帰還、しました
朝になり、テムたちもようやく目を覚ます。
体調も全員良好そうなので、すぐに帰ることにした。
帰途は特段危険と言えるほどのことも無く、しかしステラの仲間2人は精神的に疲弊しきっており少々時間はかかった。
宿に戻って荷物を置き、浴場で身を清めて戻ってきた時には昼になっていた。
ギルドの受付嬢は一日で帰ってきた俺とテムに驚くことも無く、迷宮主討伐による報奨割増について説明した。どうやらステラから一通りの事情は聞いているらしい。
受付嬢曰く魔力溜まりの少ないこの地域では強い魔物が出るのは珍しく、原因究明の為にまた調査を頼むかもしれない、それまでの数日は宿に割引が効くのでしばらく滞在して欲しい、との事だった。
宿の割引は純粋に嬉しい。
それだけ食費が増やせるし、先立つものはあればあるだけ助かるものである。
申し入れを二つ返事で受け入れ、宿の割引券だという金属の板を受け取り、報告は終わった。
受け取った報奨金をテーブルで確認していると俺たちを待っていたらしいステラが向かい側に座った。
「ごきげんよう、レイノスさん、テムさん」
「ああ、どうも。昨日はおつかれさん」
血塗れ、土まみれ、埃まみれだった昨日とはうってかわって、ステラは身綺麗になっていた。
黄金に輝く髪を後ろに束ね、服装もローブではなくスカートとシャツ、マントとカジュアルな格好だ。
「残りの2人はどうしたんだ?姿が見えないようだが……」
名前はなんと言ったか、ステラと共に洞窟の調査をしていた生き残りの2人の姿は、周囲を見渡してもどこにもない。
「引退しましたわ。国へ帰ると言って。あんなのに襲われて、仲間も失って──無理もない話ですわね」
仲間を失い、心を折られて引退する冒険者はそう珍しくはない。
俺のかつての仲間も、大半がステラの仲間のように冒険者を辞し、故郷に帰って行った。
別にそれを悪いこととは言わない。
冒険者として稼いだ金も、危険に晒し続けた命も残っているのだ。
故郷に帰り、新たな何かを始めるには十分すぎる資産だろう。
それにステラも彼らの引退を察していたのだろう。
でなければ俺達の旅に同行したいとは言い出すまい。
だが──
「君は大丈夫なのか、ステラ。君も彼らと同じ痛みを味わったろう」
「ええ。仲間も、家族も。失うことには慣れてますもの。それに、わたくしが足を止める場所は己の領地か、死に場所と決めていますの」
ステラは俺を見据えて言う。
その瞳に宿る決意の光は、彼女の年頃には似合わぬほどに強いものだった。
──ああ、俺には想像もつかないほど、この子も多くのものを失ってきたのだ。
「すまない、試すような事を聞いて。」
「構いませんわ。背を預ける仲間ですもの。次の調査任務、あなたがたも受けたのでしょう?実りある調査にいたしましょうね」
調査の日取りは3日後。待ち合わせの時間と場所を決めると、ステラはやることが残っているからと帰って行った。




