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勇者、死んだらしいです

翌朝、目覚めると外が騒がしかった。

号外、号外と何事か叫ぶ声が聞こえるので、何か大きな出来事があったのだろう。魔物の襲来か、王都に何かあったか──どちらでもなければ良いのだが。

宿から出ると、新聞売りが号外を配っていた。

代価の銅貨2枚を払い受け取った俺の目に驚愕の見出しが飛び込む。

[ ──リドールの村の勇者、死す──]

驚きのあまり取り落とし、ひらひらと地面に張り付く見出しにはテムと思しき肖像画がでかでかと印刷されていた。


「どういうことですの、このふざけ散らかした記事は!?」

「えっと……僕にもなんとも……」

しばらく後、テムとステラが起きてきたので、外が騒がしい理由を説明し号外を見せた。

ステラは見出しを見るなり怒り心頭と言った感じだが、テムは当事者ながら状況を飲み込めていないようだ。

「このリドールの村の勇者はテムで間違いないんだよな」

「は、はい……間違いないです。僕の故郷、リドールなので……」

記事には、テムの元仲間である戦士ガルデア、魔導師シモン、僧侶ミドガル、そしてテムが強力な魔物、グラコシアスを討伐中に魔物の不意打ちによってテムが命を落としたと書かれていた。

強敵を相手に1歩も引くことの無い勇敢な死であった、と。

国葬は3日かけて行われ、次の勇者の捜索がまもなく開始されるとも書かれていた。

「僕、死んだことになってるんですね……」

「ああ。ギルドカードが使えない理由も多分それだろう」

冒険者が死ぬと悪用を防ぐためギルドカードは無効化される。

なんの理由があって死を偽装したかは不明だが、そんなことをするやつがいることまで考えが及ばなかった。

しかし死を偽装するにも証拠は必要だろうに、このガルデア達は何をしたんだろうか。

「テム、一応確認なんだけど、認識票って……」

「認識票……?ああ、ステラさんたちが持っていた……」

「ギルドカードと一緒に渡されなかったか?」

「渡されて……ない……ですね。ギルドカードはシモンさんから……あっ」

「なるほど。つまりこいつらがテムの認識票を持ち逃げして、それを使って死を偽装したと」

「そう……みたいですね……ごめんなさい」

「貴方が謝る必要はありませんわ。この三下共が人の道を外れた愚行を犯しているだけですもの」

「いや……しかし謎だな。テムの死を発表するなら、何かに乗じて殺す方が楽なはずだし間違いも起こりにくい。現にこうしてテムが彼らの目の届かないところで生きているわけだし──なぜこんな回りくどいことをするんだ……?」

「下郎のやることに理由なんてありませんわ。さっさとこのならず者たちをしょっぴいて──」

「えっと……それは多分……いや、もしかしたらなんですけど……僕、逃がしてもらったんじゃないか、って」

「逃がす?誰にだ」

「えっと……ミドガルさんに……僕にパーティから出て行けと言ったのは、あの人と僕が2人きりの時だったんです」

なるほど。勇者パーティとやらも一枚岩では無いらしい

「少し長くなりますが……覚えていることを話させてください」

と、テムは自分が勇者となってから俺と会うまでのことをぽつりぽつりと話し始めた。

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