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同行者、増えました

「お見苦しいところをお見せしましたわ。貴方がたに、お詫びと感謝を。」

渡した魔法薬と治癒薬である程度元気を取り戻した少女は、ステラと名乗った。

年はテムと同じく15か16かそこらといったところか。

髪は相変わらず血でべったりと固まっているが、肌には血色が戻って来ている。

これなら死ぬ心配はもうなさそうだ。

彼女いわく実入りのいい調査任務を受けたが、突如あまりに強い魔物が出てきてパーティーが散り散りになり、なんとか逃げてきたという。

実入りのいい任務は危険度が未確定なため、あまり受けないほうが吉というのは冒険者の常識ではあるが、聞くところによると他の冒険者も彼女と同じくらいの年だったらしい。

一応俺のように危険があれば即座に逃げ帰る、くらいの覚悟があれば生き残れる可能性もある。

テムは俺が倒れたときどうするかかわからないが、彼が倒れたら即座に担いで逃げる。

そして俺が倒れたときは置いて逃げろとテムには言い含めてあるので、そうしてくれるのを願おう。

だが若い冒険者は反射神経が良いのもあり、少々の危険ならゴリ押しで乗り切ってしまう。

そして取り返しのつかないところまで進んでしまい、壊滅的な被害を受けてしまうことも多い。

「もしかしたら、仲間も生きているかも知れません。たまたま同じ仕事を受けただけの間柄ではありますが……生きているのなら助け出さねばなりませんし、もしそうでなくても……骨くらいは拾って差し上げたいですわ。お二方、おそらく洞窟の調査のためにいらっしゃったのでしょう。無理を承知でお願い致しますが、わたくしも一緒に連れて行ってもらえませんこと?」

「かまわないが……さっきまで大怪我してたろ?治癒薬使ったとはいえ、失った血までは戻らない。杖も折れてるし、さすがに心配になるぞ」

テムが倒れたくらいなら、担いで逃げ帰る自信がある。

だがそれが二人となると……逃げ仰せられるか自信がない。

「お構いなく、足手纏いにはなりませんわ。それに杖も。"Redeo ad vos!"」

ステラが唱えると、真っ二つの長杖がミシミシと鳴りながら修復され、一本の杖へと修復された。

修復魔法というやつだろう。

治癒魔法とは異なり命を持たない物質にも使うことができ、人体の欠損部位を補うことも可能だと聞くが、かけられた人曰く「肉の一片一片をヤスリで削り刻まれるような痛み」らしいので出来たら受けたくないものである。

それこそヤスリで肉の一片一片を削るような高精度の魔力操作を要求するため使い手は限られ、高位の治療術師や魔法使いであっても使える人間はほぼいない。

「すごいな。俺も直接見るのは初めてだ」

「数少ない取り柄ですの。行きましょう」

「あ、ああ。無理はするなよ。なるべく俺とテムで対処するようにするから」

「お気遣い、痛み入りますわ」

完膚無きまでに叩き潰され、それでもなお仲間のために、それもたまたまパーティーを組んだだけの間柄のために死地に戻る。

その高潔な精神に、俺が口を挟む余地はない。

実力が伴っているのなら、なおさらだ。


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