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元召喚士の帰還  作者: とおりすがり
第3章 炎王の喧嘩
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第35話 代償

 炎王との謁見が終わった後、ライオットに宿屋『炎上亭』を紹介してもらった。

 ネーミングセンスの方は本当にどうにかした方がいいと思う。


 酒場と宿屋が併設されたこの宿屋は、宿泊客だけでなくこの国の住民も日頃から利用されている。

 ライオット達とは夕飯を共にしたが、声を張らなければ会話が成り立たないレベルで賑やかだった。


 この国は料理も豪快……というか雑。

 塩を振って焼いただけの肉。煮込んだ肉。骨付き肉。

 茶色のものと酒ばかりがテーブルに並ぶ。


「脂が……辛い……」

「何か仰いましたか!?」


 ライオットはガツガツと食べている。

 見ているだけで腹が膨れる。


「ソルアさん、これもおすすめですよ!」

「どれどれ」


 ソルアもリーズに勧められるがまま皿を積み上げて行っている。

 どうやら量を食べられないのは俺だけのようだ。

 ……あ。なんかもう気持ち悪くなってきた。


「体は資本ですぞ!

 ささ、もう一皿、次はこの国の周辺でよく獲れる鳥の焼肉です!」

「ギブ! ギブです!」

「えー……」


 3人からジロジロと体を見られる。

 どうやら3人とも結構酔ってるな?

 目が座っている。


「そんな華奢な体でどうしますか!?」

「そうですよ! もっと筋肉つけないと!」


 ライオットとリーズがべたべたと俺の体に触ってくる。

 腕や腹筋のあたりを手あたり次第揉まれる。


「ええい、この酔っ払いどもめ!

 揉むな! ソルア助けて!」

「ぐー……」

「寝てる!?」


 火王国について一日目はこうして終わった。



 ……。

 …………。



 翌朝。

 俺は泊まっている部屋で目を覚ました。


 炎王が参加する大規模作戦は明日から。

 さて、今日は何をしようか。

 朝の体操をしながらぼんやりと考える。


「むむむむ……」


 隣のベッドからソルアの呻き声が聞こえる。

 見れば真っ青な顔で頭を抱えていた。


「どうした?」

「あたま、痛い……」

「二日酔いだな。

 水持ってくるから待っていなさい」

「ふつか、よい……?」


 ソルアは昨晩リーズに勧められるまま酒を浴びるように飲んでいた。

 テーブルに置き場が無くなり、床に酒瓶が積まれるほど飲めば二日酔いになるのも当然だ。


 酒場から水を貰い、部屋に戻ってソルアに渡す。

 ソルアは水を受け取ると、一気に飲み干した。


「水って、こんな味だったっけ……?」

「二日酔いの時に飲む水は美味しいらしいな」

「なるほど……。これが、美味しい……」


 ソルアは空になった器を俺に返す。

 そのまま俺の目をじっと見つめる。


「どうした?」

「もう一杯」

「はいはい」


 どうやら気に入ったらしい。

 酒場と部屋をもう一往復する。


 ソルアはぷはー、と水を一気に飲んで満足げな顔を浮かべる。


「これの為なら二日酔いも悪くない」

「いや悪いわ」


 何か変なものにハマりそうになっている。

 明らかに教育上よろしくない。

 酒はまだ早かったか……?


「ラッくんとリッちゃんは?」

「ん? ああ、ライオットとリーズの事か。

 あの2人ならお前が寝た後、帰っていったよ」


 ちなみに2人はソルア以上に飲んでいた。

 それにも関わらず帰る時には足元はしっかりしていたというのだからもう絶句するしかない。


「今日は大人しく寝ていなさい。

 何か欲しいものとかはあるか?」

「んー……。いいや。

 それよりナギア、やることあるんじゃないの?」

「そうだな……」


 炎王に関する情報の収集。

 闘技塔における詳細なルールの確認。

 炎王に勝つ為の方法の模索。


 やるべき事は沢山ある。

 だが……。


「目の前でうんうん唸っている奴を放っておいてまでやらなくちゃいけない事などないな」

「むー。ごめん」

「気にするな」


 今日は部屋で魔力制御の訓練でもしよう。

 新魔術のことも考えなければならないしな。


 ……。

 …………。


 ソルアの容態を見ながら魔力制御訓練をしていたら太陽が真上に昇っていた。

 ソルアはすぴすぴと寝息を立てて眠っている。

 顔色もだいぶ良くなったので明日にはいつも通りになっているだろう。


 ソルアも軽い昼ご飯なら食べられるだろうか。

 酒場で何か買うとしよう。

 そう思い椅子から腰を上げたとき。


 コンコン、と俺たちが止まっている部屋の扉がノックされた。


「はい?」

「ライオットです!」


 扉の向こうから大きな声が聞こえる。

 ソルアが起きるといけないので、急いで扉を開ける。


「こんにちは、ライオットさん。

 今ソルアが二日酔いで寝ているので少し声は抑え目でお願いします」

「おっと、そうでしたか。

 やはり昨日は少し飲みすぎてしまいましたかな……」


 ……少し?


「今日は昨日お話があった闘技塔での試合のルールについてお話をさせていただきたく……」

「そういうことでしたら、外でお話しましょう。

 昨日の酒場でいいですか? あそこは昼は食堂をやっているみたいでしたし」

「分かりました。あまり時間はかけないよういたしましょう」

「助かります」


 ……。

 …………。


 酒場、もとい食堂に移動した俺たち。

 テーブルには焼いた肉を野菜で巻いたものが乗っている。

 結局肉だが、昨日よりは緑成分があるので良しとしよう。


「まあルールと言っても昨日陛下がおっしゃった以上のことはそれほどないんですけどね」


 ライオットはそう言いながら図が描かれた紙を俺に示す。

 どうやら闘技塔の見取図のようだ。


「この壁沿いに描かれているのが観客席。

 中央が試合を行うフロアですな」


 フロア部分には観客席との境界を示す四角とその内部にもう一つの四角が描かれていた。


「この内側の四角は?」

「これは場外を示す線です。

 試合中はこの線より内側以外の部分に体の一部が触れるとその時点で負けとなります。

 初めはこのような線はなかったのですが、そうすると意地でも負けを認めない者が続出しましてな……」

「分かりやすく負けを作るための措置、ということですね。

 場外に出る以外に勝敗が決まることはありますか?」

「場外負け以外にも、10カウント以内に意識が戻らなかった場合も負けとなります。

 武器の使用は禁止ですが、魔術はどれだけ使ってもらっても構いませんし、観客席への被害はしっかりと防御魔術が展開されておりますので思う存分力をお振るいください」


 ルールをメモにまとめる。

 勝利条件は相手を10秒間ノックアウトすること。

 敗北条件は線の外側に触れること。

 武器は使えないが、それ以外なら何をしてもよい。


「ルールとしては本当にこれだけです。

 ナギア殿が陛下と戦われるその日までに一度試合を観戦してみるのもいいかもしれませんな」

「そうしようと思います」

「今日の所はこれで失礼いたします。

 ソルア殿には是非これを」


 ライオットはそう言っておれに小包を渡す。


「これは?」

「わが国でも珍しい甘味の店にある人気商品らしいです。

 娘にせがまれて買ったついでに、ソルア殿にもどうかと思いまして」

「ありがとうございます。きっと喜ぶと思います」

「同じ娘を持つ親として、できる限りの協力はいたしますぞ」

「……違うって言いましたよね?」

「またまた~」


 だめだ! コイツも人の話聞いてるようで聞いてねえ!

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