到着、アニスの街
深夜、満月に照らされて俺たちは街を出た。
夜道は魔物や野盗の危険もあるが、対処出来ないほどではない。
ギルドにもそう高い懸賞金がかけられた賞金首もなかったし、魔力が少ないこの辺りでは魔物が出てくることもそうそうないだろう。
ワイバーンは例外だがそもそもあいつらは夜目が効かないのか、夕方以降に目撃されること自体が全くない。
と、いうわけで時折現れるコボルトや巨大ネズミ、巨大コウモリなどをあしらいつつ歩き、ほどほどのところで夜を明かす。
日が登ればまた歩き、ほどほどのところで夜を明かす。
そんなこんなで5日も歩くうちに、目的の町であるアニスの街に到着した。
ここは比較的大きな街で、コルピオよりどれだけマシか分からないくらいにはギルドも、各種施設も質が良い。ダンジョンは3つほどあり、魔物の強さもそれぞれ異なるなど至れり尽くせりな街だ。
「やっとまともな料理が食べられますのね。せっかくだし1番良い店に行きましょう」
「高級店か……大丈夫か?ドレスコードとかないか?俺堅苦しい服を着ると死ぬ呪いにかかってるから行けないぞ。行くならテムと一緒に……」
「昔来た時はありませんでしたわ。レイノスさんみたいな冒険者然とした格好の方もいらっしゃいましたし、問題があれば別の店にすれば良いのですわ。とにかく1番まともなものが食べたいんですの……」
「まあ……1週間以上焼いたトカゲと焼いたネズミと焼いたコウモリと焼いたコボルトしか食べてないからなぁ」
荷物を少なくする、というのが今回の行脚の基本理念だった。
重い荷物は体力を奪うし、敵から狙われた時に対処もしにくくなる。
なんなら狙われる確率も上がる。
そのため食料品の類は買い込まず食事は現地調達で、としていたがまともな調理器具もないため街に着くまでは倒した魔物を焼いて食べる蛮族のような食生活だった。
「1回ゴブリンも食べましたよね」
「あれは臭いの時点でステラがギブして俺もゴブリンは食べたくないからお前が全部食べただろ、俺らは一口も食べてない」
3日目のこと、肉となる獲物が食いでの少ないコウモリ1匹しか取れなかった日に、テムはゴブリンを食べるからコウモリは2人で分けてくれと言い、大量に討伐したゴブリンを焼いていた。
ゴブリンは焼くと比喩ではなく地獄の釜の臭いがする。強烈な硫黄臭と、動物の死骸と酢を混ぜたような臭い。まともな人間なら触るのすら嫌がりそうな、俺ですらさすがに食ったことの無いそれを、テムは1人で2匹平らげていた。
「あれを食べられるのは人としてどうかと思いましたわ」
「食べてみるとけっこう美味しいんですよ、あれ。良かったら今度食べます?」
「ゴブリンを口にするくらいなら素直に餓死しますわ。おかげで助かった面もありますし、あまり強くは言えませんが……」
「美味しいのになぁ」
テムの悪食は留まるところを知らない。なるべく美味いものを食べさせて、まともな味覚を育ててやりたいものである。




