帰途、詰みました
目を開けると、俺達は洞窟の外にいた。
テムも、ステラもすぐ近くに横たわっていた。
幸い、今回は周囲に危険な野生動物の類はいなさそうだ。
熊とかいなくて本当に良かった。
そして、見覚えのない若者が2人。
ステラの言っていたパーティーメンバーだろう。
脈は2人ともある。
運良くクイックシルバーからは逃げ延びていたようだ。
満身創痍ではあるが、命に別状はないはず──少なくともそうであって欲しい。
治癒薬を飲ませて様子を見よう。
「さて、どうするか……」
倒れているのは4人。
起きているのは俺1人。
1人で4人を運ぶのは不可能なので、テムを起こして何とか運ぼうか──と思ったがつついても揺すっても頭を撫でても起きない。
……ここで詰むことってあるんだ。
仕方ない。
ここに置いて俺だけ帰る訳にもいかないし、起きるまで待つか。
幸いにも長丁場を見越して野宿の用意はある。
起きない4人の口に治癒薬を突っ込み、敷き布の上に横たえておく。枝を集めて、比較的かわいたもので火をつけ、残りの木を炙って乾かして──
とやっていたが、真上に登っていた日が夕焼けになっても誰一人起きない。
「伝書鳩でも使えればなぁ」
もし居れば、町に応援を呼んでこの4人を連れ帰ることもできるのだが、伝書鳩は高い。
目がか吹っ飛ぶような値段の上、しょっちゅう猫とか魔物に食われて帰ってこない。
さすがにそんなものを買う金がある訳もなく、俺が鳩に触れる時は野原で食料が尽きて食える魔物がいない時にたまに捕まえて食う時くらいだ。
助けも暫くは来ないだろう。
思った以上にすぐ迷宮化が終了してしまったため、今様子を見に来るような奴はいない。
どう楽天的に見ても2日か3日あとだろう。
と、ステラのローブの袖がもぞもぞと動く。
「なんだ?」
まさか、伝書鳩──その期待を裏切り、出てきたのはウズラだった。
「うーん……」
ステラのペットという訳でも無さそうだし、多分ダンジョンに迷い込んでたのがたまたま迷宮消滅のときにはいりこんだんだろう。
有害な生き物でなくて良かったと言うべきだろうか。
一縷の望みをかけて、手紙を足に──くくりつけた所めちゃくちゃ地面に擦れて手紙がすりおろし手紙になりそうなので却下。背中に括りつけておこう。
行きがけの駄賃として押し麦をひとつまみあげて、町に言ってくれよと言い聞かせて解放すると、ウズラは橙に染まる森の奥へ消えていった。
だめだこりゃ。
「はあ……"Mollius lana erunt……"」」
助けが来るのを期待できない以上、やはり誰かが起きるのを待つしかない。
俺は地面を柔らかくして、テムたちの寝心地を改善した。
せめてよく寝て早く起きてくれ、と願いを込めながら。




