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何故『彼女』は子爵令嬢なのか

 さて、都市を領地の中心として持つ者が『伯爵』で、複数の都市を持つ者が『公爵』とすると、公爵の家には複数の『伯爵位』が存在することになります。そして、伯爵を支える副官に相当する者が『子爵』『副伯』『城伯』と呼ばれる存在です。


 伯爵位には『子爵位』が付いて来る。侯爵も同様でしょうし、公爵もそうかもしれませんね。それぞれの副官相当の人間がいますし、嫡子であれば、非常に分かりやすいでしょう。


 会社で言えば、社長が父親、副社長が次期社長である息子という関係です。また、兄と弟という可能性もあるかもしれませんね。


 主人公である『彼女』の実家が『子爵家』であり王都を差配する家柄というのは、王都伯である王家の副官の家柄という意味が含まれているのです。そういう意味で、王家と子爵家でありながら懇意にされている経緯が生まれることになります。


 大家と管理人の関係だけではないのです。




『城伯』というのは、文字通り「城に配置された伯爵の代理人であり副官」という程度の意味であり、戦略的に重要な拠点に配置された存在です。『方伯』というものも存在しますが、神聖ローマ皇帝の代理人で、廃された宮中伯領を差配する『侯爵相当』の役割りを果たすことになります。


『伯爵』を中心に考えた場合、複数の伯爵の配置される都市を有する者が『公爵』であるとすれば、『侯爵』『辺境伯』というのはどうなるのでしょうか。


 これは、中央から離れた場所にある『辺境』において、独自の軍事行動を認められた『伯爵』に相当する存在を意味します。


 現代の軍隊であるなら、独自の補給能力を持つ独立した行動を行える単位を『師団』と言いますが、「公爵」の能力は師団級と言えるでしょうか。


師団を構成する『連隊』に関しては、独自に作戦行動を行うだけの補給能力を持たない存在であり、長期間単独行動を行うことができません。これが「伯爵」に相当すると言えます。


 これに対し、規模は『連隊』程度の戦力ながら、独自の支援能力を有する戦闘単位を『戦闘団』と呼びます。時代と軍隊により「独立戦闘団」と呼んだり、「戦闘群」と呼ぶ事もありますが、小規模の独立した戦闘を行える部隊のことです。これが『辺境伯』『侯爵』に相当します。


「妖精騎士」の世界では『ニース辺境伯』がこれに相当します。王国に『侯爵』は存在するので、『ニース侯爵』でも良かったのですが、新参者であり、帝国・神国・法国と戦うという意味を込めて『辺境伯』を王国で唯一名乗っていることになります。


 「ニース騎士団」「聖エゼル海軍」を独自の戦力として保持し、さらに内海でも有数の港湾城塞都市『ニース』を有していることから、複数の都市を有する『公爵』ではなく、都市の管理者である『伯爵』の発展形である『辺境伯』を名乗るわけです。




 以上が『封建貴族』であり、それとは別に『宮廷貴族』『法衣貴族』という者が存在する。これは、封土なしの貴族であり、何かしらの恩賞を与える必要から、爵位を名誉として与えるようにしたことから始まる存在です。


 英国の『騎士』称号授与が分かりやすいでしょうか。音楽家や役者、企業経営者などが国に貢献した名誉として与えられる。日本だと『叙勲』に相当する内容だが、封建制度がある時代は『爵位』が戴けるわけです。


 伯姪が『騎士』に叙任されたのは、海賊船討伐を行い王女を守ったことに由来するが、領地無名誉だけ(若干の年金有)はこれに相当します。





 公爵は別格として、格の上下は侯・伯・子・男爵の爵位で横並びであり、『役職の重要性、家の由緒、縁戚、勲功など、さらに王との親しさ、騎士団(勲章)の有無などでランクがつけられた』といいます。


 つまり、王国において「リリアル男爵」は『男爵』だから爵位が低い故に侮られる事はなく、『王国副元帥』『護国の聖女』『リリアル学院長』『王家と昵懇』『竜殺しの英雄』『初の王国十字章叙勲者』という貴族の中でも白眉な存在と言えるでしょうか。


 言うなれば、チートですね。




 さて、伯爵を支える『都市』ですが、今の都市を基準に考えると、とんでもなくショボい存在となります。


 大都市と区分されるものが一万人以上の人口を有するもの、中都市が二千以上一万未満。小都市が……五百以上二千未満となります。はい、ちょっとした小学校でも『都市』扱いになる規模になりますね。


 このような中で、神聖ローマ帝国(ドイツの中部北部の都市のうち、ケルン4万、フランクフルト、ミュンヘン1万、一万以上の都市はわずか15、中都市が25、小都市が百強でした。


北フランスでも、アミアン3万、ランス1.4万など200の都市のうち大都市は10程度、それ以外はすべ中都市でした。


――― 伯爵って貧乏だよねたぶん。


 ドイツ中部から北部に掛けての都市のうち、人口千人未満の都市の43%は一度も市壁を有することはなかったといいます。これは、石壁製を指し、土塁や木柵の類は除外しています。


 反面、三千人以上の人口を有する『中都市』は十六世紀を迎えるまでに全て市壁を有していたとされます。


 都市が「帝国自由都市」として経済的に貴族から独立し、自衛能力を持つようになる為には、『市壁』が必要であったでしょうし、それを築くだけの資金力とそれを担保する経済力を有していたという事なのでしょうね。フランスにおいても国王に直接支配される「特権都市」というものが存在します。市民の代表による自治を王が認め、一定の金額を王に支払う事で他の貴族からの干渉を受けないようにするリッチな都市ですね。


 この辺り、益々伯爵は貧乏になる気がします。


 「帝国自由都市」というのは、皇帝に直接特権を貰う代わりに、皇帝にみかじめ料を払う存在です。それまでの領主は縁を切られちゃうのでしょうか。大規模な都市であれば伯爵程度の戦力なら、自衛で十分だと思われたのか直接傭兵を雇い入れる事もあったと思われます。


 イタリアの都市国家などになると、貴族=傭兵を雇う為の税金を払える人という形に変わっていきました。最初は市民兵であったのですが、傭兵に取って代わられていくのが中世の後半になります。ルネッサンス期ですね。


 歴史的には、都市という『宝箱』を守るために戦力を張り付けるより、壁で囲う方が経済的であったからという面もあるのでしょう。これが、火薬と大砲の普及により通用しなくなり、歩兵を中心とする軍隊が活躍する時代に変わっていくのが十六世紀となります。

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