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This side and the other side 世界が変わって見えてから  作者: あこべうき
綺麗なゾンビ 【柄牧灯香】
3/10

3

 俺が見てきた中で、ゾンビは大きく分けて三種類いる。

 一つ目は、放課後の公園のベンチでクレープを食べる俺の周囲をうろうろしている腐った系のゾンビだ。

 こいつらが一番数が多い。

 街中を歩けば常に視界に入り込み、学校の中にも大量に居る。

 身体が腐っている影響か動きは遅く、ちょっとの力でもすぐに押し負ける。

 数で来られると厄介なんだろうが、その数頼みも俺の体に触れる事が出来ないために脅威になりえない。

 まあ、俺に触れられないのは三種類のゾンビ共通のだけどな。


 二つ目は綺麗系のゾンビ。

 大多数のゾンビと違い、その体は腐っていない。

 これらは少数であり、例えばクレープ屋の女性店員のゾンビや俺のゾンビ化した妹が該当する。

 動きは普通の人間よりはちょっと遅い程度であるが、たまに走っていたりする。

 力は体のリミッターが抜けているのか普通の人間よりも強い。

 学校のトイレで大をやっている時に綺麗系ゾンビがドアを破って現れた時は本気でビビった。

 ちなみに綺麗系ゾンビは学校一の美少女と謳われる同学年の幸山(ゆきやま)アイリーンさんだった。

 何が悲しくて俺に触れる事ができなくても襲い掛かってくる美少女ゾンビが居る中で大をしなきゃいけないのか。何であの時に限って下腹部の状態が急降下しちゃうのか。


 やめよう、思い出すだけ悲しくなる。つらい。


 三つ目は本当に稀に現れる変異体と俺が呼称している強力な力を持つゾンビだ。

 例えば学校の体育館、その天井にはびっしりと蜘蛛の巣が張り巡らされていている。

 その巣では体液を吸われて干乾びた動物や人間の亡骸が無数に存在している。

 そして巣の中央では一体の変異体のゾンビが存在している。

 それは新雪を思い浮かべる様な真っ白な色の中に、赤い瞳が特徴的な少女。

 その体は歪で、人間の上半身と蜘蛛の下半身が融合しているかのように見える。

 俺はその姿から勝手にアラクネと呼んでいる。

 初めて会った時は俺を捕食しようと襲い掛かって来た。

 糸を西部劇のカウボーイの投げ縄みたいに投げつけて来たり、直接捕まえようと飛び掛かって来たり。

 まあ俺に触れる事が出来ないからか彼女は俺を睨みつけるように見つめると諦めて巣へと戻って行ったけど。

 それ以降は体育の授業や全校集会で体育館に居てもアラクネには無視され続けている。

 ちなみに体育館はアラクネ以外にゾンビが居ないおかげで俺的には二番目に心安らぐ場所になっている。

 ゾンビが入り込んでもアラクネがすぐに捕食してしまうし。

 まあ一番心安らぐのは自宅だけどな。

 アラクネの他に見た覚えがあるは三体。マーメイド、モスマン、パッチワーク。探せば他にも見つかるかもしれない。

 

 そんな感じに三種類のゾンビが居る。

 で、ふと思う。ゾンビ化しないで生き残った人類は居るのだろうかと。

 一応この街は地方とは言え都市部だ。立て籠もりに最適なショッピングセンターもあるし、閑静な住宅街もある。

 だけど歩けど歩けど目に付くのはゾンビ共だけだ。まあ、こっちの世界では普通に人間が歩いているけど。

 まあ、ショッピングセンターとかで立て籠もってもゾンビ映画ではバリケードがぶち破かれてってのがいつものパターンだし。

 学校でも意識して向こう側の世界の光景を見ると校門とか玄関にバリケードの残骸らしきものが見えるから、きっと生き残りは立て籠もろうとしてゾンビ共に突破されてしまったんだろう。


 というより、本当にこの力って何だろうな。

 俺にだけ発現した能力なのか調べるため、ネットの某掲示板サイトにスレッドを立てて同じ力を持つ人が居ないか探した事がある。

 結果は中二病乙と書き込まれて終わった。ついでに書き込んだ内容を妹に見られて生暖かい目で見られた。

 

 何でリビングでノーパソを開けたまま放置してしまったのか。思い出すだけで悲しくなる。つらい。


 クレープを半分だけ食べて、ベンチから立ち上がる。

 いつもの帰り道、クレープを買ういつもの寄り道の更に寄り道。

 路地裏に入って少し歩いたところに、そいつは居た。

 分類的には綺麗系ゾンビだろう。

 胴長短足で突き出た鼻が特徴的。それでいて黒く艶やかな毛並みは撫で心地が良い。

 メスのミニチュアダックスフンドのゾンビ犬のクロマル。

 そいつは俺に気付いて期待した眼差しで見上げてくる。

 

「クロマル、お座り」


 言うと、クロマルはきちんとお座りをする。

 名前の理由は初めて見つけた時、クロマルは顔を自分の腹に埋める様に丸まっていたから。

 そんなクロマルの前に包装紙を取ったクレープを置いてやる。


「よし、食べて良いぞ」


『バゥ』


 小さく吠えてクロマルは食べ掛けのクレープを食べる。

 その姿が微笑ましく、小さく笑みをこぼす。


「また来るよ、クロマル」


 クレープを食べるのに夢中なクロマルに声を掛けてから元来た道を引き返す。

 一応ここはクロマルの縄張りなのだが、最初の時とは違い襲い掛かって来ないのを見るに、俺はクロマルに認められたのかもな。


 ……まあ、現実はクレープと言う餌を持ってきてくれる便利な人間と認識されてるんだろうなぁ。

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