つちのこうやのラブコメ (それぞれ別々にお読みいただけます)
隣の席の少しおとなしめで可愛い女の子がノートに数字をたくさん書いているのでなんだろうと思ったら、クラスの女子たちの推定スリーサイズらしい?
隣の女の子の三津山さんは、少しおとなしめだ。
だから今までそこまで話したことがなかったけど、隣の席になってから一か月たって、少し仲良くなれた。
三津山さんはとても可愛いと思う。
遠くから見ても美少女だとわかるタイプの可愛さとは違って、なんか一緒に話していると可愛いと思うタイプだ。
時々僕の机に落書きして、その落書きした動物とかに名前をつけてくれたりする。
そういうのって結構、仲良い感じだよね。うんやった。
可愛い動物の話とかしてる三津山さんは楽しそうだし、動物の漫画とか授業中に描いてて、そんな時バレないようにするのと漫画を描くので真剣な三津山さんも可愛い。
でも今日は、三津山さん、なんか漫画じゃないのを描いていた。
何を描いてるのか見てみたら、数字をたくさん書いていた。なんかすごい並んでる。
「三津山さん、数字書いてるの?」
「えっ? あ、そうだよー」
訊いてみた僕と、少しびっくりして笑う三津山さん。
「その数字はなに……?」
「よそうスリーサイズ」
「予想……って、誰の予想?」
「予想してるのは私。予想されてるのはクラスのみんな。だからみちゃダメです」
「はい……」
僕はちゃんと数字を見るのをやめた。
でもなんでそんなことしてるんだろう、三津山さん。
わからないけど、まあ確かにそんな暇つぶしもしたりするもんなのかな、と思った。
で、でも気になるのはあるよね。
特に僕が気になるのは、三津山さんのことだった。
まあ三津山さんのスリーサイズも気になるけど、三津山さんが本当にスリーサイズを予想しまくっているのかという話だ。そんなことする人聞いたことないぞ。なかなか変態な男子高校生とかならわかるけどな。
ぱっと見だ感じ、確かに二桁の数字が並んでいた。十の位は6〜9だった気がする。
そう考えると、スリーサイズかもと思えてきたけどやはりなあ……。
というか確か100あったぞ。
100って……すごいと思うぞ。
胸なのかお尻なのかわからないけど、絶対テスト100点よりすごいわ。間違いない。
テスト……?
ちょっと待って、よく考えたら、テストの点とかかもしれない。
だけど三津山さんが僕を惑わすためにスリーサイズだって言ってみた可能性あるぞ。
よし、なら僕がそれを暴きに行かねばならない。それが隣の席の女の子との、コミュニケーションだ。
「三津山さん」
「うん」
「それ、スリーサイズじゃなくて、テストの点だったりしない?」
「……え、バレた。 なんでだろう。やっぱりチラリと見えた数字の中に30があったりしたから?」
30あったのかよ。それ細すぎるわ。テストなら悪すぎる。
ていうかなんのテスト?
三津山さんが30点のテストなんて僕受けたら10点くらいだろうから絶対覚えてるからな。
「これね、私の塾のテストの点なの」
「あ、そうなんだ。なんでそんなの書き並べてたの?」
「あのね、塾のテストの平均点が80点超えたら、お母さんがお小遣い増やしてくれるっていうから。計算してたの。なんか小学生のルールみたいで恥ずかしいよね……」
「いや、モチベ上がっていいんじゃない?」
「確かにモチベは上がるんだよねー」
三津山さんはうなずいた。
そして僕にノートを見せてくれる。
よく見れば97、90、30……のように数字がはじまっていて、明らかにスリーサイズではなかった。
「全体的に結構いいし、100点も何回かあるね」
「そう? でも平均点79点だったの」
「え、おこづかい増えないじゃん」
「そう。悲しいね〜」
「どんまい。あとテスト何回あるの?」
「全部で三十回だから、あと三回かな」
「三回かあ……」
「ちなみに私が書いた数字、何個か数えてみて」
「え?」
そんな、引き算はできるし、30引く3で27個でしょって思って数えてみたら、30個あった。
「え、もうテスト全部終わってるじゃん」
「ううん。ちがうの。最後の三つはね、私がなんとなく書き足した数字」
「あ、そうなのな」
最後の三つの数字は、81、61、89だった。
まずい。スリーサイズにしか見えない症候群出てきた。
「これ、スリーサイズかな? 誰のスリーサイズかな? なんか予想とかある?」
三津山さんがとても楽しそうに僕にそう声をかける。
「……わからないなあ……なんかのキャラクターの、す、スリーサイズとかかな?」
「え、その予想って……つまんないよ? もっとちゃんと考えて私に教えてくれないと~思いついたことを」
「……え、思いついたことは、もうないよっ」
「おもしろい……! 戸惑い方の面白さすごすぎ」
三津山さんが椅子で少し飛び跳ねた。
確かにお尻大きいかもな……。いやだからあの数字はたまたま書かれた何かだろそうだよ変な予想はよくない。
「今日も動物の落書きしていい?」
「いいよ」
そしてやっと、三津山さんと僕はいつもらしいやりとりを始めた。
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