戦闘訓練~前編~
遅れて大変申し訳ありませんでした!
現在、一樹達は【アイラスの虚塔】、その正面入口である町の東端にある広場に集まっていた。しかし、全員ではない。玲子を筆頭に非戦闘系天職者は全員、不参加だ。
上を見れば、首が痛くなるほど高い塔が建ち、その根元には、博物館の入場ゲートを思わせるしっかりした入口と受付窓口があった。どうやら、ここで天識板の確認をし、出入りの記録をしているらしい。大量の死者を出さないための措置として行っているそうだ。
また、塔内部の地上部分では、一部大手の商会に場所を提供している。冒険者をターゲットに儲けているのだとか。塔周辺においても、広場にて露店等が、所狭しと並び、それぞれしのぎを削っている。その結果、地上では、人が集まり、まるでお祭り騒ぎのようだ。
たとえ、浅い階層であったとしてもかなりの稼ぎを期待できるこの迷宮は、冒険者に人気の場所であり、自然と人が集まる。馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、絶好の隠れ家として迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくない王国が冒険者ギルドと協力して設立したのだとか。入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているようで、朝早い時間にも関わらず人は多い。
一樹達は、そんな光景をキョロキョロと眺めながら、グラン率いる付き添いの騎士達についていった。
広く明るく喧騒溢れる地上とは異なり、迷宮内は薄暗く静かだった。しかし、狭いわけではない。通路は、横幅五メートルはある。そして、松明も灯りもないにも関わらず、ある程度視認可能な程度には明るかった。一樹が、何となく壁を"鑑定"してみた結果、淡光石という特殊な鉱石が大量に存在していることがわかった。この鉱石は、空気中の魔力を吸い淡い光を放つ特性がある。【ライラスの虚塔】はこの淡光石の鉱脈を掘って造り出したものらしい。
一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。暫く何事もなく進んでいると広間が見えてきた。ドーム状の大きな場所で天上の高さは七、八メートル位ありそうだ。
「む、この辺りまでは狩り尽くされていたか。この先に、二階層への階段がある。そこには、固定で魔物が出現する。準備しておけ!」
グラン曰く、この迷宮は一部魔物が固定で出現する箇所が存在するらしい。大抵は、次への階段か宝箱があるらしいが。
クラスメイト全員がたいしてない準備を済ませ、歩みを再開する。そして、先頭にいた正輝とグランが広間に入った瞬間、魔物が湧いた。数十体程の灰色をした毛玉だった。よく見ると、兎のように見えなくもない。
「正輝達一班は前衛を、遠距離攻撃持ちは準備しつつ後退しろ!他の奴らには交代で前衛をやってもらうからな!全員準備しとけ!あれは、跳ね兎という魔物だ。すばしっこい上に好戦的だが大した魔物じゃない。冷静に対処していけよ!」
その言葉通り、跳ね兎と呼ばれた魔物が結構の速度で此方へ突っ込んできた。かなりの速度で、よく見ると床に足がついていない。一回の跳躍らしい。
灰色の長い体毛の内に、赤い目が不気味に光る。兎にも見えなくはないのだが、断言できない要因が一つある。二本の足だけが異様にゴツいのだ。ムキムキだった。
正面に立つ正輝達――特に冬華の顔が引き攣っている。余程気持ち悪かったらしい。
間合いに入ってきた飛び兎を、正輝と冬華の二人で迎撃する。と同時に、春菜と同じ一班である辻美鈴が詠唱に入る。そして、坂上永輔がその二人をカバーしている。訓練通りの見事な連携だ。
前衛である正輝は、白く輝く片刃のバスタードソードを視認も難しい速度で振るい、数体を一気に屠っていく。
今、正輝が使っている剣こそが、以前グランが言っていた現存する数少ないアーティファクトである。銘はお約束の例に漏れず"聖剣"。光属性を付与されており、使用者の身体能力を増幅する効果がある。さらに魔力を込めれば、光源の届く範囲の味方全員を強化することができる。聖剣の名に相応しい性能を誇っている。
そして、同じ前衛を受け持つ冬華は能力値で勝る正輝を超える剣速で抜刀術を繰り出していた。彼女の剣技には、多くの騎士たちも感嘆するほどである。
冬華が今持っている剣は、長さこそ八五センチほどと少々ながいものの、ちゃんと反りがあり薄い片刃の日本刀と言っても差し支えないものだ。これは、冬華が特訓後割り当てられた部屋に戻ってみると、いつの間にかあったらしい。クヴェラ曰く、セアド様からの恩寵だろうとのこと。効果は、切れ味が決して落ちないことと、刀身の分解らしい。要するに、刀身を細かくし二刀にも、もっと細かくして魔力で操る何てことができるらしい。はっきり言ってこれもチート武器だった。
中衛を受け持つ坂上永輔は"槍術士"。槍を扱う天職で中衛には適役だ。
後衛は、春菜と、天職"水魔術師"辻美鈴がいる。
水魔術師は、水とその上位である氷属性に適正を持つ。光属性とは違う回復魔法が使えるのも強みだ。
一樹達が、無双している一班の戦いぶりに見蕩けていると、高々と詠唱が響き渡った。
「「我が御手には暗き炎、尽くを焼き払いしその業火よ、我が敵を焼き払い、尽くを灰と為せ"渦炎"」」
二人同時発動。
燃え盛る業火が渦を巻いて、飛び兎を巻き込み燃やし尽くしていく。「キィーーー!」と甲高く断末魔の悲鳴を上げながら、パラパラと物言わぬ灰へと変わり、絶命する。
いつの間にか、飛び兎の群れは全滅していた。例え数が多かろうと、一階層程度の敵では、正輝達異世界組を相手取るには、些か力不足だったらしい。
「あ~~、うん。よくやったお前ら。次には、別の奴らにもやってもらうからな!覚悟しとけよ!」
生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するグラン団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな、はははっ」とグラン団長は肩を竦めた。
「それとな、これではオーバーキルが過ぎる。訓練だから良いものの、次からは素材や魔核の回収を念頭に置いて動けよ」
春菜達後衛組は、その言葉に思わず顔を赤らめたのだった。
(このまま何も起こらないといいな)
そんな春菜を見ながら、一樹はそう思ったのだった。
遅れたわりに、短いですね。申し訳ありません。
直ったスマホが、思った以上に使いづらくストレスが溜まりまくってまして( ̄▽ ̄;)
後編は出来るだけ早く出そうと思っていますが、遅れたらすみません。




