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洞窟の奥、なんかある

洞窟トカゲから魔石を取り出していると、テムが突き当たりに妙な亀裂を見つけた。

「これ、なんでしょう……?」

向こう側からは水の流れるような音がさらさらと響いている。つまり向こうに何かしらの空間がある。

「未発見の空間がある、ってことだな。どうする?行くか?」

「レイノスさんはどうするのが良いと考えてますの?」

「奥の魔物が極端に強い可能性もある。一旦引き返してギルドに報告するのが安全ではあるな。」

「……その通りですわね。とりあえず中に何がいるかわかりませんし、先を越されるのも癪ですわ。ここは氷でとじておきますわね。"Quae sunt congelata"」

巻き起こる冷気により生み出された氷で亀裂はびっちりと固められ、蟻1匹入る隙間は無くなっていた。

「よし、用も済んだし洞窟トカゲの魔石も相当数集まったし、帰るとするか」

「ですわね。塩が買えるくらいにはなりますし、夕食にトカゲを何匹か持って帰るとしますわ。見た目は難ありでもあの煮込みよりは何倍もマシですもの」

「そうだな。干し肉にすれば数日持つが、干すところも干す道具もないからなぁ……外で燻製にしてから帰るのも面倒だし、とりあえず今日明日で食べきれる分だけ持って帰ろう」

「残りはまた冷凍しておきますわね。」

と、俺たちが横穴から出た後にまたステラが氷の魔法を唱え、トカゲを氷漬けにしていた。

魔物が食べるか、冒険者が持って帰るかどっちかになるだろう。どちらにしてもそう短期間では無くなりそうにない。

トカゲの肉と共に帰投した俺たちは受付の中年男に依頼の完了報告をし、雀の涙ほどの報酬を受け取った。依頼分の魔石は買い叩かれたので、残りはまた別の街で売ろう。

そんな誠意のないギルドに洞窟の奥の空間のことを教える理由はあるだろうか、とも思ったが報告を怠ったことによって死人が出でもしたら後味が悪い。

嫌々ながら報告をしたが報酬どころか労いの言葉のひとつもなく調査しておくからそれまで立ち入るなと言われただけだった。

「いけ好かない野郎でしたわね。」

「ああいうのはたまにいる。どうせすぐ出ていくんだ、気にするほどのことでもない」

「にしてもはらわたが煮えくり返りますわ。調査が終わるまで長居をするのは割にあいませんし、明日にでも街を出ましょう」

「ああ。馬車はたまにしか来ないから明日出るとすると歩きになるな……」

正直歩き通しと野宿はきつい。しかしこの町で精神をすり減らすのとどっちがマシかと言われるとなんとも言えない。

「歩きの旅、なんか久しぶりですね」

テムは何故か嬉しそうだ。

「テムさん、なんでそんなにニコニコしていられますの…?」

「馬車だとなんか落ち着かなくて。歩きの方が気が楽です。」

「そうなのか……次から基本歩きで行くか?」

「絶対にお断りですわ。歩き通しで足に豆ができるなんてレディとしてあってはならないことですもの。こんな非常事態でもない限り馬車!テムさんは馬車にお慣れになってくださいまし」

「は、はい……」

テムは少ししょげる。

「ステラは厳しいな」

「レイノスさんも、テムさんを子供扱いして甘やかし過ぎてるきらいがありますわよ。気をつけてくださいまし」

「は、はい……」

俺もしょげる。ステラは厳しい。


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