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無能召喚士の無双契約  作者: 天乃幽
第一章
3/7

天識板~ステータス公開~

かなり悩みました。

やっぱりステータスと技能を考えるの難しいですね。他の作品と似ていても勘弁してください。

一樹達は、高校生だ。それも、平和主義にどっぷり浸かった日本人である。たとえ、戦争に参加することを決意したとしても、今のままでは魔物や魔人族とまともに戦えない。


その事は、クヴェラもわかっていたらしい。曰く、聖教教会の本山である“霊山”の麓にある“ゼルシア王国”にて受け入れ体制が整っているらしい。


そして、今いるこの屋敷がゼルシア王国王家の屋敷の一つであり、暫くはここを拠点に使うとのことだった。


ゼルシア王国と聖教教会は、密接な関係にあり、聖教教会が崇める神--創造神セアドの眷属だったエディル・ゼルシアなる人物が建国した最も伝統ある国ということらしい。国の背後には、教会があるのだから、その繋がりの強さはわかるだろう。


「これから、二週間ほど皆様にはここに留まっていただきます。この二週間の内に、最低限戦えるようになっていただきます」


そう宣言したのは、クヴェラ側にいた金髪碧眼の少女だ。召喚のことを知っていたりと、謎の多い彼女だが、王国の貴族かなにかなのだろうと一樹は思っていた。しかし、先程の発言でその考えは間違っていたと一樹は察した。


「え~と、すまないが君にそれを決める権利があるのかい?ここは、王家の屋敷なんだろう?」


ある意味当然のような質問をしたのは正輝だ。正輝は、目の前の少女の素性について全く考えていないのだろう。


「申し遅れました。私の名は、ソフィア・S・V・ゼルシア。ゼルシア王国第二王女です。皆様の身の回りの管理に関する全権を、国王であるお父様から頂いております」


この場にいる者の大半が固まった。少なからず、彼女の素性を察していた者や理解が追い付いていない者、がいたため全員ではなかったが。


「ソフィア様、私はこれで失礼させてもらいますぞ。あとは、お任せいたします」

「はい、お疲れ様でした。クヴェラ卿」

「私のような老人には、もったいないお言葉ですな」


生徒達が、混乱の最中にいるなか、クヴェラは退室してしまった。そのとき見せた微笑に、男子生徒の大半が見惚れて、女子生徒はそんな男子に冷たい視線を向けたため、混乱は収まったのだが。


「これからの予定を話させていただきます。先程申しましたように、二週間この屋敷にて訓練を行っていただき、最低限戦えるようになっていただきます。訓練については、後程担当の者を紹介いたします。その後、ここから北に二日ほど移動し、アイラスという街に向かいます。そして、そこにある迷宮に挑んでいただきます」


ソフィアのが“迷宮”と言った瞬間、一部男子が盛り上がった。無論、根っからのオタクである一樹も例外ではなかった。


「訓練は、屋敷の訓練場で行いますので移動しましょう」


そう言い終わると、ソフィアは歩きだした。まず、正輝が行動し、クラスの皆が付いていく。一樹も、最後尾をこそこそと付いていった。


庭へいく間、ずっとメイドのような使用人と思わしき人、騎士のような人の期待に満ちた視線に晒され、一樹にとっては居心地は最悪だった。






おそらく、道中居た騎士の人たちが使っているであろう訓練場は広かった。高校のグラウンドの二~三倍程だろうか。そして、そこには明らかに強そうな騎士の大男がいた。後ろにも、数人強そうな人が集まっている。


「皆様には、ここで訓練を行っていただきます。そして、訓練の指揮は、このグラン・ランドルフ騎士長に任せています」


ソフィアが、一人の騎士を紹介する。先程の、強そうな大男だった。クヴェラとはまた違った力強い覇気を纏っている。


「ソフィア様から、貴殿らの訓練を任されたグラン・ランドルフだ。よろしく頼む!」


見た目に違わぬ、力強い大声で生徒達は圧倒されていた。何時も気の強い不良三人組ですらビクッと身体を震わせるほどだった。


「……グラン騎士長、あまり驚かせないであげてください。怯えてしまっているではないですか」

「いや~、すみません。元々、怯えられる声と顔なんですよ」


呆れたようなソフィアの声音に、一気に覇気が薄まるグラン。目の前の状況をみて、クラスの大半が息を吐く。それと同時に、ソフィアの株価が上がったのだった。


一樹達は、グランの後ろの人達から一枚の金属板を受け取り、全員首をかしげる。サイズは五センチ×十センチほどで、何も書かれておらず、全く用途がわからなかったからだ。一樹は、裏のうっすらと小さな魔方陣に気づいた。


「よし、全員に配り終わったな?これは、“天識板”という神代のアーティファクトの一つだ。現在、複製できている数少ないアーティファクトでもある。これは、文字を通じ、使用者の客観的な能力を示してくれる。最も信頼できる身分証明書だから、失くさないようにしてくれよ?」


非常に気楽な喋り方をするグラン。彼は豪放磊落な性格で、「これから戦友になろうってのに何時までも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも言い切るほどだ。


一樹達にとっても、かなり気が楽だった。正直、年上や身分が上の人に、慇懃な態度で接せられると居心地が悪くてしょうがなかったのだ。


「アーティファクト?」


聞き慣れない単語に正輝が質問をする。


「アーティファクトって言うのは、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神々やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われているな。複製できている物は殆ど無い。それ以前に、現存しているものですらそれほど数がない。今あるのは……王城の宝物庫の中と聖教教会お抱えのものくらいか」


今手に持っているものが、そんな貴重なものとは思っていなかった生徒達は驚いた。数人、落としそうになり慌てていた。


「とは言ったものの、さっき言った通り天識板自体は複製ができてる。本来は、アーティファクトは例え複製が出来たとしても国が管理すべき代物なんだが、こいつだけは一般市民にも流してる。便利だからな」


なるほど、と頷いた生徒達は早速使ってみようとしたが誰一人使えなかった。


「……あの、使い方がわからないんですが」

「ん?すまんすまん、説明してなかったな。天識板の裏にある魔方陣に自分の血を一滴垂らすだけでいい。これが、自分の魔力と情報を伝えてくれる。」


多くの生徒が顔を顰めながら、板に付属していた針を指先にチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。一樹も同じように血を擦りつけ表を見る。


すると……



―――――――――――――――――――――――――――

八雲 一樹 17歳 男

天職:召喚士 レベル1

筋力:10

体力:10

敏捷:10

精神:40

魔力:50

魔耐:40

技能:空間魔法[+召喚魔法]・言語理解

―――――――――――――――――――――――――――

と、表示されていた。


自分がゲームのキャラになったようだ、と一樹は思いながら他の人のステータスも気になった。自分の天職が実にテンプレで、時空間魔法という珍しそうな技能を持っていて浮かれていたのだ。


「大榎、どうだった?」

「う~ん、微妙やな。基準がわからんから、なんとも言えんけど」

「どうせだったら、交換して見せ合わないか?」

「……あんま見せびらかしたこうはないが、まあ、カズならええか」


自分を微妙と評する大榎のステータスが気になった一樹は、見せ合おうと言い、渋々了承した大榎。しかし、そんな大榎の天識板をみた瞬間、一樹は固まった。


―――――――――――――――――――――――――――

東條 大榎 17才 男

天職:鍛冶士 レベル1

筋力:150

体力:100

敏捷:05

精神:70

魔力:40

魔耐:70

技能:鍛冶・錬成・言語理解

―――――――――――――――――――――――――――


大榎のステータスの大半が、一樹のステータスを上回っていたのだ。それも、非戦闘職である鍛冶士に、だ。一樹が、勝っているのは、敏捷と魔力だけである。それも、微々たるものだ。


「…………」

「召喚士なんて、良かったやん。僕なんか、非戦闘職やで。カズなら、直ぐに僕のステ追い越すやろ。」


大榎の慰めが、一樹の心に刺さる。


もしかしたら、召喚獣のようなものが代わりに戦ってくれるから、ステータスが低いのかも!なんて、一樹は思い始めた。完全な現実逃避だった。


一樹が現実逃避をしていたとき、前方の真ん中辺りから、「うぉー!すげぇ!」とか「やっぱりお前だったか!」なんて叫び声が聞こえてきた。何かあったのだろうか、と一樹と大榎は近寄る。


「おめでとうございます、マサキ様。貴方は、真の勇者として選ばれたのですね」

「はは、ありがとうございます、ソフィアさん。……僕が、勇者か。僕が、必ず世界を救って見せるぞ‼」


どうやら、正輝の天職は勇者だったらしい。ある意味適役だろうと、クラス全員が思いがら、正輝は一人熱くなっていた。


因みに、正輝の天識板の内容はこんな感じだ。

―――――――――――――――――――――――――――

櫻井 正輝 17才 男

天職:勇者 レベル1

筋力:100

体力:100

敏捷:100

精神:100

魔力:100

魔耐:100

技能:剣術・全属性適正・全属性耐性・剛力・先見・遠見・縮地・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

―――――――――――――――――――――――――――


明らかに、チートだった。技能の数は二桁にもなり、ステータスも全て百だ。これが、"神の加護"の効果なのだろうか。


「グランさん、こっちの世界の能力値の基準を教えてもらえませんか?」

「ああ、かまわないぞ。一般人が、大体五十から七十の間だな。訓練しているものだと、二百程度までならいくな。才能があるものだと、五百近くまで伸びることもあるらしい」


やはり、正輝はチートのようだ。最初から、こちらの世界の人間の倍は強いのだ。そして、クラスメイトの大半は、何かしらチートのようだ。あちこちで、更なる盛り上がりを見せている。


そして、一樹は絶望していた。大半の能力値が、こちらの人間の五分の一以下しかない。下手したら、子供にすら負けてしまうだろう。一樹は、一縷の望みにかけて、口を開く。


「すみません。僕の天職って珍しいんですか?召喚士って職業なんですが」


その言葉に、ソフィアとグラン両名が困惑と落胆の表情を見せる。


「……貴方、それは本当ですか?」

「?はい」

「確かに、召喚士は珍しい天職です。此処数十年は現れていない程度には」


良かった、外れではないのか。と一樹は胸を撫で下ろす。だが、ソフィアの次の言葉に青ざめた。


「ですが、召喚魔法の属する空間魔法に適正があるというだけの職業です。その上、別の属性魔法が全く使えず、能力値も軒並み低い場合が多いそうです。そのため、契約や召喚魔法を持っていたとしても、契約獣を得る戦いで死亡する、なんて事が普通に起こるのです」


ソフィアが一度言葉を区切る。その人に良心があるのなら、とても伝えづらいことだ。


「空間魔法は、消費魔力量の多いと伝わっています。最下級の魔法ですら、本来であれば、複数人でなければ発動できないほどに。ですから、貴方が空間魔法の適正を伸ばしたとしても、もとの世界に戻ることは、不可能です」


クラス全員が絶句する。ほぼ全ての魔法が使えず、能力値も低く、頼みの召喚魔法すら使えない。そして、元の世界に戻ることにも使えない。そんなのは、ただの役立たずだ。その事に、一樹を含めた、この場にいる全員が気づいたのだ。


「やっぱりお前は、どこにいても役立たずなんだよ!さっさと、消えろ」


そう言い放ったのは、元の世界で何時も一樹をイジメていた三人組の一人である、大倉耕平だ。大柄で、正輝とほぼ同じ身長である。そのうえ、ガキ大将のような性格をしている。


「な、何てこと言うの!大倉君!」

「そうよ、何も今弱いってだけで、今後どうなるかわからないでしょう?もしかしたら、私たちより強くなるかもしれないじゃない」

「そうだよ!冬華ちゃんの言うとおりだよ」


耕平に、反論したのは春菜と冬華だ。実は、二人ともクラス指折りのチートなステータスを誇る。その上、人気な二人を相手して、未だなにか言いたげだったが、耕平は反論し続けるのは不利だと悟ったのか、口を閉じた。


因みに、春菜と冬華、二人の天職板の内容はこれだ。

―――――――――――――――――――――――――――

神代 春菜 16才 女 種族:吸血鬼

天職:治癒士 レベル1

筋力:20

体力:20

敏捷:40

精神:120

魔力:150

魔耐:120

技能:治癒魔法・光属性魔法適正・全属性耐性・物理耐性・魔力高速回復・魔力感知・吸血・言語理解

―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――

橘川 冬華 16才 女

天職:剣士 レベル1

筋力:80

体力:80

敏捷:140

精神:50

魔力:20

魔耐:50

技能:剣術・抜刀術・縮地・剛力・先見・限界突破・言語理解

―――――――――――――――――――――――――――


という感じだ。春菜にいたっては、種族自体が変化している。春菜本人は当然、近くにいる冬華ですらその事に気づいていないのだが……


自身の天職にテンションを上げるもの、他人のステータスを笑うもの、チートクラスの力を手に入れたのだと浮かれるもの、転移組は様々な反応で溢れ返っていた。


そして、未だ興奮冷めやらぬ中、一樹に"無能"の烙印が押され、波乱のステータス公開は幕を閉じた。

技能に関しては、増えるかもしれません(^_^;)


息抜きで書いてしまった作品も投稿しています。短い上に、こちら以上の不定期投稿になりますが、よかったら読んでみてください。

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