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幸福な時間  作者: 悠木 泉
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事故

 オレはその朝、急いでいた。梅雨に入ったが今日は天気が良く、気分も良く家を出たのに、終点の私鉄の駅でオレは柄にもなく人を助けた。

電車を降りてホームを歩いていると目の前の人が、人に押されたのか、急に線路の方に倒れ込んだのだ。

良く見ると白杖を持っている。

あわてて上着を両手で掴み、思い切り引っ張った。近くにいた人達も異変に気付き、皆で引き寄せたので、目の不自由なその人も怪我もなく事なきを得た。駅員たちが来て事情を聞きたいと言うが、オレは、今から就職試験に行くため、時間が無いことを話して慌てて駅の外に出た。一応、名前と住所を残して。

 余裕を持って家を出たのに、思わぬ所で時間をとってしまい、駅前から走り出した。受験する会社の下見はしておいたので、迷う事はないが、時間は迫っている。人助けしていたので、遅れましたでは通らない。兎に角、急ぐことしか考えていなかった。

 朝8時すぎのターミナル駅前は大勢の人で混んでいる。その人波をくぐって、避けて、人の僅かな隙間を狙って身体を滑り込ませて進む。23才のオレは、体力もあるし運動神経も優れていると自負している。面白いように人々の中を過ぎて行く。

これなら大丈夫。十分間に合う。

オレは胸を撫で下ろしつつ汗をかかないように軽めに走った。しかし、少しでも汗をかいていたら試験官には良い印象は与えない。こんなことで落とされては悔が残る。途中にある店で着替えを買おうと思い付いたのでスピードアップしたその時だ。

誰かに当たった気がする。狭い人の間を走り、回りの人に触れないように気を付けて追い越しているのにだ。

「すみません!」と言いながら走り続けた。

一瞬悲鳴のようなものを聞いた気がしたので、振り返ったが、人混みに邪魔されて良く見えない。戻って様子を見る余裕はなくそのまま、大丈夫怪我なんかしてないと自分に言い聞かせて走り続けた。案の定、汗をかいたので新しいシャツを買い更衣室で着替えて試験会場に向かった。

20分前に到着。

手を洗いうがいをして、口臭予防のスプレーも使って、鏡で全身チェックして、会場に入ると既に席はほぼ埋まっている。

今朝のことはすべて忘れ、頭を切り替えて試験に臨もうと深呼吸をした。

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