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元召喚士の帰還  作者: とおりすがり
第3章 炎王の喧嘩
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第44話 修業途中

~修業開始から1か月~


 ようやく攻撃を捌けるようになってきた。

 真正面からで、1対1なら何とかなりそうだ。


「炎王は背後からとか一切やらねえからこんなもんでいいだろ。

 じゃ、次『崩突』の訓練な」

「押忍!」

「まずは空属性の魔力を相手に打ち込むとどうなるか試してみるか。

 拳に込めた魔力を相手の体内に潜り込ませるイメージでそこの人形殴ってみろ」

「押忍!」


 火属性の者が『崩突』を使えば相手は爆発する。

 では空属性の俺が同じようなことをやればどうなるのか。

 拳に魔力を集中させる。

 魔力を拳の中に隠し持っておいて相手に拳が当たった時に拳の中の魔力を相手に移すイメージ。


「いつでもいいぞー」

「じゃあ、行きます!」


 全力で振りかぶって人形を殴りつける。

 バシッといういい音が響いた。


「……さて、どーなるっすかね」

「中身が飛び出してくるとか?」

「怖い想像止めてね、リヨンちゃん」


 ……。

 …………。


「……ん?」


 人形に何か変化はない。

 ちゃんと魔力は打ち込んだはずだが……。


「もしかして空属性だと何も起きない?」

「……いや、ちょっと待て。

 サント、この人形を縦に割ってみてくれ」

「……? 了解っす」


 そう言ってサントが手刀で人形を縦に割る。

 ……さらっとすごいことしたな今。


「うわっ、何だこれ!」

「どうなってる?」

「師範、これ見てくださいよ」


 サントが人形の断面を見せてくれる。

 人形は断面のちょうど真ん中あたりから螺旋を描くように捻じれていた。


「これって……」

「お前が呼び寄せの魔術に失敗した時に起きていた現象に似てるな」

「これ、人間が食らったら内臓が捻じ切られるってことですよね?」

「そうだろうな。これ見て無意識で制限かかったりしねえか?」


 俺は実際にイメージしてみる。

 遠くの物に魔力を集中させることと直接触れている物に魔力を移すこと。

 どちらの制御が簡単かと問われれば当然触れている方が簡単だ。

 そして、直接触れなければならないという制限があることが却って暴走の危険がないという安心を生む。

 人形を見ても、石のように破裂するようなこともなかった。

 ……これなら、人に対しても多分使えるだろう。


「大丈夫そうです」

「よし。なら後はこれを炎王に当てるためにどうすればいいか、だな」

「『尽志』と『去統』は攻撃を捌けても懐に潜り込むのは難しいからねえ……」


 必殺の一撃があるとしても当たらなければ意味はない。

 それにも関わらず炎王の攻撃は一発一発が必殺級の威力だというのだから本当に理不尽だ。

 要は、相手から一発ももらわずにこちらが先に攻撃を当てなければならない。


「ちょっと俺に考えがあるんだが、いいか?」

「何です?」

「お前、瞬間移動できるんだよな?」

「『瞬身』ですね。

 確かにあれを使えば炎王の目の前には出られると思いますが、転移してすぐに『崩突』は使えませんよ?」


 『瞬身』は、①両足の接地、②移動先が視界内に入っている、③前回の使用から10秒経過しているの3つの条件がそろったうえで、足元に浮かんだ魔法陣に魔力を通して使う。

 そのため、拳に魔力を集中させる『崩突』とは相性が悪い。


「それは前聞いた。

 俺が言いてえのは、その『瞬身』を対炎王用に改良できねえかって話だ」

「具体的には?」

「移動距離は短くてもいい。その代わり視界に入っていない場所にも連続して移動できるようにするんだ」


 それを実現してどうするのか。イチトの意図を考えてみる。

 ……。


「柔の技で相手の攻撃を捌きつつ、短距離移動魔術で攪乱。

 隙が見えたところで『崩突』ですか」

「おう。流派の中には柔拳を主体としたものもあるから多分炎王もそれは知っているだろう。

 だが、その移動魔術は炎王にとっても初見だ。勝ち筋があるとすればその辺だろ」

「であれば、移動魔術はギリギリまで隠した方がいいですね」

「それは実際にやってみねえと分からねえな。

 明日からはその辺も考えてやっていくとするか」


 今日はこれ以上稽古をすることは難しい。

 忘れてはならないがイチト達は野盗として捕まった犯罪者であり、こうして稽古をつけてくれているのは火王国がたまたま寛容だったからに過ぎない。

 そのため、1日にできる稽古も限られている。


「ちゃんと帰ってからも動きは反復練習しておけよ?

 こういうのは思ってるよりすぐに抜けちまうもんだからな」

「押忍!」

「じゃ、お疲れさん」


 イチト達は闘技塔での奉仕活動に戻っていった。

 まもなく今日の試合がこの闘技エリアで始まる。

 俺も帰って体を休めることにしよう。








「ただいまー……って、またいないのか」


 俺が修業を開始するのと同時に、ソルアも何か始めたらしい。

 修業を終えて帰ってきたときにソルアが先に帰ってきたことはこれまでで一度もない。

 一応夜遅くには帰ってきており、朝にも少し会話をしているが、何をしているのかまでは教えてくれない。


「こんな時間までどこをほっつき歩いているんだか……」


 危ないことに巻き込まれている、ということではなさそうだ。

 毎日両手に一杯の食べ物を持って帰ってきているし。


「まあ、何かあれば相談してくれるだろう」


 自立させることも大切。

 あまり干渉するのもよろしくない。


 誰に対する弁明なのか、必死に脳内で正当化を図るナギア。

 この時にソルアに何をしているのか問いただしておけば……。


 ナギアが真実を知って絶句するまで、あと2か月。

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