表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

第五話 空が見る夢

 ジェレイドが建物の扉を開けて中に入ると、中は大騒ぎになっていた、


 「お、帰ったか」


 チェルがのんきに酒を飲んでいた。、


 「一応お前は一三歳だろうが、酒なんて飲むな、それはともかく・・・・・・」


 横目で騒いでいる群衆をみる、


 群衆の中に居るもの全員が炎や稲妻等をを具現化させている。


 あんなに密集していたら、怪我人が出てもおかしくない。


 ジェレイドは手を叩き、大声で、


 「おい!やめろ、なんだこの騒ぎは!?」


 言うと、一瞬静まり返ったが、再び騒ぎ出してしまった。


 ジェレイドは呆れ、椅子に座り、頬杖を突きながら酒を飲み始める。


 (まあ、別にいいだろう、イーターとの戦いでないと死にはしないしな)


 空は夕焼けに染まっていた。




 彼女は目覚めの時を待つ、


 白銀の炎が現れるとき、


 彼女は目覚める。




 日が沈み数時間が経とうとしていた、


 先刻の騒ぎは未だ治まっていない。


 「はぁ〜」


 ジェレイドは溜め息をつき、グラスに再び酒を注ぐ、


 隣の椅子ではチェルがテーブルに突っ伏せて眠っていた、


 しばらくして、群衆の中からエリサがよたよたと抜け出てきて、


 何かの毛皮だろう、肌触りの良さそうな布を戸棚から出してチェルの背中に掛ける。


 ジェレイドはエリサに向かい何故こうなったかを聞くと、


 誰が一番便利な力かを討論していたらしい。


 (馬鹿馬鹿しい・・・・・・)


 酒を飲み干し、戸棚に近づこうと立ち上がったとき、エリサが声を掛けてきた、


 「そういえば、少し帰ってくるのが遅かったよね、何してたの?」


 何をしていた? ジェレイドは数秒考えると、あの白銀のドレイクとの戦闘を思い出した、


 「ああ、以前のアークスとかいうイーターが連れて来た、白銀のドレイクと戦ってたんだが」


 ふ〜ん、と頷きエリサはグラスのみを持ってテーブルに戻った、


 ジェレイドは酒を瓶ごと持って来いという意図を感じ、瓶を持ったままテーブルに戻ると、


 エリサは案の定、笑顔で酒瓶を受け取り、グラスに注いでいく、


 ちゃっかりしている、ジェレイドはそう思い自分のグラスにも酒を注ぎ、飲みだす。




 彼女は夢を見る。


 目の前で繰り広げられた惨劇を、


 悪夢となって再び目撃した。




 空には日が昇り、窓からは光が射しこんでいた、


 「ん・・・・・・いかん、うかっり眠ってしまった・・・・・・」


 昨夜の騒ぎは流石に治まっていたようだ、騒ぎは治まっていたが寝ている者は誰もいなかった。


 皆が皆、床に座り瞑想をしている、


 「・・・・・・何やってるんだ?」


 一人の男に問い掛けると、男の体勢が崩れ、土で出来ている床に勢いよく額を打ち付け、


 鈍い音とともに男は動かなくなった、


 (気絶したか・・・・・・?)


 思い、近づいてしゃがみ込んで見下ろしていると、いきなりムクリ、と勢いよく起き上がると、


 男の後頭部がジェレイドの額に――


 「っ?!」


 ――ぶつかり、額には血が滲んでいた、ジェレイドは痛みに顔を歪ませ、うずくまる。


 男は周りをキョロキョロと見回して、ジェレイドがうずくまっているのを見つけ、


 「どうしたんだ?」


 いままでの経路を求める。


 ジェレイドはしばらくうずくまり、何も答えぬまま数分の沈黙が訪れた。




 彼女は否定する。


 悪夢が現実のものだと、


 断固否定する。




 男はジェレイドの横に座り、酒を飲みながら大笑いしている、


 「いやぁ、悪かったな、いきなり頭突きしたりしてよ」


 男のこのような態度がジェレイドを苛立たせていた。


 「黙れガウス・・・・・・、喋りながら唾を飛ばすんじゃない・・・・・・」


 ガウスと呼ばれた男はグレーの髪を掻き毟りながら反論する、


 「硬いこというなって、俺たち主従の関係――」


 「次言ったら、その舌切り落とすぞ・・・・・・?」


 「冗談だって、お前はホントにやるから困るんだよ」


 このような会話を交わしていているが、


 二人は自分の背中を預けることが出来る、数少ない親友だった。


 彼らは依頼が無いときに、常に次の戦いに備え剣を研ぐことや矢の補給をせずに、


 酒を飲みつづけている。


 何故このように酒ばかり飲むのかというと、彼らにはその必要がないからだ、


 ジェレイドの重剣は切れ味がよく、刃こぼれもしないので研ぐ必要は無い。


 ガウスの使用している衝拳と呼ばれるグローブのようなものは、


 ただ単に硬い鉛などを仕込んだだけなので、使い終わるたび交換する必要は無い。


 それに対し、エリサが使っている弓矢は矢を補給しなければならない、


 チェルが使っている小太刀は、刀身が細く刃こぼれもしやすいので、


 こまめに研がなくていけない。


 それ故に2人は時間を潰す方法が分からなかった為、


 いつも酒を飲んでいる事になってしまっていた。


 「そうそう、前から聞きたかったんだけど何で本名じゃなくてジェレイドって偽名使ってるんだ」


 ガウスはジェレイドに問いかけた、


 ジェレイドは突然の質問に驚いたが、はっきりと明白に答えた。


 「呪われているからだ・・・・・・、


 グランド・ブラッド、その人間はとうの昔に死んだ・・・・・・」


 彼は仲間と出会う前、数年間旅に出ていた、そして一つの遺跡にたどり着いた、


 呪いの言葉がつづられた、謎の石版が眠っていた遺跡に・・・・・・。




 彼女は失う。


 家族も親友も、自分の居場所も、


 そして、いままでの記憶も。



 

 「そういえば――」


 ガストが何かを思い出したように口を開いた、


 「お前の能力はなんなんだ?」


 ジェレイドはそう聞くと素っ気なく、


 「炎」


 と、一言で答えた。


 その答えに満足できなかったのか、ガウスはしつこく、


 「見せてくれ」


 その言葉を繰り返す、いい加減苛ついてきたジェレイドは、


 手を出しその手に炎を灯す。


 そして炎は灯った、色は――白銀。


 「!?」


 ジェレイドはいきなり現れた白銀の炎に驚き、ガウスは珍しそうに覗き込む、


 「へぇ〜、珍しいな白銀の炎なんて」


 「なんだこれは・・・・・・」


 白銀の炎・・・・・・、ジェレイドの脳裏にひとつの炎がよぎる、


 あのドレイクのブレス・・・・・・白銀の炎。


 死体が消えた・・・・・・、まさか・・・・・・。




 彼女は目覚めた。


 大地と出会うために、


 目の前には見知らぬ光景があった。




 (ありえないな・・・・・・、いや、認めない)


 ジェレイドは困惑していた、白銀のドレイクが消え、


 その炎が自らへ転移した、とは考えにくい、


 しかしなぜ、炎の色が変わるなんてことはありえない。


 ありえないがそれは現実に、今も目の前で起きている、


 (クソッ、分からない・・・・・・)


 考えても埒があかない。


 「そういえばお前のは何なんだ?」


 ジェレイドはガウスに問い掛ける、


 「んぁ? 風だよ」


 風は色々な形状に変化させることができ


 、鋭いカマイタチのような刃物の形状にしたり、


 空気を圧縮し空気の弾を撃つことが出来たり、


 使用する者は柔軟な思考の持ち主でないと扱うのは難しい。


 ガウスはそれに適していた、子供のように陽気な性格なので思考には柔軟性があった。


 「いやぁ〜、風って便利だな自分の拳を包み込むと硬くもなるし、


 刃物みたいに鋭くできるんだよな〜」


 軽く言って、腰に掛けていたポーチから黒くて小さな木の実を取り出した。


 ガウスはそれを床に落として、力一杯踏みつけたが木の実は割れずに床にめり込んでいた。


 「あぁ〜、やっぱ硬いな〜」


 「ガリュの実か?」


 ジェレイドが聞くと、ガウスは木の実を拾い上げ、手のひらに乗せる。


 「ああ、さっき森に行ったときに採ってきたんだ」


 木の実に爪を立て、力を具現化する、目には見えないが風が流れる音が聞こえる。


 そして木の実の殻が切れていく、ガウスが風を刃物状にして殻を裂いていた、


 すると中から半透明の白い実が出てきた、それをほお張り飲み込む。


 「うっめぇ〜!」


 そう叫んで、すぐに下を向く、


 「残念だよな・・・・・・、みんなはこんな美味いもん食えないんだから」


 「それおいしいの?」


 「うわぁ!」


 いきなり背後から声を掛けられたガウスは、椅子からずり落ちてしまった。


 声の主は、蒼空のような色をした髪を膝下まで垂らし立っていた、少女だった。


 「ん? お前はこの前連れて来た・・・・・・」


 ジェレイドが気づくと、少女は歩み寄り、一言、


 「服、貸して」


 よく見ると少女が着ているものは、瓦礫などに引っ掛かりボロボロに破けていた、


 「ぁ、あぁ・・・・・・」


 ジェレイドはチェルを呼び、服のことを話す、するとチェルは部屋の奥に行き、すぐに戻ってきた、


 少女はそれを受け取ると、その場で服を着替え始めた、それを誰も注意しようと――しない。


 なぜなら、誰も見ないし誰も見る気が無いからである。


 「ふぅ〜、ありがとう」


 少女は恥らう様子も無く平然と礼を言う、


 「ああ、俺はガウスだ、そんでこっちはジェレイドだ」


 ガウスが手短に紹介を終える、しかし少女はじっとジェレイドを見つめたまま動かない、


 「本当の名前は・・・・・・?」


 「・・・・・・」


 二人の間にしばらくの沈黙が流れた、そしてジェレイドは観念したように、


 「・・・・・・グランドだ、・・・・・・グランド・ブラッド」


 「私はソラ、ソラ・コバルト」


 このとき、初めて大地と空は出会った。




 彼女は大地と出会った、


 そして変化してゆく、


 壮絶な戦いの中で・・・・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ