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元召喚士の帰還  作者: とおりすがり
第3章 炎王の喧嘩
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第46話 炎王の喧嘩① 死闘開幕

 観客席には席を詰め尽くす観客。席が足りず立ち見する者すらいる。

 大人も子供も関係なく、間もなく始まる試合を心待ちにしている。

 彼らが期待するのは炎王がカッコ良く勝利するところなのだろう。


 俺は闘技エリアの中央からそれを眺めていた。

 炎王はまだ現れていない。

 主役は遅れてやってくる、ということだろうか。


「さあ、間もなく始まります。

 炎王フレアグニス陛下と挑戦者カムルナギアの試合!

 解説はお二人と交流のある公認護衛団『超爆裂団』のライオットと……」

「リーズでお送りいたします!

 ゲストにはカムルナギアさんの旅のお仲間、ソルアリシアさんをお招きしております!」

「よろしくー。ピースピース」

「何やってんだお前は!?」


 朝から姿が見えないかと思ったら……。

 解説者用の特別の席を与えられて満足そうな顔を浮かべるんじゃない。


「さて、我らが炎王のことは本日いらした皆さんご存じでしょうが、挑戦者であるカムルナギア殿のことは皆さんはほとんどご存じでないと思われます」

「そこで、試合前にソルアリシアさんにインタビューしてみたいと思います!

 ズバリ、カムルナギアさんはどのような方ですか?」

「えーっとね……。ケチでヘタレ。あとよく悪い笑顔浮かべてる」

「印象が良くなるようなこと言ってくれませんかねえ!?」

「……頭は、私より良いと思うよ?」


 なんで疑問形なんだろう。

 後で真剣に話し合いが必要なのではなかろうか。


「先日実施された多目トカゲ討伐作戦においては、突如現れた超大型個体に対して的確な指示を行い、救援が駆け付けるまで見事時間稼ぎを果たして見せたとの報告が上がっております!」

「カムルナギアさんの指揮能力を裏付けるエピソードですね」

「その後魔力枯渇で倒れかけてたけどね」


 なんで余計な一言付け加えるかな。

 その後もインタビューは続き、ソルアが何か言うたびに俺がツッコむというのが繰り返された。


 ……。

 …………。


 そうして10分ほどが経過した頃。

 いよいよ立ち見客すら入りきらなくなってきた。

 それは試合開始までの時間が迫りつつあることを示していた。


「さあ、お時間となりました!

 皆さん大きな歓声でお迎えください! 炎王陛下のご入場です!」


 わあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!

 割れんばかりの歓声と共に、炎王が堂々とした足取りで闘技エリアの姿を現す。

 昨日まで討伐作戦に参加していたようにはとても見えない。


 炎王がスッと手を上げると歓声はピタリと止んだ。

 それだけで炎王の求心力と国民の支持の存在をひしひしと感じさせる。


「お前らぁ! 今日はよく来た!

 俺様がこうしてこの闘技塔で公式に戦うなど随分と久しい!

 最近はいざ試合となると逃げるやつも少なくなかったからな!」


 炎王の演説が始まる。


「だが今日は違う! 異界より来て王を目指す骨のあるやつが現れた!

 この平和な時代に力を求め、王になることを決意する者が現れることの何と久しいことか!

 俺様はこの男のその決意に敬意を表しよう!」


「だが! だがしかしだ!

 俺は王としてこの者を試さねばならん!

 王とは勝利する者! 民に行く先を示し、誰よりも先を歩む者だ!」


「ならば俺がこの者に求めるものはただ1つ! 勝利だ!

 『常勝王』とまで呼ばれるに至った俺様に勝利してこそ九番目の王となるにふさわしい!

 そうは思わねえかお前ら!」


 おおおおおおおおおおおおおおおお!

 賛同を唱える声が響く。


「もちろん俺様も一切の手加減などしねえ!

 お前らからすればもはや見慣れた勝利を今日も見せてやる!

 俺様の偉大さを目に焼き付けていきやがれ!」


 歓声はもはや止むところを知らない。

 炎王は言いたいことを言いきったのか、ふう、と一息つく。

 そして、俺を見て、ニヤリと笑った。


「よう。この2か月、ただボーっとしてたわけじゃねえみてえだな」

「……当然ですよ。あんなものを見せられて何もせずになんていられない」

「はっはっは。

 それで? 俺様に勝てる算段は付いたのか?」

「それは、どうでしょうね」

「おいおい。そこは自信満々に『1発で片をつけてやる』くらい言ってみるところだろうが」

「それで変に構えられても困りますからね」

「……ああ。いいな。それは俺様に勝てると思ってる奴の言葉だ。

 お前がこの2か月でどう変わったのか、楽しみだ」


 炎王はナギアとの戦いを前に舌なめずりする思いだった。

 己の知らぬ世界に生まれ、己の知らぬ人生を送ってきた男。

 一体こいつは俺様に一体どんな手段で勝利を勝ち取りに来るのか。

 高揚感。ただそれだけが炎王の心を満たしていった。


 ……本当に、やり辛い。

 一方ナギアはアウェー感漂るこの状況にやり辛さを感じていた。

 炎王の先ほどの演説から炎王の支持が絶大だということはありありと伝わってきた。

 それはすなわち、炎王の力がそれだけ増しているということ。

 あの日炎王が一撃で超大型を屠った光景は今でも目蓋の裏に焼き付いている。

 あの暴力が向けられる恐怖はぬぐえない。

 ……それでも、イチト達にはカッコ悪いところは見せられないからな。

 恐怖、矜持、責任……。様々な思いがナギアの中で巡っていた。


「じゃあ始めようか! 開始を合図をしろ!」

「では、これより炎王フレアグニスと挑戦者カムルナギアの試合を開始します!

 ルールは単純、10カウント内に意識を取り戻さないか、場外のどこかに体が触れたら負け!」


 会場の熱気が最高潮になる。

 俺は華炎流の構えをとり、炎王はだらんと腕を垂らすだけの姿勢をとる。




「……では、始め!!」

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