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元召喚士の帰還  作者: とおりすがり
第3章 炎王の喧嘩
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第51話 闇王からの手紙

 あの後暴れ回るソルアリシアを何とか説得し、宥め、カムルナギアの生存を確かめさせるのに小一時間。

 物的被害に収まったのは不幸中の幸いか。

 もちろん一番の標的となった炎王からすればたまったものではない。


「酷い目に遭った……」

「ごめんって」

「……」


 場所は変わって炎王の居室。

 既にカムルナギアも目が覚め、ソルアの横でいたたまれない表情で正座している。

 火傷で真っ赤になった顔は炎王のおかげで治ったが、今では真っ青になっていた。


 カムルナギアからすれば何やら大きな音がするな、と思い目を開けてみれば医務室が崩れ去っていて、同行を求められたところでソルアリシアがやらかしたと今まさに聞かされたところ。

 ここまで連れてきてくれたライオットの張り付いた笑顔が頭から離れない。


「そんな顔すんな。

 別に賠償金払えとか言ったりしねえよ。

 どうせ近いうち建て直そうっていう話になってたところだからな。解体の手間が省けたくらいだ」

「それなら、いいですけど……」

「それより体の調子はどうだ?

 途中で襲われたから治療もまだ完全には終わってないんだが、もう少しやっとくか?」

「……いえ。もう大丈夫ですね。

 お世話になりました」


 左肩をぐるぐる回して動きに問題がないことを確かめる。

 怪我どころか肩こりも治っている。試合前よりも快調だ。


「気にすんな。

 ……で、ここにお前を呼んだ理由なんだけどな……」


 珍しく言葉を濁す炎王。

 何事にも全力で真正面から当たる彼にしては珍しい。


「この前言ってた、俺の治療が遅れた理由ですか?」

「おう。……ま、見てもらった方が早いか」


 そう言って炎王はカムルナギアに一通の封筒を渡す。

 真っ黒な封筒。ただの紙のはずなのに怨念のような漏れ出ているような印象を受ける。


「……中身を読んでも?」

「それには俺宛の手紙とお前宛の手紙が入ってたんだよ。

 俺宛の奴はもう中身から抜いてるから好きにしてくれていいぜ。

 ……呪いとかかってないのは確認済みだしな」

「え? 今最後何て言いました?」

「何でもねえ。早く読んじまえ」

「はあ……」


 中身を空けて便箋を取り出す。

 便箋はさすがに普通の白い紙だったが、文字が血のような真っ赤なインクで書かれていた。


『カムルナギア様


 新緑が萌える頃になりましたがいかがお過ごしでしょうか。

 熱帯夜が続く日がもうすぐ来ると思うと少し憂鬱な気分になりますね。

 晩夏がもう待ち遠しいです。

 予期せぬお手紙でしょうがお許しください。

 可能な限り早く連絡を取りたいと思い、こうして筆をとらせていただきました。

 辛い試練を乗り越えたばかりで少しでも長く休みたいお気持ちはよく理解しております。

 ただ、少しでも早く我が国にいらしていただき、試練を受けていただきたいと考えております。

 残りの試練の数のことも考えまして、できるだけ簡単な試練を用意させていただく予定です。

 庭で育てている野菜も良い具合に育って参りましたので、我が国にいらした際にはぜひお楽しみください。

 

 闇王 クロアネロン』


 末尾に記された差出人の名前に驚く。

 まさか闇王から直々に手紙を受け取ることになろうとは。

 頭の中で地図を思い浮かべれば闇王国は火王国の北側に位置している。

 地理的に俺が次に闇王の試練を受けに行くとを予測したのだろうか。

 次の試練のことはまだ考えていなかったが、簡単なものを用意してくれるというならありがたい。


「「…………」」


 ソルア、炎王は覗き込むようにして手紙を読んでいる。

 少し独特な文体の手紙を前に炎王の眉が顰められていく。


「……まーたあいつは、こういうことする……」

「え? 何かおかしなところありますか?」

「平仮名にして縦読み」

「ん?」


 もう一度手紙に目を落とし、言われたとおりに読んでみる。




 『しねばよかつたのに』




「…………おぉう」

「この手紙からわかると思うが、闇王はこういう奴だ。

 俺様宛の手紙には魔術縛りの呪いがかけられててなー……。

 おかげで10日間魔術使えなかった」

「それでナギアの治療が遅れたの?」

「そういうこった。

 幸いこの国じゃ魔術はそんなに重要じゃねえっていうところがあるから日常生活に困るなんてことはなかったが、試合後すぐに送られてきたっつーことは、お前の治療阻止が目的だったんだろうな」

「普通に国際問題では?」

「正直『闇王だし……』っていう感じで許されてるところはある。

 それすらもあいつの狙いなんだろうけどな。

 『謀略王』『最凶王』の二つ名は伊達じゃねえってことだ」

「やな感じー」

「そうだよなー。めっちゃわかるー」


 いつの間にか炎王とソルアは打ち解けていた。

 俺が眠っている間に殴り合って親交を深めたのかな?

 もう少し穏当な方法で交友関係は広めてほしいのだけれど。


「手紙には『早く来い』って書いてありますけど、1日遅れるごとにペナルティ発生とかないですよね?」

「それは無いんじゃねえかな。王は『戴冠の儀』に挑んでる奴に対して妨害するの禁止されてるし」


 手紙で呪われたのは炎王のみで、俺には実害がないからセーフということだろうか。

 ルールの隙間をついてくるような所は俺と似たところがあるのかもしれない。

 仲良くなれる気は全くしないが。むしろ同族嫌悪。


「ここでもう少し体を休めておくべき。

 私もあと少しでやりたいこと終わるから」

「そういえば何をやってるんだ?」

「んー。まだ内緒」

「……まあいいけど。路銀も稼がないといけないしな」

「お、それなら仕事紹介してやろうか?

 短期でいくつか良いのあるぞ」

「……内容次第ですね?」

「えーっとな……」


 後ろを振り返って山積みになっている紙の束の山をガサゴソと探し始める炎王。

 そういえばここ、炎王の居宅だった。

 あまりにそれっぽくないから忘れていた。

 この国の風習として地べたに直接座るのにももう慣れたが、重要そうな書類までそこら辺に平積みにするのはどうなんだろうか。


「国の外で魔獣を討伐するのと、どっかの護衛団と協力して護衛任務するのと、闘技塔でファイトマネー稼ぐの、どれが良い?」

「……戦闘がないやつは?」

「無い!」

「えぇ……」


 炎王を倒した者ということでしばらくは街中で喧嘩を売られる可能性もあるとのことで、とりあえず火王国の外にである仕事で危険が少なそうなものをいくつか選ばせてもらった。

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