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招待と、正体

顔をあげると、既に朝だった。どうも机に突っ伏したまま眠っていたらしい。痛む節々を労りながら椅子から起き、まだ眠いのでベッドに転がり込む。

そのままうとうとと微睡んでいると、ドアが乱雑に叩かれる音で目を覚ました。

「失礼、ここにお泊まりのレイノス殿はいらっしゃるか!」

若々しい少年のような声と、それに不釣り合いな武人のような口調。おそらくギルド職員か衛兵……口調からして衛兵だろうか。

扉を開けると、造りの良い鎧に身を包んだ若者がいた。歳はテムより少し上くらいだろうか。

「朝早く失礼、貴方がレイノスさんでお間違いないでしょうか?」

「あ、ああ。そうだけど」

「では、こちらを」

と、渡されたのは赤い封蝋の着いた封筒。

「なんだ、これ?」

「大事なものです。では、これにて失礼します。」

若者はぺこりと一礼すると、帰っていった。

「なんだったんだ……?」

寝ぼけ眼で、封蝋を見る。

背中に羽をはやした狼と、枝のようなモチーフがくっきりと刻まれた封蝋。

血の気が引く。

見間違うはずもない。

それはこの国の、王家のみが使うことを許された紋章だった。

「おいおい冗談だろ……?」

中身は褒賞を取らせたいので王都まで来いという召喚状だった。

後暗いことがない限り、断れるものでは無い。

しかし、テムとステラも名指しで招待されているのは非常に拙い。

テムの方はギルドの登録名の方で指名されているが、問題はもっと根本的だ。

王都はテムと元パーティーメンバーの出発地であり、つまりは王と城の衛兵や役人はテムの顔を知っている可能性が高い。

死んだはずの勇者を連れていることがなんの問題にもならない、というのは希望的観測が過ぎるだろう。

それに、勇者の力を得ることを諦めていないテムの元仲間と鉢合わせしないともかぎらない。

そうなれば……最悪戦闘だ。

しかもこっちになんのメリットもない。

対策は1つ。つまり王都の誰にも正体がテムだとバレなければいいのだ。

……しかし、どうやって?

とりあえずテムとステラに相談してから対応を決めた方が良さそうだな。

俺の部屋に2人を呼び、対策を話し合う。

「私は問題ないとして……やはり問題はテムさんですわね。正体がわかれば何かしらのトラブルが起こる可能性が高い……と」

ステラは顎に手をやり、首を傾げる。

「すみません、僕のせいで……」

「気にするな、周りがろくでもないだけだ。とりあえず正体がバレずに数日何とかなればいいわけだから……鎧でも着せるか?」

「不自然ですわね。それに勘づかれて襲われた時に、身軽に逃げられる格好の方が望ましいですわ」

「フードでも被らせるか?」

「無難な手ではありますが……王の御前で外すようにと言われる可能性が」

「となると……何かないのか、顔を変える魔法とか……」

「あるにはありますが、持続時間が数分しかないのと魔力探知に引っかかるのでどうにも……あっ」

ステラは何か思いついたように立ち上がる。

「テムさん、少し買い物に付き合ってくださる?」

「え、ええ……」

「では善は急げと言いますし、今すぐ行きましょう。ええ、そうしましょう」

と、テムはステラに引きずられていった。

「何かいい手を思いついたなら……いっか……」

さて、俺は二度寝しよう。いや、三度寝だったか。

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