テムの独白
テム視点です
僕が勇者として王宮に迎え入れられたのは、3ヶ月ほど前の話です。
15の誕生日──僕は自分が15だということもその時は知らなかったのですが、文献で15の誕生日に勇者の素質が目覚めると記されているらしいです──に、この勇者の刻印が僕の体に現れたんです。
僕はこの刻印が何なのかもわかっていませんでしたが、僕の育ての親である神父は勉強家だったらしく、この光るアザは、勇者の刻印だと嬉しそうに教えてくれました。
やがて王都から使者が来て、僕を王宮に招きました。
謁見室で王様が言うには、勇者が現れたということは魔王の復活も近い、だから魔領まで行き魔王を早期に叩け、と。
心強い仲間も用意してやった、と紹介されたのがガルデアさん、シモンさん、ミドガルさんでした。
ガルデアさんは大柄な人で、少し怖かったのを覚えています。
こんなひょろひょろが魔王を倒せるのかね、と少し馬鹿にするように僕に言っていました。
シモンさんは魔法使いで、生まれの卑しいものが勇者になるなんて、と不満げでした。
ミドガルさんは……特に何も言っていませんでした。賢者という上級職だ、と言うことしか知りません。
そんな人たちの中にぽんと放り込まれて、旅をして──最初は守られているだけで、敵が倒れていきました。
でも進むにつれて敵も強くなって、ガルデアさん達も僕を庇う余裕が無くなってきて──僕も戦おうとはしましたが、やっぱり力不足で。
そんな日が何日続いたでしょうか。ある日ミドガルさんと2人きりで話したんです。
ガルデアさんとシモンさんはたしか2人で飲みに行っているときでした。
その時に、僕はパーティで力不足だから出て行けと言われたんです。町に帰るのも恥ずかしいだろうから、遠くの街に行くといい、そこで何か別の職を探しなさいと言って、馬車の席を取ってくれて、いくらかの路銀も渡されて──
言われるがままに馬車に乗りました。
馬車に揺られ目的地に近づいていくうちに、僕はパーティをおいだされたんだ、という事実が重くのしかかってきて。
街についたころには呆然としていました。
勇者だと言われて、生まれて初めて、なにかの使命を与えられて──それを半ばで力不足のせいで失ったんですから。
そうして、あちこちをふらふらと歩き回り、やがてお金も底を尽きて。
勇者が死ぬとその力が王族の誰かに受け継がれる、とシモンさんが言っていたのを不意に思い出したんです。
そうしたら──ああ、自分はいないほうがいいんだ。
自分が居なくなれば、王族の誰かが勇者になって、今度こそ全部が上手くいくんだってそう思って。
で、物見櫓に登って──そしてレイノスさんに救われたんです。
今思うと、ミドガルさんが僕を逃がしてくれたのかもしれないな、って思うんです。
シモンさんは僕の生まれを、そしてガルデアさんは僕の弱さを疎んじていましたから、ひょっとしたらあの2人に殺されていたのかもしれない。
そうでなくても、あのまま庇われるだけの戦いをしていたら、きっといつか命を落としていたと思います。
それだけ僕は弱くて、情けなかった。
今もあの頃からそこまで強くなったとは思いませんが──それでも、庇われるだけの戦いからは卒業できた。
稽古をつけてくれて、冒険にも一緒についてきてくれるレイノスさんと出会えて、本当に良かったです。




