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旅の仲間、増えました




日が暮れた。ぱちぱちとなる焚火で枝に刺したパンを炙りながら俺はテムたちの方を見る。

テムは未だ起きない。ステラのパーティーメンバーだった2人も。

「明日には起きてくれるといいんだがなぁ」

「その通りですわね。うら若き乙女であるわたくしが、殿方と2人きりとなるのは、いつ獣に変貌するかと少し心配ですわ」

ステラは夕方頃に目を覚ました。

クイックシルバーの話をすると驚いていたが、自分の首元の認識票を見て「ルースが守ってくれたんですわね」と、それを握りしめてしばらくさめざめと泣いていた。

「安心しろ、俺はそこまで元気がありあまってるわけではないし、そんなことをするほど頓狂な人間でもない」

「枯れてますわね……こんなに美しい、天女と見紛う程の美貌を前に」

「せめて全身の血を落としてから言ってくれ。熊とかから見れば美味しそうに見えるかもしれないが……」

ステラは目が覚めてから魔力に余裕が出来たらしく破れた服は直していたが、ついた血は落ちないらしい。

血塗れのその姿は悪霊と見紛う程の迫力だ。

本人には絶対に言わないが。

「それも、残りの皆が起きて街に帰ってからですわね。テム……でしたっけ?あの子はあんな化け物と対峙して、何故生きているのかしら?」

「いや……あいつだ。さっきの魔物──クイックシルバー倒したのは」

「有り得ない話、とは言いきれないですわね。あの子には何か底知れないものを感じますもの。それにしても、あなた達がいなければ、私は今ここであなたから貰ったパンを食べることも出来なかった。感謝申し上げますわ」

ステラは焚き火からパンを刺した枝を取ると、控えめに1口かじる。

「なかなかに美味ですわね」

「あんなことがあったからな。こんなに疲れてる時は何食べても美味い」

俺も枝を取り、パンを1口齧る。

程よく焼かれた表面がさくさくと口の中で踊り、小麦の香りが広がった。

「あなたは、何故あの子と一緒に旅をしてるの?親子には見えないけど──」

「成り行きでな。まさか俺もこの年で住処を離れるとは思わなかった」

結果として実入りが増えたので、帰れば元々想定していたより楽な暮らしが出来そうなのは皮肉なものだ。

「もし、もしの話ですのよ。もしよろしければ、あなた達の旅に同行してもよろしいかしら?」

「なんだ急に。俺は構わないが──いいのか?目的地も最終目標も違うぞ」

「構いませんわ。わたくしの目的なんて、あってないようなものですもの。レイアとシジルも、この街から出る気は無さそうですし、1人であてのない旅をはじめるより、あなた達がいた方が心強いですわ」

「目的?」

「夢──に近いかもしれませんわね。」

と、ステラはローブのポケットから、何かを取り出し、俺に見せる。

「これは……?」

何かの家紋が彫られ、大きな青い宝石が嵌め込まれたブローチだった。

「かつて、この国にはプルト家という貴族が治める領地がありましたわ。わたくしはその末代の息女。プルト家の再興こそ、わたくしの悲願ですの」

「……貴族、か」

「不可能と笑われても構わない。私の代で成し遂げられずとも、次の代が諦めても。それでもこのために生きる。そう決めましたの。」

と、ステラはブローチを握りしめた。

「だから金が必要なのか。」

「ええ。女でも就ける職で、領地を買い戻せる程の金額を稼げる可能性があるのはこれだけですわ。それに幸い、魔法は得意ですの」

「そうか……俺達で力になれるかはわからないが。わかった。一緒に行こう、ステラ。きっとテムも喜ぶ」

「感謝しますわ。それにしても──」

と、ステラは眠っているテム達を見る。

「起きませんわね」

「気配もないな」

日は暮れ、既に大きな月が出ていた。

目を見張るほどの満月だった。


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