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最終節:死霊の王
冬子がぼんやりと窓の外を見上げている内に、雨足が緩んできた。
永遠に降り続くかのようだった暗い雨も、終わってみればただの通り雨。
そんなものだ。
———暇ですし、本でも読みましょうか。
そう思った時に、お腹を撫でる手を内側からぽこんと蹴る感触を感じた。
ダメらしい。
微笑んだ冬子は、子守り歌を唄う事にした。
『虹』という曲だ。
冬子はこの曲が好きだった。
歌を歌いながら、彼女は思う。
このお腹に宿る愛おしい『王』が。
死霊どもが望む『王』ではない事を、誰にも知られてはいけない。
まといにも、順次にすらも。
冬子は。
実際のところ。
導主と春樹の決着が、どうなったのかを知らない。
真実を話したら、彼らは肚の王を殺すかもしれない。
春樹か、アスモデウスか。
どちらとも分からないなら殺してしまおうと……そう、判断するかもしれない。
それは、許し難い。
結果は決まり切っているのだ。
春樹は約束した。
自分が『王』と成って産まれるのだと。
ならば、そういう事なのだろう。
―――春樹が、私との約束を、破るはずがありません。
信仰にも似た確信とともに、冬子は繰り返し、子守唄を歌う。
雨は、いつか晴れる。
この歌のように。
産まれて来る『王』は、春樹。
私の、春樹―――。




