罰ゲームで嘘告白することになった
最近よく見る「罰ゲームで嘘告白をしたら……」というのをアレンジした作品になります。
といっても、中身は換骨奪胎という感じで別物ですが。
うららかな昼下がりの今。
俺はとても憂鬱だ。
大嫌いな春菊が夕食に出て来るくらいには。
大嫌いなパセリでも可。
大嫌いなパクチーでもいい。
とにかく、それくらい憂鬱なのだ。
何故かって?罰ゲームで、とある女の子に告白しなければいけないのだ。
事の発端は、朝の教室に遡る-
◆◆◆◆
「罰ゲームで告白ってのやってみようぜ!」
教室の隅で声を潜めながら、クラスの3馬鹿の一人が発言する。
名は湯島太郎。やたらガタイがデカくて強面。
しかし、その本質はおバカな事が大好きなだけの奴だ。
「それは面白そうだね。しかし、そのままでは些か平凡ではないかな?」
独特の口調で反応するのは、赤城智也。
整った顔立ちに眼鏡、長身。それに、独特の物言いはインテリといった佇まいだ。
まあ、こいつも単に誰かの面白い反応を引き出すのが好きなだけの変人だ。
「ま、いいけどな。恨み買いそうな相手だけはナシな」
そして、最後に反応したのが俺、高山隆二。
中肉中背、勉強も運動も程々、コミュ力は微妙な平凡な高校生を自負している。
こいつらと揃って、3馬鹿扱いされるのは少々不本意だが。
「恨みってどういうことだよ?」
太郎が問い返してくる。
「そのまんまだ。たとえば、彼氏いる女子に仕掛けたら、白い目で見られるぞ?」
「隆二の意見には賛成だね。揉め事は少ない方がいい」
お馬鹿は好きだが、智也はそういうところはちゃんと計算する方だ。
「じゃあ、あまり目立たなくて、フリーそうな、地味な子にするか?」
「それはそれで、その子の心をめっちゃ傷つけそうだから、やめとけ」
あくまでお遊び。誰かの心を深く傷つけでもしたら目も当てられない。
「じゃあ、隆二はどうすればいいってんだよ?」
「要は、嘘告白でした、ネタでしたって言っても流してくれる女子にしろってこと」
「なるほどね。なら、その基準で選定するのが無難そうだね」
ふむふむと頷きながら、早速考え事を始める智也。
「ならさ、南はどうだ?南あかり」
早速、太郎から提案された候補。しかし、俺は渋い顔になる。
「いや、あか……南はやめとけ」
せめてストップはかけておこう。
「なんでだよ?ノリが良くて、それなりに可愛くて、フリー。ちょうどいいだろ」
「あぁん?「それなりに」だと?」
聞き捨てならない言葉が出てきたので、思わず凄んでしまう。
「な、なんだよ。隆二。ひょっとして、南狙いだったのかよ」
「なんせ、「それなりに」だと不服そうだからね」
途端に、顔をニヤニヤとさせる太郎と智也。イラっと来るな。
「そういうんじゃないって。ただ、個人的に顔が好みってだけだ」
「あー、隆二は顔の選り好み激しいもんな」
「面食いと言い換えてもいいか」
「お前らの中で、俺はどんなキャラになってるんだよ……」
思わずため息をつく。
「とにかく、嫌なら他に候補出せよ。無いなら決まりな」
「……わかった」
別に、俺が南に告白すると決まったわけじゃないのだ。
他の二人にお鉢が回ってくる可能性もある。
「じゃあ、誰が選ぶかは抽選でいいかい?」
「異議なし」
「異議なし」
そう言うなり、智也はアプリを起動させる。
俺、太郎、智也の三人から一人をランダムに選び出すだけのアプリだ。
変なところで頭のいい智也がお遊びに開発した代物だ。
「よし。じゃあ、スタート!」
俺、太郎、智也、とスロットマシーンがぐるぐると回る様子が見える。
顔写真まで入っていたり、演出があったり、どーでもいいところに凝っている。
「というわけで、今回、実行するのは隆二。君だ」
「うげ……まあ、仕方ない。やるさ」
俺も同意したものだし、今更反論しても仕方ない。
しかし、どういう風に告白したものか。
◇◇◇◇
というわけで、南に嘘告白をする羽目になった俺。とても憂鬱だ。
南あかり。クラスで一番人気というわけじゃないけど、それなりに人気な女子。
男子のシモネタも平然と流せるノリの良さや、まあまあ「らしい」容姿と体型。
それに、面倒見の良さや付き合いの良さなどがあって、嫌う奴は少ない。
まあ、俺はクラスで一番可愛いと思ってるので、少し納得が行かないが。
悩んでても仕方ない。行くか。トコトコと歩いていくと、ふと視線が。
南が気づいたようだ。
【どうしたの?】
【太郎発案の嘘告白とかいうのをやる羽目になった】
【また、馬鹿なことを……ちゃんと止めたんでしょうね?】
【悲惨な結果にならないようには、な】
素早く唇だけで会話をする俺たち。
今の関係を維持するために、身につけたスキルだ。
【で?それで、隆二が嘘告白をする羽目になった、と】
【察しが良くて助かる。で、相談なんだけど……】
【ひょっとして、嘘告白の相手は私?】
【……まあ、そういうこと】
【なら本気で止めなさいよ!よりにもよって私よ!?】
目が笑ってない。
【逆にお前なら、適当にうまい感じのノリで返してくれないかなーと】
【はぁ。まあ、あんたの馬鹿に付き合うのは慣れたけど。で、どーすればいいの?】
【話が早くて助かる。まあ、いい感じにクラスの笑いをかっさらえる感じので】
【難しいリクエストするわね。普通、問い詰め、ノリツッコミ、どれがお好み?】
【問い詰めだけ浮いてるな。じゃあ、問い詰めを頼む】
【そこは普通を頼みなさいよ……】
【精一杯の問い詰めを期待してるぜ?あかりちゃん?】
【後でシメるわよ?】
【悪かった】
というわけで、嘘告白のセッティングは完了。
しかし、なんだか楽しくなってきた。
言うまでもなくノーリスクだ。それで、笑いを取れるのだから安いもの。
後で、あかりには何か要求されるかもしれないが。
さて、本番だ。顔を真面目な顔に切り替えて、あかりの居る席の横に立つ。
「あれ?どうしたの?高山君」
首を傾げて、明るい声で聞いてくるあかり。
演技だとわかっていても、こういう仕草も可愛いんだよなあ。
「あ、ああ。南さん。ちょっと、大事な話があって……」
いかにも、緊張してます、という感じを出す。
周りをちらっと見渡すと、皆こちらに視線が釘付けになっている。
よし、ツカミはOK。
「大事な話?それは、ここじゃないといけないの?」
「ああ。ここじゃないと出来ないんだ」
しかし、あかりの奴もアドリブなのに大したもんだ。
「わかった。話、聞くよ」
いかにも緊張してます感を出すあかり。流石だ。
「南あかりさん。俺はあなたの事が大好きだ。付き合って、欲しい」
つっかえ、つっかえという風に告白の言葉を絞り出す。
周りは興味深々だ。後は、断られて、盛大に問い詰めとやらをされればOK。
しかし、問い詰めって一体どういう芸をやるつもりなのやら。
さーて、あかりはどんな表情をしているやら、と思うと……羞恥?
ははあ。なるほど。告白されて恥ずかしがってるところまで、再現するとは。
あかりは将来、女優やれるんじゃないか?
「ありがとう、高山君。それで、返事の前に、私のどんなところが好きなの?」
はにかみながら、気恥ずかしそうに聞き返してくる姿はまさに乙女。
え?予想外の展開だ。即、お断りの返事が来る予定だったのに。
「ど、どんなってその……」
想定外の展開に言葉が出てこない。
「わかれよ。付き合ってどれだけ経つと思ってるんだよ」
口から出てきたのは、思ってもみない言葉だった。
周りの奴らも、俺の失言に、なんだ、なんだ、という空気になっている。
「わからないわよ!はっきり言葉にしてくれなきゃ!」
お、おい。これは本当に演技なのか?
「いや、ちょっと待て、あかり。今のこれは嘘告白。演技だよ、な?」
様子が怪しいので、さっさと種明かししてしまおう。うん。
「ふーん。1年前、告白したのも嘘だったって言うつもり?」
「いや、なんでそんな話になるんだよ。お前だってわかってるだろ?」
「わからないわよ!付き合ってるのに秘密にしたい、なんて!」
「お、おい。ちょっと待て」
なんだか話がマジな雰囲気になって来た。
「だいたい、最近、ずっと付き合い悪くない?デートの後もさっさと帰っちゃうし」
「い、いや。母さんから頼まれた用事があるってお前も了承しただろ」
「それに、私のどこが好き?って言っても、ごにょごにょするだけだし」
「そ、それは照れ臭かっただけで……」
「照れくさいとか言っても、女としては言葉が欲しいの!」
「あ、ああ……」
「それに、最近、後輩の五月ちゃんと仲良くしてるって噂だし」
「いや、単に部活の後輩だから、仲良くしてる。それだけだってば」
「じゃあ、先輩の風香さんは?部活、違うわよね?」
「ふ、風香さんは、その。ちょっと、ネトゲ友達で。それだけ」
「本当に?」
「本当だって。というか、一体全体、なんでこんなことに……!」
もうわけがわからない。
1年前に交際を開始したのも、付き合いを秘密にしたいと言ったのも事実。
だって、幼い頃から一緒だった奴と最近付き合いましたとか恥ずい。
「だって、隆二は言ったわよね?「問い詰め」を頼むって」
やばい、目が本気だ。それでいて、口元が笑っている。
「そんな意図だってわからねーから。頼むから、冗談だと言ってくれ、な?」
「全部本気よ。さて、弁解の言葉を聞こうかしら?」
やばいやばい。今まで溜まってきた鬱憤って奴だ。
まさか、こんな形で噴出するとは。
「まず、だ。付き合いを秘密にってのは悪かった。ちょっとした照れだったんだ」
「照れ?どういうこと?」
「幼馴染と最近付き合い始めましたとかさ。なんか、からかわれそうじゃん」
「それくらい我慢しなさいよ」
「それは悪かった。これからは公言するから。な?」
「反省の意思がない気がするけど。他には?」
「デートの後は……最近、適当だったのは謝る。すまん」
「やっぱり……。それで、他には?」
まだやるのか、この問い詰め。
「五月ちゃんと風香先輩に関しては、ほんとーに無実。疑うなら聞いてみてくれ」
「そこは疑ってなかったけどね。あとは?」
「お前の好きなとこか?」
「そう。付き合って1年経つのに、一度も聞いたことがない!」
声は少し涙声だった。そのことで本気で傷つけていたのなら……心が痛む。
「まずは……綺麗だし可愛い。それなりとか言われてるけど、俺にとっては一番!」
「ほ、他には?」
「ずっと一緒だし、ノリがいいから、居ても疲れないし」
「ふ、ふーん。で?」
「あとは、付き合いいいし、凄く甲斐甲斐しいし」
「そ、それで?」
ようやく機嫌が治ってきたようだが、まだやるのか。
「と、とにかく。色々あるけど、世界で一番お前の事が好きだ!」
普段、照れくさくて言えなかったけど、ここぞとばかりに言ってみる。
「せ、世界で一番?本当に?」
「本当だって」
「そ、そっか。凄く……嬉しい」
その瞬間、花が咲いたような笑みを浮かべたこいつ。
付き合って1年経っても、見惚れてしまう。
「で、許してくれるか?色々、不満溜めさせたのは悪かったから」
「許すわよ。大体、どれも、本気で怒ってたわけじゃないもの」
「は?じゃあ、なんで……」
「いい機会だから、本音を聞いておきたかったの!」
もう、茶番もいいところだ。
周りを見ると、いつの間にか生暖かいものを見る視線が降り注いでいる。
「なーんだ、隆二。やっぱり、南とデキてたのかよ。別に隠すことないだろ」
バーンと、太郎に背中をはたかれる。やけに嬉しそうだ。
「そうそう。水臭いというものだよ。なら、お祝いをしなくてはな」
芝居がかった台詞の智也も、祝福してくれる。
「ちょ、ちょっと待て。「やっぱり」って……」
「最近、付き合い悪いだろ?で、南の名前出した時の反応……気づくって」
「そうそう。あまり舐めないでもらいたいものだね」
しかし、気づいていた?俺とあかりが交際していた、というのを?
「だったら、俺に嘘告白をさせたのも……」
「最初に南の名前を出したのは、俺だっただろ?」
「そして、アプリを作ったのは、誰だったかな?」
くそう。こいつら、わかっていて嵌めやがったのか。
「くそう、完璧にしてやられた」
まあ、あかりとの関係も公に出来たし、いいか。
ふと、あかりが微笑んだ。
「でも、ようやく、これで、私達もクラス公認カップルね♪」
「はあ。これから、滅茶苦茶からかわれるんだろうな……」
「もうお祝い会の準備始まってるわよ。放課後は覚悟しときなさい?」
「その割に、お前は冷静だな?」
「だって……ちゃんと、皆に認められて交際したかったの」
頬を朱に染めて言うあかりはなんとも可愛らしい。
罰ゲームで嘘告白をしたら、問い詰められることになったけど。
これはこれでいいもんだ。清々しい気持ちで、心の中でつぶやいたのだった。
というわけで、一見コメディで全力で青春してる話を勢いで突っ走って書いてみました。
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