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戸籍、取りました

「なるほど、つまりガルデアとシモンはテムを殺すことを計画していて、テムを追放したことが、その計画の妨げになったかも、ということか」

テムがした話は、そう判断させるのに十分だった。

しかし、テムを逃がしたミドガルの目的は何だ?

単に情が移ったんだろうか、それとも悪事に手を貸したくなかったか──少なくとも、まともな理由であることを願いたい。

「この見出しも、本当になってた可能性もあるんですわね。仲間を殺すなんて正気じゃありませんわ」

ステラは号外を机に投げ出す。

俺から見るとやりすぎとも思うほどに仲間を重んじるステラにとって、テムの話は我慢のならないものだったようだ。

「僕がもっと強ければ……ガルデアさんも、シモンさんも僕を認めてくれたんでしょうか」

「いや、多分違うだろう。最初から認識票を渡さないということは、何かの折に殺すつもりだったんだろうな。おそらく極端な貴族主義とか── 」

「実力のない貴族ほど、血統に固執するんですわよね。わたくしの家系もそうでしたから、嫌という程わかりますわ」

と、ステラは吐き捨てるように言う。

「なんにせよ、この調子だとギルドカードは使えないな。どうする?死亡届の取り消しでも申請するか?」

「いえ、こういう手合いは自分の面子ばかり気にしますもの。もしかしたら今度こそとどめを刺しに来るかもしれませんわ。それに、こういうことをするなら、きっとテムさんの生死すらも掴めて居ないはず。向こうはそれなりに強いはずですの。ならばこちらが情報的な優位を得ている今、それを捨てるのは悪手ですわ」

「なら、どうする?路銀は十分とはいえこのままテムだけ報酬が出ないのもなかなか難儀なものだぞ?」

「手はありますわ。わたくし、貴族ですので制度の抜け道は存じておりますの。さて、ではまず役所に行きましょう。そこで当面の問題は解決致しますわ」

二時間後。テムは無事に新たなギルドカードを手にしていた。

ただしそのカードに記された名前は、テムのものでは無い。

マルス・プロテウス。

俺と同じ苗字のその名前は、俺と養子縁組をしたテムの偽名だった。

ステラの計画はこうだ。

テムを身元不明の孤児として俺が引き取ったことにして、役所で養子縁組をして新しい戸籍を手に入れる。俺は長年やっている冒険者のため社会的信用は人並みにあるらしい、が一応役人には袖の下を握らせておいた。

あとはその戸籍を使って新しいギルドカードを作れば当面の問題は解決だ。

受付嬢にも袖の下を握らせ、こちらにはテムが勇者であることなどを伏せ、またところどころ改変してある程度事情を説明しテムの元のギルドカードについては詮索しないで欲しいと説明した。

綺麗な手段ではないが、ガルデアやシモンにテムの生存が発覚する恐れは少ない。

少なくともそう信じたい。

ただ、受付嬢などの心象はあまり宜しくないので、なるべく早いうちに町を出るのが吉であろう。

「明日にはこの町を出ますわ。馬車はあなた達が手続きしてる間にとっておきましたので、荷物をまとめておいてくださいな」

夜逃げ同然にこの町を出ていくことにはなるが、人の噂も七十五日。

しばらくすれば俺たちのことは記憶から消え去るだろう。


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