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華風皆殺し娘の交渉術  作者: 微睡 虚
第二章 寥国攻略編
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エピローグ

短いですが、戦争の後のお話です。



自国の三倍程の地を手に入れた美鳳(メイフォン)は荒れ果てたその地の復興と改革に尽力している。

既に【愁国】という前例がある上に(フー)(ヤン)という人材も手に入れたため、立て直しの兆しは見えてきていた。


略奪者は法の下に裁かれ、簒奪者に恐怖する者はいなくなった。農地開拓者にはそのまま土地の権利を与えるという布告が成されたことで領民は畑を作り始める。


「殿下の御為、この(フー)(ヤン)、骨身を惜しまず全力を尽くす所存であります」


「心意気は買いますが、今後は私のためではなく、領民のために尽力してください。もうこの地の市政長は貴方なのですから……」


「はっ!」


 (ヤン)の下には満喰(マンスン)刑楽(シンラ)によって捕虜にされた反乱軍の生き残り達が就いていた。数少ない知識人の彼女達は売られる寸前で(ヤン)に買い取られていたために少なからず恩義を感じているらしい。少しずつ復興の兆しが見えてきていた。


 畑の新設に伴い、役立ったのはやはり《杜族》の蕾華(レイファ)の力だった。

 荒れた地に草木が蘇り、畑には新芽が芽吹くのだ。農夫たちは彼女を豊穣の女神と呼び崇めた。


「「「ありがたや、蕾華(レイファ)様」」」


「そんなにかしこまられると困るんだけど……」



 鎧兜(カイドウ)龍宝(ロンバオ)は兵士の育成に尽力した。

 今日もまた青年から少年・少女まで希望者に鍛錬をつけている。


「氣の練りが足りん! そんなことでは国を守ることなんてできんぞ!」


「も、もう一回お願いします!」


 元々将軍である龍宝(ロンバオ)が教育熱心なのは当然だったが、意外なことに鎧兜(カイドウ)も子供達の面倒をよく見た。とりわけ彼が鍛錬を見たのは女の子たちである。


「女だから男に勝てないといい訳はするな。全力の俺に勝ったのは女だったんだぜ?」


「ほ、本当ですか!? 私達、強くなれるでしょうか?」


「そりゃテメェら次第だな。まぁココにいる間なら俺が稽古をつけてやる」


 常に男の暴力に怯え続けてきた旧寥国(リョウコク)の少女たちはせめて自分の身を守れるようにと軽い気持ちで護身術を学びに来たようだったが、本気で鍛錬されて驚いていた。

 彼女達は鎧兜(カイドウ)がこの地を去る日まで一人も脱落者を出さず、必死に氣巧武術の基礎を学んだのだ。


 しかしすぐに全領民の心が変わるという訳ではない。未だに無秩序の中で生きていた頃の略奪行為を忘れられない不届き者も存在していた。


「……今更農民や兵士なんてできるかってんだ! なぁ、兄弟!」


「おうよ! ひひっ、まだ新領主の支配は完全じゃねぇ。この混乱期に奪えるだけ奪って他国にトンヅラだ!」


 男達は殺めた老人の死体を踏みつけ、米や酒を風呂敷に包んでいく。

 彼らは【寥国(リョウコク)】の残滓を象徴する悪党だった。

 ひとしきり金目の物を盗んだ後戸口に引き返した彼らはそこに立つ少女と目が合う。


「なんだぁ? この家の生き残りか? 可愛らしい顔してるじゃねーか」


「兄貴、最後にこの娘も貰っていこうぜ! 外国に売り飛ばすまで愉しめそうだ」


「げへへ、そうだなぁ、じゃあさっそ―――」


 言いかけた兄貴分は 上半身を三枚に下ろされ肉塊に変貌した。

 何が起きたか分からなくなった弟分は屍と化した相棒を一瞥し、正面に立つ少女が返り血を舐め取っている様を見て失禁してしまう。


「残念だったな。お前達の行き先は地獄だぜ?」


「ギャ―――!!」」


 悪党の断末魔が夜闇に木霊する。

 リハビリを兼ねて町の治安維持を任されていた一紗(イーシャ)は、美鳳(メイフォン)の掲げた法律を守らない悪党共を次々と血祭に上げていった。一週間経つ頃には改心できない悪党は悉く皆殺しにされ、新地区の秩序が保たれていった。


 余談だがこの「悪党を皆殺しにする娘」の存在は、親が子供の悪さを叱咤する際に度々引用されることになり、「悪い子は鏖娘(みなごろしむすめ)に殺されちゃうよ」と後世まで語り継がれることとなる。


一紗(イーシャ)さま大丈夫? また修羅に呑まれてない?」


「悪党を始末する分には問題ねーさ。痣も殆ど取れてきたぜ。……お前も仕事があるだろうに、心配して見に来てくれたのか?」


「それもあるけど、美鳳(メイフォン)が招集かけてるから呼びに来たの」


「分かった。行こう」



 旧寥国領の政治が落ち着いた頃、隣国より使者が遣わされ、美鳳(メイフォン)に手紙が渡された。

 そろそろ【武言】への帰還を考えていた美鳳(メイフォン)一行は偶々将クラス全員が同席しており、皆の前でその内容を確かめることにした。


美鳳(メイフォン)様、どこの国からの書状ですか?」


「これは【宍国(ロウコク)】からですね。えーと内容は……同盟希望!?」


「ンガガガ! 俺達の武勇にビビったんだろうぜ! 鎮圧まで早かったからなァ!」


「【宍国(ロウコク)】って、確か【寥国(リョウコク)】と隣接してたところよね? 裏切者の【彎国(ワンコク)】を攻めてくれたから一応恩人ではあるけど……。この地を取りこんで【愁国】が拡大したことに恐れているっていうのも考えられるわね」


「まぁ新しいご近所さんと良好な関係を持ちたいってのは理解できる話だぜ」


 一紗(イーシャ)は【寥国(リョウコク)】に来ていた【宍国(ロウコク)】の特使一向を思いだしていた。簾の奥にいた特使は何やら身分が高い人物のようだったが、彼に一紗(イーシャ)がお願いした「【愁国】と仲良くしてほしい」という口約束を果たそうとしてくれているとしたら少し嬉しい気持ちになったのだ。

乱世でも義理堅い話の通じる領主がいるのだと希望が見えてくる。


美鳳(メイフォン)は手紙を広げて仲間達にもその内容が分かるように朗読し始めた。


『親愛なる(ホン)美鳳(メイフォン)殿。

 此度の戦の手際、げにめでたかりき。

 汝の徳と武の噂は耳にせり。我が宍国も汝とは優良なる関係を望む。

 同じ父を持つ兄妹として乱世に調和を志さばや』


「……要約すると、今後も仲良くしましょうってことよね?」


 蕾華(レイファ)の問いに頷いた美鳳(メイフォン)は、再び手紙の続きに目を向ける。


「――(こわ)き同盟の証として婚姻といふ手段(よし)をとらばや。

つかば、一紗(イーシャ)姫を我が妻として頂戴せまほしく思ひ(そうろう)!? 一紗(イーシャ)を嫁に寄越せですって!?」


「へ?」


「「「「ハァァアアアアッ!?」」」」


 室内は珍妙な空気に包まれた。

 なんと、【宍国(ロウコク)】の領主は【愁国】との同盟を結ぶにあたって、一紗(イーシャ)を娶ることを条件に求めてきたのである。





第二章 寥国攻略編終了です。


お楽しみいただけましたでしょうか。

登場キャラの野蛮さに作者の精神状態が心配になった方もいらっしゃるかもしれません。

大丈夫なのでご安心ください。


本章では一章で広げた世界観を固める構成にしました。

惡姫、《杜族》が畏怖される意味、龍宝(ロンバオ)が戦上手と言われる由縁、鎧兜(カイドウ)が努力家であったこと、帝の愚かさ、安心と信頼の金国製、帝国が油断できない内乱状態であること等です。

新設定は《戮族》くらいでしょうか。

刑楽(シンラ)は気に入っているのでまたいつか登場させる予定です。



第二章全体としては他国との戦争、そして【愁国】が発展途上国から新興国程度に成長するお話です。

荒廃しているとはいえ広大な領土を手に入れ、隣国との戦争に勝利したという実績を得たことが他の兄弟にも知られることになります。

その中で最初に動いたのは【宍国(ロウコク)】でした。


次章は強力な妖魔使い、氣巧術士が揃った軍事国家【宍国(ロウコク)】との同盟を巡るお話になります。



そしていつの間にかブックマークが100を超えました。

(*´ω`*)

ありがとうございます!

一章投稿した頃から読んでくれている読者様、作者を見捨てず未だブックマークを続けてくださっていることに深く感謝致します!

ご新規様も興味を持っていただいたことにとても感謝しています!


あと、誤字の指摘をして下さった方、どなたか存じませんがありがとうございます。

作者はざっと推敲しているので特に漢字変換ミスに気づかないことがあります。

二章だけでも十件ほどあったことに驚愕しました。

なるべく気を付けますが、次章でも多分あると思いますのでそのときはご指摘ください。



次章の投稿は……できるだけ早く進めたいですが年末シーズンに入るので厳しいかもしれません。

おおまかなプロットはできておりますが肝心の肉付けがまだで、二章より執筆時間がとりにくくなります。

気長にお待ちいただければ幸いです。


今後とも「華風皆殺し娘の交渉術」をよろしくお願い致します。

m(_ _)m




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