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&DEAD  作者: メアリー=ドゥ
第3話:ポーカー
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第6節:真実の檻

『サエが&Dに襲われたのは、あいつの父親のせいや』


 春樹が冬子にそれを話したのは、フミの調査が終わった直後のことだった。


『プッシャーグループを、その&Dに潰すように依頼しとったんや。サエは、その巻き添えを喰らった』

 彼は、冬子に聞いた。


『トーコは、どうしたい?』


 冬子は問われて、自分の意思を春樹に伝えた。


 ―――これ以上、関わらせて欲しくありません。


 ―――まといにも。

 ―――サエにも。


 春樹は、一つうなずいた。


『他には?』


 ―――言う前に、一つ質問をしてもいいですか?


『どうぞ』


 ―――なぜ、サエの父親はあのグループを潰そうとしたですか?


『自分の息子を、グループから引き離すためや。言ったやろ?』


 ――――では、リョウは。


 春樹は、一息置いてからうなずいた。


『せや。リョウは、サエの兄貴や』


※※※



「グループは解散したんだろう? ならばこれ以上誰にも手を出すな。ああ、報酬は振り込んでおく。では」


 サエの父親はそれだけ告げて電話を切り、春樹に言った。


「これでいいか?」


 疲れたように虚脱した顔のサエの父親に、春樹はうなずく。


「ええで」


 そして、春樹たちは委任状にサインした。

 丁度そこに、二人の少年を従えた黒服が入ってくる。


 片方はフミ。春樹がうなずくと、軽くうなずき返した。

 もう一人は、少しチャラいが、人の良さそうな顔の少年。


 リョウだった。

 しかし、今その表情は険しく引き締まっている。


「娘も、解放してもらおう」

「サエのところには、もう誰もおらんよ。病室からも連れ出してへんし」


 素っ気なく言い、春樹は立ち上がった。

 じっちゃんが委任状を畳みながら、サエの父親と春樹に言った。


「委任状は、俺が責任もってオヤジに届ける。賭けは春樹の勝ち、内容は良識通の坊主が依頼を撤回すること。この勝負に関する遺恨は忘れる。てェことで、いいんだな?」

「ええよ」

「……問題ありません」

「んじゃな」


 最初に、じっちゃんが来た時と同じように飄々と出て行った。


「行くで、トーコ、フミ」


 冬子はうなずき、フミは、


「おう」


 と返事をした。

 出て行く春樹に、リョウを横に従えたサエの父親が問いかける。


「貴様、本当に何者だ?」

「別に何者でもないわ。こんな回りくどいことしな、あんたにも会われへんような……」


 春樹は男性を振り返って、面白くもなさそうに鼻を鳴らす。


「ちょっと賭け事が得意なだけの、ただのガキやで」


※※※


 春樹たちと別れた後。

 サエの父親はリョウを伴って、病院に向かった。


 二人とも、一言も口をきかなかった。

 病室に入ると、サエはごく普通にベッドで腰を起こしていた。


「サエ」


 さすがにほっとした顔でサエの父親が呼びかける。

 しかし、サエは黙ったまま何も答えず、父親の顔を見ていた。


「大丈夫か?」


 リョウの言葉に、やはりサエは答えなかったが、かすかにうなずいて見せた。

 それを尻目に、父親はスマホを取り出し、電話をかけた。


「私だ。一つ依頼をする」


 父親の言葉に、リョウとサエが同時に注目する。


「春樹、トーコ、フミという三人を始末しろ。居場所は追って伝える。それで、私の娘に手を出したことは不問にしてやる」


 それだけ告げて、父親は電話を切った。


「……父さん?」


 小さく、リョウが呼びかけるが。

 父親はそれに答えず、一方的に言葉をつむぐ。


「亮、サエ。お前らはしばらく留学しろ。手続きはこちらで取る」

「父さん」

「サエに手を出したあの&Dも、全て終わったら始末する」

「父さん」

「心配するな。お前たちが帰って来た時には、全て終わっているように……」

「聞いてよ、父さん」


 父親は、そこでようやく二人の様子がおかしいことに気付いた。


「……お前たち、何故そんなに落ち着いている?」


 攫われたり襲われたにしては、あまりにも平然としている。

 そんな父親の質問に、リョウは。


「だって」


 一言前置きをして、衝撃的な言葉を告げた。




「今までのこと、全部、お芝居だからさ」




 父親は、リョウの言った言葉の意味が分からなかった。


「……どういう事だ?」


 問う父親に、サエが初めて口を開いた。


「お父さんがそういう態度を取ることまで含めて、全部春樹の策略だった、って事」


 無表情に、醒めた目で。

 サエは言う。


「私たちも、グルなのよ。お父さん」


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