら、服もどうにかしたいよな。

元々、着ていた服はいいんだけど、

それを洗う時、裸か、ぶかぶかのどっちかだ。

乾くまで布団に潜り込ませているのは、さすがにかわいそうだ。

もう6歳になるのに、おしゃれな服の1つもないのは、

親としてはいただけない。

このままでは、公園デビューが遠ざかる。

せっかくの美少女が、引きこもりってどうなんだ。

箱入り娘か・・・ それはそれで、悪くない・・・

いやいや、一人で生きていかせるわけにはいかない。

だが、あやを幸せにできる男じゃないと嫁にやる気はない。

挨拶に来たら、ガチの殴り合いで決めようか?

どうしてもと言うなら、オレを倒してからにしろ。

とりあえず、着物をリメイクして、ワンピースにしてみようか。

貫頭衣にしかならなさそうで怖い。


そうそう。

誕生日が分からないので、12月24日を誕生日に決めた。

クリスマスイヴが誕生日って、何となく、かわいいじゃん。

バレンタインデーも候補だったけど、

2つが1つだと、ケーキも1つで済む。

ふかし芋しかないけど。

ケーキに見立てた、ハッシュドポテトで大喜びしていた。

黄色いし、甘くないのに。

不憫(ふびん)な子や。

知らぬが仏とはこのことだ。

チョコレートケーキに見立てた、

鹿肉ハンバーグも喜んでいた。

うぅ。ぐすっ。

な、泣いてない。泣いてないぞ!

後は、暦が分からないことが問題だ。

日数を数えることで、何となくの日付にしているけど、

スタートがいつか分かってないし、うるう年がネックだな。


次は、風呂だ。

この間の雨で、風呂が崩れた。

川の水を引き入れるために、川の横に作っていたので仕方ない。

穴を掘って、壁面に石を積んだ風呂だ。

溜めた水に、焼いた石を放り込んで風呂にする。

薪が要るので、料理をしながら、同時に石を焼いて、

食事ができたら、影収納に入れて、すぐに風呂に入る。

オレにしかできない芸当だ。

一緒に入らないと、すぐにお湯が冷えてしまうので、

あやと一緒に入っているけど、

外だと、特に冬は、あやをふいている間に、オレの体が冷える。

あやが風邪を引かないかも心配だ。

それで、大きめの樽を目下、製作中だ。

排水をちゃんとすれば、家の中で入ることができる。


「風流でしとるわけじゃないのか?」


そんなわけないじゃん。師匠。

冬場、震えてたじゃん。

知ってるんなら、何で早く、樽の作り方を教えてくれないの?


ほとんど、お湯で体をふくだけにしていたけど、

栄養と衛生に気をつけるのは基本中の基本。

時代が時代だ。

気をつけ過ぎるくらい気をつけても、足りないかもしれない。

最優先事項だ。


これから夏に向かう。

所詮、小屋。窓が無い。

ベッド側に1つだけ窓があったんだけど、

めんどくさくって、全面、壁にしたんだよね。

山の中なので、それほど気温は上がらないと思うけど、

窓が無いと暑いに決まっている。

それに、一番の問題は蚊だ。

蚊はいろんな病気を媒介すると聞いたことがある。

赤道近くの地域では、年間40~50万人が死んでいると聞いた。

確か、マラリア。

日本でも話題になった。

そうでなくても、噛まれるのは嫌だ。

耳元をブンブン飛び回られると眠れない。

だが、しかし、


ふっふーん。


昔、夏休みの自由研究で蚊取り線香を作ったことがあるんだよね。

しかも、母さんが「どうせなら、そこらにあるもので」と言うので、

ネット購入を中止して、近所の山で集めたクロモジの葉と檜の木、

ヨモギとデンプンのりで作った。

ざっと見、無いのはデンプンのりか。

これは確か、成型するためのものなので、

形がまとまるものだったら、何でもいいはずだ。


あやが喜んだ。

ねんど遊びは、幼児の発育に欠かせない。

手を使うと、脳が活性化するんだったかな?

それに、考えたものを形にするってのがいいプロセスだ。

渦巻きは難しいので、

お箸のように、細長く作ってくれればいいからね。

そうそう。上手い。上手い。

ん?あれ?

いやいや、クロを作るんじゃありません。

クロも喜ぶんじゃない。


何回も言うけど、所詮、小屋。

しかも、オレが解体して組み直したものだ。

何が信じられないって、自分が一番、信用できない。

だって、オレなんだもん。

大きな地震が来たら、危ないに決まっている。

ザ、小屋。

本当に、ザ、小屋。

造りが簡単だ。

それなりに作っているけど、それなりだ。

小屋があったのは1軒だけだったので、村長の家だったのかな?

他の家と造りが違ってるし。

もしかして、収穫物を入れる倉庫だった?

どうでもいいけど、補強が必要だ。

半壊している家から持ってこよう。

どうせ、帰って来ないんだし、半壊してるし、もう、壊しちゃえ。


プランはこうだ。


   竹竹板板板板竹竹竹竹竹竹竹

  竹 ―穴穴穴穴―――――― 竹

  板穴■戸板戸板■|    |竹

  板穴戸    戸|    |竹

  竹|板  ベ 板| べ  |竹 ←本当はここに窓があった。

   |戸  ン 戸| ッ  |竹

   入板  チ 板| ド  |竹

   口■風呂竈竈■|    |竹

    ―――Ⅱ――――――― 竹

   竹竹竹竹 竹竹竹竹竹竹竹竹


小屋の内側、土間とベンチの場所に柱や梁を追加して補強する。

コア・ブロック・システム。単に2重構造だ。

〇ア・ファイターにはならない。

内側にしっかりとした柱を組めば、倒れることはないだろう。

内側に入れるので、切って長さを揃えなきゃならないのが大変だ。

部屋の戸は障子が良かったけど戸板だった。

片面にしか板がないペラペラな戸。

それでも、戸板を入れることで、防寒になりそうだ。

さすがに2つも間仕切りがあるんだから、

ベッドまで隙間風が届くことはないだろう。

ついでに、ベッドとベンチも竹から床板に変える。


とにかく、窓を作りたい。

これから夏に向かうというのもあるけど、

一番の問題はこの暗さだ。

全面、土壁なので、入口からのわずかな光が入るだけだ。

現代なら、明かり取りの窓があるんだけど、

ガラスそのものがないんだよ。

ガラスの作り方なんて知らないし、

電灯は何となく想像はつくけど、材料集めが難しい。

真っ暗だ。

子供がいるのに、暗い家なんて、性格まで暗い子になりそうだ。

情操教育によろしくない。


よし!くり抜こう!

壁を窓の形にくり抜いたら、アフリカの家のようになっちゃった。

師匠も建築には詳しくないみたいだし、

とりあえず木枠をはめたけど、その後がピンと来ない。

パカパカできる板を取り付けたいんだけど、

丁番って、ホームセンターに売ってるのかな。

村の家を見たけど、破壊した後なので、いまいち分からなかった。

結局、板を張った木枠を外から押し込むだけになった。

内側を(かんぬき)で止める。

戸袋もなければ、ひさしもない。

雨が吹き込まないか心配だ。


う~ん。

明るさ問題は全く解決していない。

雨除けの板と戸板を開けると明るいんだけど、

夜の間に雨で濡れるといけないから、

第一、無用心だし、夜は閉めるようにしている。

朝日を浴びて目覚めたいんだけど、腹が鳴って目が覚めてる。


それに、コア・ブロック・システムを導入したせいで、

土間に余計な木が張り出している。

料理を作る時に座ると、かまどの高さがちょうど良かったし、

どうせ、入口に戸板の敷居があるので、同じだろうと思ったけど、

アスレチックのように、乗り越えていかなければ外に出れない。

あやは面白がっているけど、

小屋の中が暗いから、ケガをしかねない。

今のところ、土間で作業することもないので、

土間も床にして、玄関を作った方がいいのかな。


水車の制作にも取り掛からなければならない。

そんなに大した装置のためじゃない。

オレが作るものはたかが知れている。

夏、暑いとくれば、扇風機だ。

水車が回れば、扇風機も回る。十分だ。

夏までに完成予定だ。

水車ができれば、利用価値はいろいろあるだろう。

そのうち、何か思いつくかもしれない。


DIYをやり始めると、どんどん、手を入れたくなる。

ベンチを夏場のベッドにすれば、窓の横になる。

扇風機も加われば、快適になるだろう。

その上だ。

梁がある。ロフトを作るのはどうだろう。

あやが大きくなれば、一緒に寝るのはダメだし、

そのうち、個室が欲しいと言い出すだろう。女の子だしな。

オレが臭いせいじゃないぞ。

言わないよな。

ちゃんと、風呂に入ろう。

オレがベンチで、あやがベッドの部屋を使えばいいけど、

ベンチは基本、居間&台所だ。

オレが占有するのも良くないだろう。


個室でハッとしたけど、

今後、必ず発生する、女の子の日が始まったら、

オレは対応できるだろうか?

あや以上に、パニックになりそうな気がする。

あー、そういう意味でも、お姉ちゃんが欲しい。

本当に人手不足。いや、人材不足。

今から、何か準備していた方がいいのか?

お湯と清潔なタオル。

それは、お産か。

ヤバい。そわそわしてきた。

落ち着け。

まだまだ、はるか先の話だ。

先だよな?

いつからだっけ?


礼儀作法も教えなければならない。

身を美しくすると書いて躾。

キチンと礼儀作法ができなければ、嫁の貰い手が少なくなる。

問題は、この時代の礼儀作法が分からないことだ。

そうだ。

女は愛嬌だ。

気立てが良ければ、マナーなんてどうでもいい。

さすがに下品なのは困るけど、

相手のことを思いやれる優しさがあればいい。

バカにされないために、蝶結びと逆上がりは教えることにしよう。


おっと、それより、読み書き・そろばんをさせなければ。

そっちが先だ。

しかし、この時代の字って、くねくねした字だよね・・・

あんなの分からない。

暗号じゃないの?

どこからどこまでが一字なんだろう。

でも、文盲はダメだ。カモられる。

一定レベルの教育は必要だ。

ひらがな、カタカナで良いのかな?

小中学校レベルの漢字は教えるとして、

計算もアラビア数字じゃなくて、漢数字でやるべきなのかな?

一次方程式で教えるべきか、つるかめ算で教えるべきか。

そろばんを教えた方がいいと思うけど、インド式は?

オレ、教えていいのかな?


「スプーンがいい。」


「へ?何で?どこで、スプーンて言葉を?」


ビックリしすぎて、間の抜けた質問をしてしまった。

言うの、オレしかいないじゃん!

あんまり当たり前すぎて、意識もせず、口から出てたみたいだ。

他にも、テーブル、スコップ、トイレ、ボール・・・

気づいた時には、まあまあの英単語を覚えていた。

匙なんて出てこないよ。使わないもん。

厠なんて絶対に言わないし、

スコップって何だ?移植ごてか?

「オレのパンツ、取って」とか普通に言ってたよ。

自分にビックリだ。

オレは教師に向いていない気がする。


何だかんだ、やりたいこと、やらなければならないこと、

いっぱいあり過ぎて、目の回るような忙しさだ。

稽古と畑の世話もある。

人の限界ってどこだろう。


「お兄ちゃん、髪をといて~。」


「ふぁ~あ、はいはい。」


連日の建設で、体がギシギシと悲鳴を上げている。

もう少し寝ていたいのに、

最近、毎朝、あやが馬乗りになって起こしてくる。

髪を切った、あの日以来、専属ヘアスタイリストになってしまった。

あやがご機嫌だから、まあ、いいか。

今日は、ハーフツインだな。

朝ご飯を作りながら、クロと楽しそうに遊ぶ、あやを見ていた。

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