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元召喚士の帰還  作者: とおりすがり
第3章 炎王の喧嘩
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第31話 野営

 野盗達を難なく捕縛した護衛団『超爆裂団』。

 その実力は本物のようだ。

 哀れ捕縛された4人の野盗達はライオットとリーズの両肩に担がれる形で運ばれている。


 大の大人2人を担いでいるというのに、その歩みが乱れる様子はない。

 これでソルアの荷物も同時に運んでいるというのだから、鍛えられっぷりには感嘆しかない。


 問題はそこではない。


「…………」

「「「「…………」」」」


 野盗達は既に全員気絶状態からの復帰を果たしている。

 そんな彼らは頭が背中側になるように担がれている為、護衛の後ろを歩く俺とずっと目が合っている。


 つまり気まずい。

 既に襲撃からかなり時間が経っているが終始無言である。


 だがここに気まずい空気をぶち壊す奴がいた。


「何でおそってきたの?」

「それ聞いちゃうかー」


 言うまでもなくソルアだ。

 人見知りしないのは良いことだと思うけど相手は選んでほしい。


「まあ……。金とか食料とかが狙いだわな」

「護衛団いるのに?」

「普通個人に公認護衛団がつくことなんてねーよ。ついてねえ……」


 リーダーらしき男が答える。


「これからどうなるの?」

「あー……。火王国に着き次第拘束されて暫く牢に叩き込まれるんじゃね?」

「ライオットさん、どうなんです?」

「恐らくそうなるでしょうな!

 そこで矯正プログラムを受けることになるでしょう!」


 火王国の矯正プログラム。

 すごい。嫌な予感しかしない。

 同じことを思ったのか、リーダーは恐る恐る尋ねる。


「具体的に何をさせられるんで?」

「健全な精神は健全な肉体に!

 二度と野盗などしたいと思わぬよう、徹底的に鍛え上げよう!

 要は筋トレだな!」

「ヒェッ……」


 タスケテ、と言う視線を受け取ったが俺にできる事はない。

 罪を償って真っ当な人間になれることをお祈りしております。


 ……。

 …………。


 休憩を挟みつつ移動し続けて既に日も落ちている。


「今日はここまでにしましょうか!」


 ライオットの一声で全員で野宿の準備を始める。

 野盗達は縛られたまま近くに転がされている。


 ライオットとリーズはテキパキと動き、あっという間に夕飯や寝床の設営を完了させてしまった。

 俺とソルアは邪魔にならないよう、近くで2人が準備する様子を見ていた。

 次からは自分の分は自分でできるようにしよう。


「お待たせしました!

 食事にしましょうか!」

「ささ、こちらへどうぞ!」

「ありがとうございます」

「わーい」


 いつもより少し早い夕飯が始まる。

 日が沈めば無理な移動は避け、日が昇るとともに移動を開始する。

 生活リズムも自然とこれに合わせることになる。


 ギュルルルルルルル……。

 俺たちが夕飯を食べる中、野盗たちの腹の音が鳴り響く。


「食べる?」

「! いいのか!?」

「食料余ってるし」

「恩に着るぜ!」


 ライオットは俺に許可を求めるように目で窺う。

 俺は肩をすくめ、ソルアの判断を尊重する態度を示した。


「暴れないようにね!」

「分かってるよ、もう燃やされんのはこりごりだ」


 リーズに縄を解かれた野盗たちはバタバタとやってきてソルアから皿を受け取る。

 皿を受け取る際、ソルアに礼を言っていくのを忘れない。


「嬢ちゃん、あんがとよ」

「ん」

「久しぶりなまともな飯だぜ」


 ガツガツと掻き込む様子から嘘ではないらしい。

 調子が出てきたのか、野盗たちの口も軽くなる。

 野盗たちはリーダーのイチトを始めとして、ニケ、サント、リヨンと名乗った。


「何で嬢ちゃんたちは公認護衛団の護衛なんて受けてんだ?

 ひょっとして貴族かなんかか?」

「違う。ナギアが王様になるから」

「ああん?」


 イチトはソルアの言葉の足りない説明に疑問符を浮かべる。

 結局俺が追加の説明をすることになった。


「俺が『継承の儀』に挑戦してるんです。

 すでに風王から認められていることもあり、風王が護衛をつけてくれたんです」


 正確には護衛を付けたのはアーガルムだがそこは大差ないだろう。

 俺は薄緑色に淡く光る宝珠のついた腕輪を掲げて見せる。


「はえー……。今時そんなの目指す奴いんだな。

 なんで王様になんてなりたいんだ?」

「まあ、色々とありまして……」

「その辺の話はできれば私たちも聞きたいですね」


 リーズが話に入ってくる。

 しっかりイチト達に睨みを利かせている辺り職務に対して真面目である。


「話すと長くなるんですが……」


 別に隠すような話でもない上、まだ寝る時間でもないため俺は自分の来歴を話し始める。


 ……。

 …………。


 俺の話が終わるころ、オンオンと男泣きしている人がいた。ライオットだ。

 イチトは特に変わらなかった。


「そんな事情が……!

 不肖ライオット、その不屈の心に感服いたしました!」

「兄ちゃん、苦労してんだなー。

 ま、もうすぐ牢にぶち込まれる俺らには関係のない話だけどな」


 ライオットはキッとイチトを睨むが、イチトは口笛を吹いて真面目に取り合う態度を見せない。

 その態度がさらにライオットの怒りを呼ぶ。


「どうやらお前には教育的指導が必要なようだな……!」

「ライオットさん、別にいいですよ。

 その人たちに関係のないことなのは確かですし」

「しかし……!」


 ライオットはさらに食い下がるが、俺が怒っていないことが伝わったのか引き下がってくれた。


「それで今度は火王国が目的地か?」

「そうですね。そこで炎王陛下に認めてもらうっていうのが現状の目標です」

「ふーん……」


 話の流れが炎王について聞くのにいい感じになってきた。


「炎王陛下はどんな御方ですか?」

「素晴らしい方ですね!

 我らが王は火王国民全員の目標です!」

「『常勝王』って呼ばれてるっつー話は聞いたことある。

 なんでも即位してから負けたことがねえって話だ」


 『常勝王』。

 ライオット達が勝つことに拘るのはこの王の影響なのだろうか。


「拳を振るえば山を砕き、足を振るえば大地が割れる。

 あらゆる壁を乗り越え常勝無敗の道を往く。

 燃え盛る不屈の血を受継ぐ最強の王っていうのが謳い文句らしいぜ」

「やけに詳しいですね」

「……うるせえよ」


 急に饒舌になったイチトはそのことを指摘されると不機嫌となり黙り込んでしまった。

 ……何か地雷踏んだか?


「さ、さあ、もう明日に備えて今日はお休みください!

 我々は交代で見張りをいたしますので、何かあればお声がけください!」


 ライオットは場の気まずい空気を振り払うようにさらに大きな声を出す。

 俺の話に結構な時間がかかっていたようだ。


「まだねむくない」

「明日はいつもよりも早起きだ。

 明日もちゃんと動けるように体は休めておきなさい」

「ぶー……」

「ワガママ言わない」


 ソルアはモソモソと寝る準備を始める。

 俺がソルアの寝床を整えているとライオットが俺の肩に手を置いてくる。


「私にも娘がいまして……!」

「違いますからね?」 

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