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コンラッド視点

コンラッド視点


雨が上がり、静まり返っていた街が普段の活気が戻り、賑わっている。細道から大通りのほうへ顔を出すと見回り中の兵士が目に付いた。やはりのこの軍服は人ごみの中でも見つけやすく、目立つ。おそらく、向こうの兵士も同じ軍服を着ている自分にも気づくはずだ。もし、自分と一緒に後ろの“彼”がこの街のこの場所に一緒にいることが知られると少しやっかいなことになる。


「もう、ここでいいですよ。後は自分で戻れる」


私の意図を汲み取ったかのように彼が後ろから語りかけた。


「いえ、これも仕事です」


私は振り返らずに返した。


「仕事、か」


「その手どうしたんですか?」


「手?」


ずっと気になっていた。器用に手に巻かれているハンカチを指した。彼のものではないことはすぐにわかった。


「これは、少し転んで擦りむいただけですよ」


なんでもないと彼は軽く笑った。


「あまり、無茶はなさらないように。ご自身の立場をもう少しお考えください」


「わかってますよ。わかっているからこその行動だったんですよ」


「彼女は知っているんですか?あなたのことを」


「いいえ、教えていません」


私の堅くした口調に淡々とした口調が返ってくる。周囲はざわざわとした人の声があちこちから流れているはずなのに、今は静かに語る彼の言葉しか耳に入らない。


「コンラッド」


彼が私の名前を呼んだ。さきほど淡々とした口調ではなくどこか馴染みを含ませるような口調で。


「今、ここにいるのは二人だけです。護衛も兵もいない。だから、久しぶりに―」


「私は少し離れた場所います。あなたを送り届けたら、すぐに自分の勤務に戻ります」


今の私は第一部隊の兵士。

それ以上でもそれ以下でもない。その先を言わせないように、遮る。


「わかった」


彼はそれだけ言うと僕を振り返らずに大通りを出た。私は何も言わずに彼を見送る。


もう、私たちは子どもではない。年月を過ぎると己の背負うものの大きさややるべきことの義務を理解しなければならない。


感情だけで動いていい時期はとうに過ぎた。

そう気持ちを引き締めながら自分も大通りのほうへ一歩踏み出す。


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